2017年5月16日 (火)

海上保安庁水路部の略算式 - 太陽位置の略算(1)

現在、太陽、月、惑星の視位置を求めるために海洋保安庁海洋情報部の近似式を使っています。これは掩蔽(星食)の時刻の予測に使えるほどに精度が高いのですが、問題があります。近似式の係数が使える期間が短いことです。いちばん動きが複雑な月の場合だと一組の係数は一ヶ月しか有効でありません。

海洋情報部は夏頃に翌年分の係数を発表します(月の場合は12組の係数がまとめて発表されることになります)
現時点(2017年5月)では視位置を求めることができるのは2018年末までです。

だから2019年の視位置は計算できないわけで、現在係数を自前で作る方法を調べているのはこのことも一つの理由です。

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いつもお世話になっている 長沢工「天体の位置計算」地人書館、1981 には太陽、月、惑星の位置に関する略算式というのがあります。これは特に使用できる期間の制限が書いてありません。こちらの方がずっと使い勝手がよさそうですが、これを使わなかったのには理由があります。

長沢工「天体の位置計算」地人書館、1981 の説明を読む限り掩蔽の予測に使えるだけの精度はなさそう。

すでに40年ほど経っているのでそのまま使っていいのか不安

得られるのは黄経・黄緯。必要なのは赤経・赤経・赤緯なので換算が必要。
(座標系の違いが絡むと計算するのが(=考えるのが)面倒)

※ いつも書いていますが海上保安庁水路部というのは海洋情報部の前身です。

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掩蔽の予測というのはアマチュアの天体位置計算としては特殊でたいていの用途はそこまでの精度は要求されません。もし水路部の略算式が今でも使えるのであればそれほどの精度がないとしてもいろいろと応用がききます。

長沢「日の出・日の入りの計算」地人書館、1999 では太陽位置の計算方法として水路部の略算式を元にしたものが使われています。発表から20年経っても使えているのだから今でも使えるのではないか、ということで実際に計算してどの程度の精度が得られるものか確かめてみることにしました。

まず最初の取り組みとして太陽までの距離を対象にしてみます。
太陽までの距離を選んだのは計算式が簡単(=係数が少ない)なことと座標系の影響を受けないので検証が容易なことが理由です。

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2017年5月 3日 (水)

太陽・月・惑星視位置の海洋情報部近似式の係数の求め方

海上保安庁海洋情報部(昔の水路部)が提供する太陽系天体の視位置の計算式は歳差がどうだとか年周光行差がどうだというような余計な計算をせずに比較的正確に視位置を求めることができる近似式なので私みたいに天文計算をExcelで済ませてしまおうという人間にはなかなかに便利です。

ただ近似式の係数は海洋情報部が提供するものを使うわけですから、係数が提供されていないものは計算のしようがありません。水星や天王星以遠の惑星・準惑星の視位置がそうですし、太陽・月・金星・火星・木星・土星であっても(2017年5月現在で言えば)2019年以後の視位置がそうです。

海洋情報部方式で水星の視位置(赤経・赤緯)を求めるには....ではこの係数を“力づく”で求める方法を書きました。

最近この件について次のようなコメントをいただいたので紹介しておきます。

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遅くなりましたが、私の方法での計算式が入ったエクセルデータをメールで
送らせていただきました。

海洋情報部の式は、以前は摂動項を拾い出して作っていたものと思われますが、
最近の天測暦にのっているものは、
別の方法で求めたものを日付範囲限定でcos関数で近似しているものと思います。

三角関数での近似ですしcosの計算がcosNθとなっているところから、
フーリエ変換しているのであろうとあたりをつけて試し始めました。

やってみて気づいたのですが、フーリエ変換では結果が複素数となりsinとcosを両方使うか、
偏角を加えるかになってcosNθだけで計算している海洋情報部の式とは合いません。

ここで、ふと、コサイン変換では?と気づいて色々調整...

ウィキペディアの離散コサイン変換の記事を引用すると、
「なお、DFTも偶関数数列に対しては実係数を返す、つまりコサイン成分のみとなるが、
 DCTはy軸で折り返して偶関数化してDFTすることと等価であり、実際にそう計算することが多い。」
ということなので、データを整えて分析ツールアドインのフーリエ変換で何とかなるだろうと..

結果、日付の逆順に並べ、範囲の初日で折返して偶関数とし、
コサイン変換すると結果が海洋情報部の係数とよく合うということが分かりました。

お送りしたデータの月と金星のデータは、その検証用です。
海洋情報部の係数に極めて近い値が出ました。

これが、先のコメントで「かなりの高精度で」と書いた意味です。

コサイン変換した近似式ですので、海洋情報部純正の係数でも真値との誤差は避けられず、
たぶん、その精度は10^-5程度ではないでしょうか。


投稿: 孔雪 | 2017年5月 2日 (火) 00時04分


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現在いただいたExcelファイルをもとに方法を確認中です。このことについて記事にできるのがいつになるかわからないのでひとまずいただいたコメントを紹介させていただきました。

なおコメントとともにいただいたExcelファイルについては孔雪さんの了解をいただければこの記事からダウンロードできるようにします

孔雪さんからお許しをいただいたので孔雪さんからいただいたExcelファイルをダウンロードできるようにしました。

  水路部データDCT 部分.xlsx 」  (2,678kb)

孔雪さんからはさらに詳細な説明・データをいただきましたので、それについては次の記事で紹介する予定です。

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  「太陽の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版
  「
月の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版
 惑星(金星・火星・木星・土星)の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版

  「海洋情報部方式で水星の視位置(赤経・赤緯)を求めるには....

  
恒星の位置計算 - ヒッパルコス星表の使い方から大気差の計算式まで

 月の視位置計算で地心距離の計算に誤りが.....
  
このブログの変更履歴・正誤表など

2017年4月30日 (日)

コウイカと駒田京伽さんの謎の生物

以前____この記事を書いている時点で言えば昨日まで____プロフィール画像(アイコン)をこんなのにしていました。

Cuttlefish

水族館で写した画像をトリミングしたものです。

Imgp0667enl1200

”なんのサカナ?”と聞かれたことがあります。

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2017年4月12日 (水)

ダイソー 万年筆 プラチナ インク漏れ

この記事のタイトルでググると、ダイソーで売っているプラチナ製の万年筆(Riviere PTR-200の表示あり)でインク漏れが発生したという記事がいくつか見つかります。もちろん私の持っているものでもインク漏れが発生したのでググったわけです。

どこからインク漏れが発生しているかよくわからず、ググって見つけた記事にもそれらしい記述がないので注意深く(?)観察してみました。

Riviere__01


AのところからBのところにかけて軸を取り巻くようにリングができています。黒い軸から黒いインクが染み出しているのでとてもわかりにくいのですが、Cのあたりは比較的わかりやすいと思います。

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2017年4月 9日 (日)

ペリカンとダイソーの万年筆インクカートリッジの形状

万年筆のインクカートリッジにも(日本のメーカーはほとんど採用してませんが)共通規格みたいなものがあるようです。欧州共通規格、ヨーロッパ統一規格、欧州標準規格、ヨーロッパタイプなど、いろんな表現で紹介・説明されているのがそれです。

もっともこれだけ表現がいろいろあると、ほんとうに規格なんだろうかという疑問も湧いてきます。また規格という以上図面くらいありそうなものですが、まだどこでも見たことがありません。

そこでこの共通規格(?)にそって作られているとされるペリカンのインクカートリッジの形状を調べてみました。ついでに共通規格の万年筆に使えるという情報もあるダイソーのインクカートリッジも調べてみました。形状という以上外形だけでなく内部の形状も重要なのですが、今回は外形だけです。

Pelikandaiso1

写真は上がダイソー、下がペリカンです。

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2017年3月14日 (火)

十円玉をピカピカに磨く - サンポールの作用

10円玉をピカピカにしようと思ったら白くなってしまった話にある十円玉(サンポール(塩酸 9.5%)に6時間つけておいたら白っぽくなってしまった十円玉の右半分だけをプラスチック用コンパウンドで磨いたもの)をもう一度サンポールにつけ置きしてみました。

Imgp5013trm1600

今回は7時間経過したあとの写真です。もし白っぽくなるのが十円玉がサンポールによって腐食した(銅、亜鉛、錫のいずれかが溶出した)せいだとすればまた全体的に白っぽくなりそうなものですが、そうはなっていません。

長時間サンポールの中に置いていたのにもかかわらず右側はちゃんと光沢が残っています。ただ若干輝きが失われているようには見えます。また、サンポールの中に緑色の沈殿は見られませんでした。

(追記)全体的に少し赤みがましたように見えます。また右側の方ですが、(コンパウンドなどは使わず)脱脂綿(綿棒)で磨いただけでもとの光沢を取り戻しました。また(写真がありませんが)上の画像の裏側の面に何かが付着したように見える黒ずみが見られました。

まだまだ材料不足ですが、前回・今回の結果をもとに何が起きているか考えて(想像して)みました。

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2017年3月11日 (土)

10円玉をピカピカにしようと思ったら白くなってしまった話

10円玉のサビを希塩酸(サンポール)で落とそうとしたら白くなってしまった、どうしてだろう?、という記事です。

ところでこの手の記事には“貨幣損傷等取締法”について触れたものが多いです。これは

  電子政府の総合窓口 - 法令検索 - 貨幣損傷等取締法

にあるのですが、条文は三つしかないので引用しておきます。

   貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶしてはならない。
   貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶす目的で集めてはならない。
   第一項又は前項の規定に違反した者は、これを一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。

なお貨幣というのは法律用語では“硬貨”のことだそうです(Wikipedia等による)

これでいちばん最初に思いつくのはアルミニウムの“利用”です。以前電気分解や電池の実験をいろいろやっていたとき電極として一円玉を使う誘惑にかられました (^^;;
(一円玉は手近にあるアルミニウム製品としては最高に純度が高いようです)

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今回の実験対象は昭和50年の年銘があるこの十円硬貨です。

Imgp4900trm800


一度磨いたので比較的きれい(ピカピカ)なのですが、図の黄色い矢印で示したところを見るとわかるようにまだ汚れが残っています。

この汚れは超音波洗浄機で洗ってもエチルアルコールに浸しても取れないのでおそらく錆なのでしょう。

先の細いもので磨いていってもいいのですが、面倒なのでサンポール(塩酸9.5%、他に界面活性剤等)につけ置きします。

Imgp4951enl800

サンポールだと希塩酸で十円玉が溶けてしまうのではないかと心配されている方もいらっしゃるようですが、少なくとも銅は希塩酸には溶けないはずです。錫と亜鉛は溶けてしまいそうな気もしますが。

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2017年3月 4日 (土)

海洋情報部方式で水星の視位置(赤経・赤緯)を求めるには....

先日

  「惑星(金星・火星・木星・土星)の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版」

の記事に

  Do you have Mercury Calculation?

というコメントをいただきましたが、ありません、と答えるしかありませんでした。

金星の視位置は求められるのになぜ水星の視位置は求められないのか?

理由は簡単で海洋情報部の資料には金星の視位置を求めるデータはあっても水星のデータはないからです。これは海洋保安庁海洋情報部(昔の水路部)の業務の目的が関係していると思います。

海洋保安庁の目的とするのは航海の安全です。天文情報は天測によって船舶の位置を決定するために使われます。だから提供されている情報は太陽、月、金星~土星、明るい恒星に限られています。すべて天を見上げれば肉眼でもすぐにそれとわかる天体です。

実際に水星を見た方(あるいは見ようとした方)はご存知だと思いますが水星は手強いです。肉眼で見つけるのはなかなか難しく、私は10x50の双眼鏡を使っても見つけられなかったことがあります。さらに水星が観測できる時期、時間帯は極端に限定されていますし、見えたとしても高度は小さく(大気差が強く働くため)高度の正確な観測はできません。つまり天測にはほとんど役に立たないから位置情報もないのでしょう。

