内容が古すぎる天文計算の本
天文計算に関する本は目についたら中身をのぞくようにしているのですが、ときどきなんとなくしっくりこない感じがすることがあります。
それがなぜなのかなんとなくわかってきました。そのことを書きます。
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今どき例えばISON(アイソン)彗星がどこに見えるかというようなことを知りたければいくらでも方法があります。一昨日書いたNASA JPLの暦を利用してもいいですし、ステラナビゲーターのようなソフトウェアもあります。iPhoneの数百円のアプリだってそのくらいのことはできるでしょう。
となると軌道要素などから惑星・彗星の任意の時刻の位置を計算しようという人とか赤経・赤緯や観測値の緯度・経度・時刻から天体の方位角・高度をもとめようとする方はめったにいないでしょう。先日記事に書いたように長沢工氏の言う「計算マニア」あるいは「天文計算好き」に限られることになります。
要するに需要がないわけですからこういう分野の書籍はなかなか出版されません。さらにWebなりソフトウェアで天体情報はいくらでも調べられるとなると出版はますます減りそうです。それで入手できる本は年代物が多くなってしまいました。
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たとえばベッセルの補間式というものを考えます。
これは多項式近似の補間ですが係数が必要です。天文計算の本には係数が表にしてあってそれを参照して使うようになっています。
ベッセルの補間式をプログラムなりExcelのワークシートで実現することを考えます。
天文計算の本に書いてある方法を使うとなると係数を表からもってこなければならないので「テーブルルックアップ」の操作が必要になります。Excelでやろうとしたら(私みたいに)ここでつまずいてしまう人も多いと思います。あるいはIFを際限なく書き続けるとか....
またどうやってテーブルルックアップするかという以前に本にある数値を打ち込んでテーブルを作る作業も必要です。
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じつはこのベッセル補間式の係数というのは簡単に計算できます。n次の項の係数はn次の多項式にすぎません。どれだけ簡単か書いておくと例えば B2=n*(n-1)/4 です。
係数をこんな式で計算するだけならなんてことはありません。Excel初心者にもプログラム初心者にもすぐに値を求めることができるでしょう。
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つまり私達が目にする「天文計算の本」は「計算」の本にもかかわらずとても計算しにくい方法が書いてあるわけです。
さらにもっと言えばベッセル補間式の知識が必要か(重要か)ということも考えなければならないのでしょうが....
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今どきExcelでちょっとした計算ができる人はいくらでもいるでしょう。言語は何にしても自分の解決しなければならないことをプログラムで書ける能力・環境のある人もたくさんいるでしょう。プログラマブル電卓の達人みたいな方もいるかも。
プログラムを使えば(Excelの場合も計算式が書けるというのはプログラムが書けるということに近いです。Excelには制御構造がないと思われる方もいらっしゃると思いますがセルの依存関係でそれに近いものを実現できます)いくら複雑な計算でも人手を介さずにできます。しかもこのブログで話題にしているような計算なら瞬時にできてしまいます。
つまり今の時代「計算のコスト」はもうほとんどゼロになっています。
一方今参照できる天文計算の本というのは出版年度を見ると「計算のコスト」がバカ高かった時代に出版されたものが多いようです。対数表で計算した時代の本は古書店でも行かないとないと思いますが、タイガー計算機から電卓の時代に出版された本はまだまだ健在のようです。
そういう時代に必要なデータを算出するための最大の優先事項は「できるだけ計算量を少なくする」ということだったでしょう。これがベッセルの補間式の係数を計算で求めるのではなく表を参照するということでやってある理由でしょう。
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そういうことを考えると『「計算のコスト」はもうほとんどゼロ』ということを意識して書いた「Excelで計算する○○」みたいな記事も存在価値があるのかもしれません。需要は少ないにしても....
