星食計算に必要な精度について考える (2)
前記事
「星食計算に必要な精度について考える (1)」
に星食の予測では恒星の位置(とうぜん月の位置もですが)を角度で0.05"の精度で知る必要があることを書きました。
PENTAX K-rに300mmのレンズを付けると横方向の画角は4.5度になります。つまり1ピクセルが角度の4"相当になります。ということはピクセルの1/80くらいのレベルで起きる現象を観察していることになります。またこの0.05"の分解能を持つ対物レンズに必要な口径は1.5mにもなります。
星食の予測は天文台で行われる観測ほどの精度が要求されるともいえると思います。
--------
日周光行差
前回「年周光行差」で終わりましたが理由があります。「年周光行差」までは太陽系の中心で見た恒星の位置、あるいは地球の中心で見た恒星の位置を考えていました。日周光行差は前記事と違い観測地から見た恒星の位置を考えたときに影響があるものです。だから日周光行差は観測地によって影響の度合いが違います。
いちばん影響が大きくなる赤道上子午線通過時で角度の0.3"くらいのものようです。だから無視することはできませんが星食の時刻に対する影響は1秒以下です。
--------
大気差と極運動
大気差は恒星の視位置(高度・方位角)に相当な影響を与えます。しかし月も同じだけ視位置が変わりますから予測に影響はありません。
極運動の視位置(高度・方位角)与える影響は日周光行差くらいのオーダーのようです。ただこれも恒星・月の視位置に同様の影響を与えますので考慮する必要はありません。
--------
観測地の位置
星食というのは恒星によって地球上に月の影ができることです。実質無限遠にある恒星からの光は平行光線ですから地球上の月の影の大きさは月と同じ大きさです。また月の動きもそのまま地表に投影されることになります。
月の公転軌道半径が38万kmで公転周期は30日ですから月の移動速度は秒速930mくらいです。また地表は秒速440mくらいで月の移動の方向と逆に回転しています。この結果地表の月の影は秒速1400mくらいで移動していくことになります(影の場所によってもっと速くなりますし、影の移動の向きによっては少し遅くなります)
したがって同緯度で1400mくらい離れたところでは星食の時刻は1秒程度違ってきます。
ただこの値は星食ごとにそうとうな違いがありますので注意が必要です。
観測地も100m前後の精度で調べておく必要があります。日本では経度1秒が25mくらいに相当しますから。経緯度で言えば0.1分くらいの精度が必要です。
-------
月縁の形
星食の場合は実際の月と月の影は大きさが同じになりますから上の「観測地の位置」の話は月についても適用できます。
つまり月縁に130mの高さの丘があれば星食の時刻は0.1秒くらい違い、1600mの高さの山があれば1秒違います。観測地の位置と同じでこれは概算値です。
-------
月の重心と形状中心の違い
月の重心と形状中心は黄経方向に0.5"、黄緯方向に0.25"ずれているそうです。これの影響も無視できませんが影響は1秒以下になります。
-------
参考
長沢工 「日食計算の基礎」
長谷川一郎「天文計算入門」
渡邊敏夫 「数理天文学」 (内容未確認)
藤沢健太「日食の計算」
(基準面(ベッセル日食要素)は既知であるという前提で書かれています)
「せんだい宇宙館 - 星食(Occultation)」
「ビデオ観測の方法」
「天平の森天文同好会 星食観測のページ」
(続く)
「星食計算に必要な精度について考える (1)」
に星食の予測では恒星の位置(とうぜん月の位置もですが)を角度で0.05"の精度で知る必要があることを書きました。
PENTAX K-rに300mmのレンズを付けると横方向の画角は4.5度になります。つまり1ピクセルが角度の4"相当になります。ということはピクセルの1/80くらいのレベルで起きる現象を観察していることになります。またこの0.05"の分解能を持つ対物レンズに必要な口径は1.5mにもなります。
星食の予測は天文台で行われる観測ほどの精度が要求されるともいえると思います。
--------
日周光行差
前回「年周光行差」で終わりましたが理由があります。「年周光行差」までは太陽系の中心で見た恒星の位置、あるいは地球の中心で見た恒星の位置を考えていました。日周光行差は前記事と違い観測地から見た恒星の位置を考えたときに影響があるものです。だから日周光行差は観測地によって影響の度合いが違います。
いちばん影響が大きくなる赤道上子午線通過時で角度の0.3"くらいのものようです。だから無視することはできませんが星食の時刻に対する影響は1秒以下です。
--------
大気差と極運動
大気差は恒星の視位置(高度・方位角)に相当な影響を与えます。しかし月も同じだけ視位置が変わりますから予測に影響はありません。
極運動の視位置(高度・方位角)与える影響は日周光行差くらいのオーダーのようです。ただこれも恒星・月の視位置に同様の影響を与えますので考慮する必要はありません。
--------
観測地の位置
星食というのは恒星によって地球上に月の影ができることです。実質無限遠にある恒星からの光は平行光線ですから地球上の月の影の大きさは月と同じ大きさです。また月の動きもそのまま地表に投影されることになります。
月の公転軌道半径が38万kmで公転周期は30日ですから月の移動速度は秒速930mくらいです。また地表は秒速440mくらいで月の移動の方向と逆に回転しています。この結果地表の月の影は秒速1400mくらいで移動していくことになります(影の場所によってもっと速くなりますし、影の移動の向きによっては少し遅くなります)
したがって同緯度で1400mくらい離れたところでは星食の時刻は1秒程度違ってきます。
ただこの値は星食ごとにそうとうな違いがありますので注意が必要です。
観測地も100m前後の精度で調べておく必要があります。日本では経度1秒が25mくらいに相当しますから。経緯度で言えば0.1分くらいの精度が必要です。
-------
月縁の形
星食の場合は実際の月と月の影は大きさが同じになりますから上の「観測地の位置」の話は月についても適用できます。
つまり月縁に130mの高さの丘があれば星食の時刻は0.1秒くらい違い、1600mの高さの山があれば1秒違います。観測地の位置と同じでこれは概算値です。
-------
月の重心と形状中心の違い
月の重心と形状中心は黄経方向に0.5"、黄緯方向に0.25"ずれているそうです。これの影響も無視できませんが影響は1秒以下になります。
-------
参考
長沢工 「日食計算の基礎」
長谷川一郎「天文計算入門」
渡邊敏夫 「数理天文学」 (内容未確認)
藤沢健太「日食の計算」
(基準面(ベッセル日食要素)は既知であるという前提で書かれています)
「せんだい宇宙館 - 星食(Occultation)」
「ビデオ観測の方法」
「天平の森天文同好会 星食観測のページ」
(続く)
« 星食計算に必要な精度について考える (1) | トップページ | 手抜き星食計算 (1) »
「編集用」カテゴリの記事
- メモ(2013.11.04)
- 天体望遠鏡・拡大撮影の原理 (1)(2013.07.26)
- 天体望遠鏡・拡大撮影の原理 (2)(2013.07.26)
- 天体望遠鏡・拡大撮影の原理 (3)(2013.07.26)
- 天体望遠鏡・拡大撮影の原理 (0)(2013.07.26)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント