色分解能 (1) **重要な訂正あり**
この記事を書くきっかけはほよほよさんの記事
「太陽双極子磁場の反転」
(とその記事に対するコメント)です。
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太陽の黒点の部分には強い磁場が発生している、なぜそんなことがわかるかというとゼーマン効果が観測されたから、という話があります。
このゼーマン効果というのは
「Wikipedia - ゼーマン効果」
に説明があります。私も専門家じゃないのでこの説明が正しいかどうかは保証できませんが要するに磁場があるとスペクトル線が分裂する現象をいいます。
太陽光のスペクトルを見るとフラウンホーファー線といってところどころに黒い線(=吸収線)がありますが、これも磁場の強いところ、つまり黒点の近辺だと分裂して見えるということです。ゼーマン効果はスペクトル線の分裂以外の現象も引き起こします。詳しくは上記Wikipediaの記事で.... (^^;;
そこで疑問に思うのは「この現象はアマチュアにも観測できるのか」という点です。
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この問題は
1.ゼーマン効果によるスペクトル線の分裂とはいうけれどどのくらいの波長の幅で分裂するのか?
2.そしてそれはアマチュアの機材で観測できるのか?
の二つを調べる必要があります。
上記のWikipediaの記事にも分裂するとは書いてあるのですが、どれだけ分裂するかは書いてありません。
分裂幅を計算する式なんかも見つけたのですが、それよりもっといいものを見つけました。実際にゼーマン効果による吸収線の分裂を撮影した写真で波長がわかるものがあったのです。
「裳華房 - The Sun」
ここにある画像を見ると630.250nmの鉄の吸収線が530.151nm 630.151nmと629.780nmに分裂しているようです。
(2013-08-21 11:43:15)
と書いてしまったのですが、630.250nm、630.151nm、629.780nmの三つとも本来の鉄の吸収線のようです。
画像を見ると大気の吸収線が細い線になっているに比較して上の三つの吸収線がふくらんでいますがこれがゼーマン効果によるもののようです。
資料(恒星社厚生閣「天文・宇宙の辞典」他)で見た計算式をもとに計算しているのですが、例えば鉄の吸収線630.250nmの4,000Gaussの磁場があるときのゼーマン効果による分裂の波長の差は0.019nmくらいしかないようです。
ですから今回のテーマは、630.250nmの吸収線の0.02nmの波長の違いが識別できるか否か、ということになります。そうとうにきびしい課題です (^^;;
(2013-08-21 21:15:02)
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補足
ゼーマン効果というのはスペクトル線が両側に(磁界の向きによって)二本(偶数本)あるいはもとのスペクトル線を含めて三本(奇数本)に分かれる現象みたいですが記事のリンクにある画像はそうなっていません。
そのあたりも追求しなければいけないのでしょうが今回はゼーマン効果による分裂が識別できるかどうかがテーマなのでこの程度の分離があるものだということにして先に進みます。
それからスペクトル線(輝線)が分裂するから吸収線も分裂するということになるのかというこも考えなければいけないと思うのですが、実際に吸収線は分裂しているわけですし、輝線=エネルギーが高い状態から低い状態への移行、吸収線=エネルギーが低い状態から高い状態への移行と考えればそうなりそうなのでここも深く考えないことにします (^^;;
(2013-08-21 18:33:20)
(続く)
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まとめ記事
「DVD簡易分光器の自作とトラブルシューティング」 (この記事)
「光源別スペクトル(分光分布)一覧表 - DVD簡易分光器による」
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関連
「簡易分光器の作り方と反省点 - DVD-ROM使用」
「DVD簡易分光器の改良 (1)」
「DVD簡易分光器の改良 (2) - 構造・作り方 」
「DVD簡易分光器の改良 (3) - 仮組立 」
「DVD簡易分光器の改良 (4) - 組み立て」
「簡易分光器にDVD-ROMを使うとゴーストが出る理由」
