太陽の自転軸のパラメーターP,B0,L0を「計算で」求める (5)(暫定版)
前回までの話の要約
2013年8月11日正午(JST)の太陽の自転軸の方向を示すパラメータB0の値を計算で求めようとした。
NASA JPLの暦を使って計算したところ6.44度と国立天文台の発表値(?)と同一の結果が得られた。
一方国立天文台の暦を使ってB0を計算したところ6.46度という結果になってしまった。
国立天文台の暦にある太陽の視赤経・視赤緯が真の春分点に対するものなのに対し太陽自転軸の方向の赤経・赤緯が2013.0分点に対するものであることが原因(つまり歳差の影響)なのだろうか?
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歳差の影響を考えて計算したところやっぱり結果はあいませんでした。だいたい歳差というのは基準になる春分点の8ヶ月くらいの違いだと赤経・赤緯に対する影響はたいしたことはありません。上のようにB0に0.02度の差が出てしまうということは考えられません。
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ところで歳差の影響はどう計算するのか?
いろいろ調べたり考えたりしたのですがけっきょくどこまで考えるかでかなり違います。
一番簡単なのは日月歳差のみを考えたケースです。いま課題としているB0の値を小数点以下二桁まで求めるというようなものであればこれでなんら問題ありません。
これは
・まず赤道座標を黄道座標に変換する(地球の自転軸の傾き分回転する)
・次に歳差による黄経の分座標を回転する
・最後に黄道座標を赤道座標に変換する(地球の自転軸の傾き分(反対に)回転する)
で済みます。これについては詳細にかつわかりやすく説明したサイトがありました。
「FNの高校物理(分野別目次)」
「歳差による星の位置変化」
惑星歳差まで考えた場合はどうなるのかというと、これは
・まずもとの春分点が赤道と黄道の交点にくるように天頂を中心に回転する。
・赤道の傾きの変化分だけ地心=赤道と黄道の交点を結ぶ直線を軸に回転する。
・赤道と黄道の交点が新しい春分点の位置になるように天頂を中心に回転する。
となり、ちょっと面倒ですが日月歳差のときとおんなじで三回の座標回転で済みます。
ただどれだけ回転するかを調べる(計算する)のに手間がかかります。
こっちは長沢工「天体の位置計算」の「歳差による赤経、赤緯の変化」に詳しく書いてあります。そのまま引用するのもどうかと思うので自分で消化できたらそのうち記事にします (^^;;
惑星歳差は日月歳差に比較し小さいので「簡略式」になるとどっちもたいしてかわりません。
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さてじゃあなぜ国立天文台のデータを使うと結果が合わないのか?
じつは「太陽の自転軸の方向」の単なる精度の問題でした (^^;;
「太陽の自転軸の方向」の赤緯が63.9度となっていますが、これは63.90度ではなく有効数字3桁の正真正銘63.9度のようです。またよく考えると「太陽の自転軸の方向」の赤経19時05分というのも角度で考えると0.01度までの精度はありません。
角度で0.01度までの精度があるNASA JPLのデータを使うことにします。ただこれはJ2000.0なので真春分点の値に変換する必要があります。真春分点となると13年違いますから0.01度の精度とは言えさすがに歳差の影響が出てきます(真春分点で、と書いてはいますが歳差しか考えていませんので実際は平均春分点です。いうまでもなくこの精度では差はまったくありません)
2013年8月11日正午(JST)の太陽の自転軸の方向
赤経 286.13度(J2000.0) ==> 283.16度(2013年8月)
赤経 286.13度(J2000.0) ==> 286.16度(2013年8月)
赤緯 063.87度(J2000.0) ==> 063.89度(2013年8月)
となりこのデータを使って再度計算を行ったところB0は6.44度になりました。
なお283.16度と言うのは19時04分38秒で、四捨五入すれば確かに19時05分です。
(2013-08-17 17:07:34)
一般歳差(日月歳差+惑星歳差)について説明したものもありましたので新たに記事にしました。
「赤道座標に一般歳差を反映する」 編集
(2013-08-18 13:24:05)
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「太陽の自転軸のパラメーターP,B0,L0を「計算で」求める (1)」 編集
ある時点の太陽の自転軸を表すB0から任意の時点のB0をどう求めるか考えていたら....