この記事とは直接関係ないのですが、太陽との離隔が2度ちょっとしかない水星の写真を撮られた方がいらっしゃるので紹介しておきます。

  クリちゃん 彡 のお月見 - 20170309(木) 水星(外合3日過ぎ)、月齢10.9

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海洋情報部の方式は近似式でそれぞれの天体の位置を求めます。近似式はすべての天体に共通です。そして使用する係数の個数や一組の係数が適用できる期間に違いがあります。

この近似式に使う係数が毎年公開されています。「惑星(金星・火星・木星・土星)の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版」の記事にあるExcelシートでは"Sun"、"Moon"、"Planet"の三つのシートに2013年から2017年の間の視位置計算に必要な係数を保存してあります。例えば金星の2013年の視位置計算に使われるのはこういう係数です。一つの係数群は120日間(3ヶ月)程度使える18個の数値からなっています。

Venuscoefjan2017

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そこで水星のデータ(係数)がないのだったら、自前で作ったらいいんじゃなかろうか、という考えが浮かびます。

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2017年3月 1日 (水)

年銘別貨幣流通枚数を推測する(1)

硬貨には製造年らしきものを示す年号が刻印されています。これを正式には“年銘”というようです。この記事の目的は硬貨の年銘ごとの現時点での流通枚数を推測するにはどうしたらいいか、というのを考えることです。


まず年銘別の製造枚数は公表されています。

  独立行政法人造幣局 - 貨幣を知る - 貨幣に関するデータ - 年銘別貨幣製造枚数[PDF]

例えば昭和26年には約1億枚の十円玉が作られています(正確に書くと昭和26年の年銘のある十円玉は約1億枚作られています)

硬貨も使っているうちにキズが付いたり変形したりします。こういうのは銀行でカウントするときなどに回収されてしまうはずです。また側溝に落ちてなくなる(流通しなくなる)なんてものもあるでしょう。したがって昭和26年の10円玉が現時点で1億枚流通しているとは思えません。

じゃあ現在昭和26年の10円玉はどれほど流通しているのかという疑問が湧いてきます。

使えなくなった10円玉を回収するときわざわざ年銘を確認しているとは思えませんし“自然消滅”した10円玉は数えようがありません。だから製造枚数の資料はあっても流通枚数の資料はないはずだ、と思ってこの記事を書いています。

もしそういう資料があるのをご存知の方がいらっしゃったらぜひお教えください。

Imgp5005trm1200
(昭和二十八年の年銘がある十円硬貨、周囲にギザギザがあります)

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2017年2月19日 (日)

627円で買ったイヤホンRP-HJE150-Kの低音(32Hz)の再生状況

音楽を聞くのは好きなんですが、再生するためのデバイスというか装置というかそういうものにはあんまりお金をかけたくありません。

とは言え楽譜にある音符が(=演奏する人が意図した音が)ぜんぜん聞こえないとか、楽譜にない音が聞こえてくるというのはさすがに困ります。

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イヤホンが壊れて(断線して)しまったので新しいイヤホンを物色していたのですが、amazonで毀誉褒貶取り混ぜ大量のレビューがあるPANASONICのRP-HJE150-Kを試しに買ってみることにしました。タイトルに書いたようになんと627円でした。

このイヤホンでいろいろ聞いてみると(私にとっては)気になるほどの歪みたいなのはないので、次は高音側、低音側がどの程度聞こえるか気になってきました。以前だったら正弦波発振器を使って自分でテストするのですが、もう手元にないので、Youtubeにあるそういうののテストに使える動画で(中にはちょっとあやしいのも混じってますが)テストしてみました。

予想どおり年齢を反映してあんまり高い音は聞こえません。せいぜい11kHzと言ったところでしょうか。少なくとも12kHzはまったく聞こえませんでした。高音側の特性はぜんぜん気にしなくてよさそうです(youtubeのシステム的なカットオフ周波数はもう少し上のようです)

さて低音の方ですが、少なくとも50Hzから60Hzくらいまでは問題なく聞こえます。問題はその下で、聞こえるような気はするのですが、それをちゃんと聞こえていると言っていいのか自信がもてません。特に40Hz以下になってくると聞こえるというより何かが感じられるというような表現の方があっているような聞こえ方になってきます。

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