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2013年8月27日 (火)

星食計算に必要な精度について考える (1)

天文書にある「日周光行差」の説明を読んだときの感想はこんなものでしょう。

  確かに言われればそんなものもあるかも。
  でも(アマチュアが)そんなの計算することが必要になることってあるのかしらん?

今星食計算にどの程度の精度が必要か、どこまで考慮に入れればいいのかを考えているのですが、どうやら日周光行差は考慮にいれる必要があるということになりそうです。

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星食(掩蔽)の潜入・出現の時刻を予測することを考えます。どこまで予測するかなんですが現状デジカメの時計を校正すれば±1秒の精度で観測できますし、工夫すればそれより一桁精度の高い観測はそんなに難しくはなさそうですので0.1秒まで予測するものとします。
なおアストロトレーサー(O-GPS1)を使うとカメラの時計をGPSに同期できるようなので私はひとまずそれでやってみるつもりです。

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月はおおよそ30日で天球を一回りしますから1日あたり時分秒でいうとだいたい48分、角度でいうとだいたい12度移動していくことになります。これから掩蔽される恒星の位置(視赤経、視赤緯)がどの程度正確にわかっていないといけないかが算出できます。

時間の0.1秒に対する月の移動量はだいたい時分秒の0.0033秒、角度の0.05秒ですからこれが必要な精度です。角度の小数点表示であれば小数点以下7桁小数点以下5桁までの数値が必要です。怖くなるくらいの精度が必要です (^^;;

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星表位置

まず星表から恒星の位置を求めなければなりません。幸いヒッパルコス星表が利用できます。

  Hipparcos/Tycho Catalogue Data

でスピカのカタログナンバー65474を入力すると

  H8 : 201.29835230 alpha, degrees (J1991.25)
  H9 : -11.16124491 delta, degrees (J1991.25)

が得られます。小数点以下8桁の精度があるので十分です。

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固有運動

次に考えなければいけないのは固有運動です。これもヒッパルコス星表でわかります。


  H12 : -42.50 mu_alpha* (mas/yr)
  H13 : -31.73 mu_delta (mas/yr)

固有運動も知識としてはあるが実際に経験することがない現象ですが、赤経 -0.04"/年、赤緯 -0.03"/年ですから無視することはできません。これより固有運動が一桁以上大きい恒星もざらにあります。

現在2013年ですから固有運動を無視して計算すると星食の時刻が2秒近く異なるものになります。

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歳差

先日太陽の自転軸の計算をしたとき13年の歳差の影響は角度で小数点二桁のところにまで影響を及ぼしていました。星表はJ1991,25ですし、とうぜん無視することはできません。

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章動

無視されることが多い章動ですが角度の数秒の影響があります。ですからこれも無視することはできません。ちゃんと計算する必要があります。

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年周視差

これもヒッパルコス星表で調べられます。

  H11 : 12.44 Trigonometric parallax (mas)

角度で0.01"ですから、これは無視できそうに見えます。ただこれはスピカの値で年周視差がこれより一桁大きい恒星もあります。ですからこれも考慮にいれる必要があります。

ただこれより一桁大きい数値だとしても星食の時刻に与える影響は0.2秒程度です。比較的影響の少ない要素です。

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年周光行差

これは年周視差よりずっと大きいですからとうぜん考慮する必要があります。黄道上の恒星であれば最大±20"くらいの影響があります。

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参考

  「せんだい宇宙館 - 星食(Occultation)
    「ビデオ観測の方法

  「天平の森天文同好会 星食観測のページ

(続く)

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