「太陽の自転軸のパラメーターP,B0,L0を「計算で」求める (2)」 編集
「太陽の自転軸の方向」がわかればそこからB0などの太陽の自転軸向きを表す量との
関係がわかりそうです。
「太陽の自転軸のパラメーターP,B0,L0を「計算で」求める (3)」 編集
実際に国立天文台の暦でB0を計算してみました。でも正しい結果が得られません。
「太陽の自転軸のパラメーターP,B0,L0を「計算で」求める (4)」 編集
NASAジェット推進研究所の暦を使って求めたB0は国立天文台の数値と一致しました。
「太陽の自転軸のパラメーターP,B0,L0を「計算で」求める (5)」 編集
国立天文台の「自転軸の方向」は計算に必要な精度がなかったのがB0の不一致の原因でした。
「太陽の自転軸のパラメーターP,B0,L0を「計算で」求める (6)」 編集
北極方位角Pの値を求めます。
「極座標と直交座標の変換(方向余弦) (1/3)」 編集
「極座標と直交座標の変換(方向余弦) (2/3)」 編集
「極座標と直交座標の変換(方向余弦) (3/3)」 編集
「度分秒・時分秒と度との変換(1)」 編集
「度分秒・時分秒と度との変換(2)」 編集
「「内積」というもの」 編集
2013年8月11日正午(JST)の太陽の自転軸の方向を示すパラメータB0の値を計算で求めようとした。
NASA JPLの暦を使って計算したところ6.44度と国立天文台の発表値(?)と同一の結果が得られた。
一方国立天文台の暦を使ってB0を計算したところ6.46度という結果になってしまった。
国立天文台の暦にある太陽の視赤経・視赤緯が真の春分点に対するものなのに対し太陽自転軸の方向の赤経・赤緯が2013.0分点に対するものであることが原因(つまり歳差の影響)なのだろうか?
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歳差の影響を考えて計算したところやっぱり結果はあいませんでした。だいたい歳差というのは基準になる春分点の8ヶ月くらいの違いだと赤経・赤緯に対する影響はたいしたことはありません。上のようにB0に0.02度の差が出てしまうということは考えられません。
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ところで歳差の影響はどう計算するのか?
いろいろ調べたり考えたりしたのですがけっきょくどこまで考えるかでかなり違います。
一番簡単なのは日月歳差のみを考えたケースです。いま課題としているB0の値を小数点以下二桁まで求めるというようなものであればこれでなんら問題ありません。
これは
・まず赤道座標を黄道座標に変換する(地球の自転軸の傾き分回転する)
・次に歳差による黄経の分座標を回転する
・最後に黄道座標を赤道座標に変換する(地球の自転軸の傾き分(反対に)回転する)
で済みます。これについては詳細にかつわかりやすく説明したサイトがありました。
「FNの高校物理(分野別目次)」
「歳差による星の位置変化」
惑星歳差まで考えた場合はどうなるのかというと、これは
・まずもとの春分点が赤道と黄道の交点にくるように天頂を中心に回転する。
・赤道の傾きの変化分だけ地心=赤道と黄道の交点を結ぶ直線を軸に回転する。
・赤道と黄道の交点が新しい春分点の位置になるように天頂を中心に回転する。
となり、ちょっと面倒ですが日月歳差のときとおんなじで三回の座標回転で済みます。
ただどれだけ回転するかを調べる(計算する)のに手間がかかります。
こっちは長沢工「天体の位置計算」の「歳差による赤経、赤緯の変化」に詳しく書いてあります。そのまま引用するのもどうかと思うので自分で消化できたらそのうち記事にします (^^;;
惑星歳差は日月歳差に比較し小さいので「簡略式」になるとどっちもたいしてかわりません。
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さてじゃあなぜ国立天文台のデータを使うと結果が合わないのか?
じつは「太陽の自転軸の方向」の単なる精度の問題でした (^^;;
「太陽の自転軸の方向」の赤緯が63.9度となっていますが、これは63.90度ではなく有効数字3桁の正真正銘63.9度のようです。またよく考えると「太陽の自転軸の方向」の赤経19時05分というのも角度で考えると0.01度までの精度はありません。
角度で0.01度までの精度があるNASA JPLのデータを使うことにします。ただこれはJ2000.0なので真春分点の値に変換する必要があります。真春分点となると13年違いますから0.01度の精度とは言えさすがに歳差の影響が出てきます(真春分点で、と書いてはいますが歳差しか考えていませんので実際は平均春分点です。いうまでもなくこの精度では差はまったくありません)
2013年8月11日正午(JST)の太陽の自転軸の方向
赤経 286.13度(J2000.0) ==> 286.16度(2013年8月)
赤緯 063.87度(J2000.0) ==> 063.89度(2013年8月)
となりこのデータを使って再度計算を行ったところB0は6.44度になりました。
なお283.16度と言うのは19時04分38秒で、四捨五入すれば確かに19時05分です。
(2013-08-17 17:07:34)
一般歳差(日月歳差+惑星歳差)について説明したものもありましたので新たに記事にしました。
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(2013-08-18 13:24:05)
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