「DVD簡易分光器のスリット幅と色分解能の関係」
「DVD簡易分光器の波長と画像位置の関係」
「簡易分光器の作り方 - 回折格子をどうする」
「デジカメの分光感度特性と白熱電球のスペクトル」
「デジカメの分光感度特性補正の試み - スペクトル画像のグラフ化」
「スペクトル画像(分光写真)を数値化(グラフ化)する方法」
「DVD簡易分光器の色分解能を岡山天体物理観測所と比較する」
「DVDで作る簡易分光計 - 蛍光灯の分光スペクトル」 (三波長型蛍光灯)
「蛍光灯でもこれだけ違うスペクトル - 自作DVD分光器」
「DVDで作る簡易分光器 - 水銀灯の分光スペクトル」
「DVDで作る簡易分光器の校正のために - ネオン管のスペクトル」
「ナトリウムランプのスペクトルの詳細 - 改良版DVD簡易分光器」
「ナトリウム炎色反応のスペクトル(二つのD線)」
「D線が存在しない高圧ナトリウムランプのスペクトル - DVD簡易分光器」
「自作DVD分光器で調べるナトリウムランプのスペクトル」
「メタルハライドランプのスペクトル - DVD簡易分光器」
「半導体レーザー(レーザーポインター)のスペクトル」
「太陽光のスペクトルと主要なフラウンホーファー線」
「フラウンホーファー線の画像が画期的に改善! - 太陽光のスペクトル」
「DVD簡易分光器で見るフラウンホーファー線(太陽光のスペクトル)」
「フラウンホーファー線 - DVD簡易分光器による太陽光のスペクトル」
「光害カットフィルターLPS-P2の分光特性(1) - DVD自作分光器」
「色分解能 (3)」 (「色分解能 (1)」、「色分解能 (2)」、「色分解能 (2)」)
「色分解能 - 1 - ドップラー効果とかゼーマン効果とか....」
「色分解能 - 2 - ドップラー効果とかゼーマン効果とか....」
「ゼーマン効果で太陽の磁場を測る?」
「ドップラー効果で太陽の自転速度を測る話し」
「Hαフィルターを使わずにHα写真を撮る方法」
「測定対象別記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算)」
参考
「国立科学博物館 - 理工学研究部 - 若林文高 - DVD分光器の回折条件」
「Welcome to my homepage. - DVD分光器」
「星は空の彼方、月よりも遠く
- 光害除去フィルター(3)透過特性の観察(2016/03/05)
- 光害除去フィルター(4)-脱線(簡易分光器の直線性)(2016/03/18)」
「ラジオペンチ - DVDのメディアで簡易分光器を作る-その1」
「廊下のむし探検 - 手作り分光器」 (記事一覧)
「ブログ「廊下のむし探検」付録 - 手作り分光器の作り方」
「Web Page of T.Nomoto - スペクトル色々」 (「ネオンランプと水銀ランプ」)
「国立天文台 - 分光宇宙アルバム」
「国立天文台岡山天体物理観測所 - ☆スペクトル物語☆~デジタルアトラス~」
「原子スペクトルの観察と波長の測定 - リュードベリ定数の測定及び原子のエネルギー準位」
「資源エネルギー庁 - 太陽エネルギーの基礎知識」
「岩崎電気 - ランプ光源情報」
「ライトエッジ - 放電ランプ - メタルハライドランプ」
国立天文台編 「理科年表 第88冊」 丸善出版、2014
「太陽双極子磁場の反転」
(とその記事に対するコメント)です。
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太陽の黒点の部分には強い磁場が発生している、なぜそんなことがわかるかというとゼーマン効果が観測されたから、という話があります。
このゼーマン効果というのは
「Wikipedia - ゼーマン効果」
に説明があります。私も専門家じゃないのでこの説明が正しいかどうかは保証できませんが要するに磁場があるとスペクトル線が分裂する現象をいいます。
太陽光のスペクトルを見るとフラウンホーファー線といってところどころに黒い線(=吸収線)がありますが、これも磁場の強いところ、つまり黒点の近辺だと分裂して見えるということです。ゼーマン効果はスペクトル線の分裂以外の現象も引き起こします。詳しくは上記Wikipediaの記事で.... (^^;;
そこで疑問に思うのは「この現象はアマチュアにも観測できるのか」という点です。
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この問題は
1.ゼーマン効果によるスペクトル線の分裂とはいうけれどどのくらいの波長の幅で分裂するのか?
2.そしてそれはアマチュアの機材で観測できるのか?
の二つを調べる必要があります。
上記のWikipediaの記事にも分裂するとは書いてあるのですが、どれだけ分裂するかは書いてありません。
分裂幅を計算する式なんかも見つけたのですが、それよりもっといいものを見つけました。実際にゼーマン効果による吸収線の分裂を撮影した写真で波長がわかるものがあったのです。
「裳華房 - The Sun」
ここにある画像を見ると630.250nmの鉄の吸収線が
(2013-08-21 11:43:15)
と書いてしまったのですが、630.250nm、630.151nm、629.780nmの三つとも本来の鉄の吸収線のようです。
画像を見ると大気の吸収線が細い線になっているに比較して上の三つの吸収線がふくらんでいますがこれがゼーマン効果によるもののようです。
資料(恒星社厚生閣「天文・宇宙の辞典」他)で見た計算式をもとに計算しているのですが、例えば鉄の吸収線630.250nmの4,000Gaussの磁場があるときのゼーマン効果による分裂の波長の差は0.019nmくらいしかないようです。
ですから今回のテーマは、630.250nmの吸収線の0.02nmの波長の違いが識別できるか否か、ということになります。そうとうにきびしい課題です (^^;;
(2013-08-21 21:15:02)
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補足
そのあたりも追求しなければいけないのでしょうが今回はゼーマン効果による分裂が識別できるかどうかがテーマなのでこの程度の分離があるものだということにして先に進みます。
それからスペクトル線(輝線)が分裂するから吸収線も分裂するということになるのかというこも考えなければいけないと思うのですが、実際に吸収線は分裂しているわけですし、輝線=エネルギーが高い状態から低い状態への移行、吸収線=エネルギーが低い状態から高い状態への移行と考えればそうなりそうなのでここも深く考えないことにします (^^;;
(2013-08-21 18:33:20)
(続く)
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まとめ記事
「DVD簡易分光器の自作とトラブルシューティング」 (この記事)
「光源別スペクトル(分光分布)一覧表 - DVD簡易分光器による」
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関連
「簡易分光器の作り方と反省点 - DVD-ROM使用」
「DVD簡易分光器の改良 (1)」
「DVD簡易分光器の改良 (2) - 構造・作り方 」
「DVD簡易分光器の改良 (3) - 仮組立 」
「DVD簡易分光器の改良 (4) - 組み立て」
「簡易分光器にDVD-ROMを使うとゴーストが出る理由」
「DVD簡易分光器のスリット幅と色分解能の関係」
「DVD簡易分光器の波長と画像位置の関係」
「簡易分光器の作り方 - 回折格子をどうする」
「デジカメの分光感度特性と白熱電球のスペクトル」
「デジカメの分光感度特性補正の試み - スペクトル画像のグラフ化」
「スペクトル画像(分光写真)を数値化(グラフ化)する方法」
「DVD簡易分光器の色分解能を岡山天体物理観測所と比較する」
「DVDで作る簡易分光計 - 蛍光灯の分光スペクトル」 (三波長型蛍光灯)
「蛍光灯でもこれだけ違うスペクトル - 自作DVD分光器」
「DVDで作る簡易分光器 - 水銀灯の分光スペクトル」
「DVDで作る簡易分光器の校正のために - ネオン管のスペクトル」
「ナトリウムランプのスペクトルの詳細 - 改良版DVD簡易分光器」
「ナトリウム炎色反応のスペクトル(二つのD線)」
「D線が存在しない高圧ナトリウムランプのスペクトル - DVD簡易分光器」
「自作DVD分光器で調べるナトリウムランプのスペクトル」
「メタルハライドランプのスペクトル - DVD簡易分光器」
「半導体レーザー(レーザーポインター)のスペクトル」
「太陽光のスペクトルと主要なフラウンホーファー線」
「フラウンホーファー線の画像が画期的に改善! - 太陽光のスペクトル」
「DVD簡易分光器で見るフラウンホーファー線(太陽光のスペクトル)」
「フラウンホーファー線 - DVD簡易分光器による太陽光のスペクトル」
「光害カットフィルターLPS-P2の分光特性(1) - DVD自作分光器」
「色分解能 (3)」 (「色分解能 (1)」、「色分解能 (2)」、「色分解能 (2)」)
「色分解能 - 1 - ドップラー効果とかゼーマン効果とか....」
「色分解能 - 2 - ドップラー効果とかゼーマン効果とか....」
「ゼーマン効果で太陽の磁場を測る?」
「ドップラー効果で太陽の自転速度を測る話し」
「Hαフィルターを使わずにHα写真を撮る方法」
「測定対象別記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算)」
参考
「国立科学博物館 - 理工学研究部 - 若林文高 - DVD分光器の回折条件」
「Welcome to my homepage. - DVD分光器」
「星は空の彼方、月よりも遠く
- 光害除去フィルター(3)透過特性の観察(2016/03/05)
- 光害除去フィルター(4)-脱線(簡易分光器の直線性)(2016/03/18)」
「ラジオペンチ - DVDのメディアで簡易分光器を作る-その1」
「廊下のむし探検 - 手作り分光器」 (記事一覧)
「ブログ「廊下のむし探検」付録 - 手作り分光器の作り方」
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「資源エネルギー庁 - 太陽エネルギーの基礎知識」
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「ライトエッジ - 放電ランプ - メタルハライドランプ」
国立天文台編 「理科年表 第88冊」 丸善出版、2014
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