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補足1
最近出版された本であれば「計算コストはほとんどゼロ」であることを意識して書いたと思われるものもあります。長沢工「日食計算の基礎」はそうでしょう。
補足2
計算コストはどんどん小さくなるのに「人間の頭脳の問題解決コスト」はなかなか小さくなりません。というより増大しているようにも見えます。
となると考えることをできるだけ少なくし単純計算で済ませることを多くするというのが問題解決の早道でしょう。いいことだか悪いことだかはわかりませんが....
それがなぜなのかなんとなくわかってきました。そのことを書きます。
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今どき例えばISON(アイソン)彗星がどこに見えるかというようなことを知りたければいくらでも方法があります。一昨日書いたNASA JPLの暦を利用してもいいですし、ステラナビゲーターのようなソフトウェアもあります。iPhoneの数百円のアプリだってそのくらいのことはできるでしょう。
となると軌道要素などから惑星・彗星の任意の時刻の位置を計算しようという人とか赤経・赤緯や観測値の緯度・経度・時刻から天体の方位角・高度をもとめようとする方はめったにいないでしょう。先日記事に書いたように長沢工氏の言う「計算マニア」あるいは「天文計算好き」に限られることになります。
要するに需要がないわけですからこういう分野の書籍はなかなか出版されません。さらにWebなりソフトウェアで天体情報はいくらでも調べられるとなると出版はますます減りそうです。それで入手できる本は年代物が多くなってしまいました。
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たとえばベッセルの補間式というものを考えます。
これは多項式近似の補間ですが係数が必要です。天文計算の本には係数が表にしてあってそれを参照して使うようになっています。
ベッセルの補間式をプログラムなりExcelのワークシートで実現することを考えます。
天文計算の本に書いてある方法を使うとなると係数を表からもってこなければならないので「テーブルルックアップ」の操作が必要になります。Excelでやろうとしたら(私みたいに)ここでつまずいてしまう人も多いと思います。あるいはIFを際限なく書き続けるとか....
またどうやってテーブルルックアップするかという以前に本にある数値を打ち込んでテーブルを作る作業も必要です。
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じつはこのベッセル補間式の係数というのは簡単に計算できます。n次の項の係数はn次の多項式にすぎません。どれだけ簡単か書いておくと例えば B2=n*(n-1)/4 です。
係数をこんな式で計算するだけならなんてことはありません。Excel初心者にもプログラム初心者にもすぐに値を求めることができるでしょう。
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つまり私達が目にする「天文計算の本」は「計算」の本にもかかわらずとても計算しにくい方法が書いてあるわけです。
さらにもっと言えばベッセル補間式の知識が必要か(重要か)ということも考えなければならないのでしょうが....
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今どきExcelでちょっとした計算ができる人はいくらでもいるでしょう。言語は何にしても自分の解決しなければならないことをプログラムで書ける能力・環境のある人もたくさんいるでしょう。プログラマブル電卓の達人みたいな方もいるかも。
プログラムを使えば(Excelの場合も計算式が書けるというのはプログラムが書けるということに近いです。Excelには制御構造がないと思われる方もいらっしゃると思いますがセルの依存関係でそれに近いものを実現できます)いくら複雑な計算でも人手を介さずにできます。しかもこのブログで話題にしているような計算なら瞬時にできてしまいます。
つまり今の時代「計算のコスト」はもうほとんどゼロになっています。
一方今参照できる天文計算の本というのは出版年度を見ると「計算のコスト」がバカ高かった時代に出版されたものが多いようです。対数表で計算した時代の本は古書店でも行かないとないと思いますが、タイガー計算機から電卓の時代に出版された本はまだまだ健在のようです。
そういう時代に必要なデータを算出するための最大の優先事項は「できるだけ計算量を少なくする」ということだったでしょう。これがベッセルの補間式の係数を計算で求めるのではなく表を参照するということでやってある理由でしょう。
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そういうことを考えると『「計算のコスト」はもうほとんどゼロ』ということを意識して書いた「Excelで計算する○○」みたいな記事も存在価値があるのかもしれません。需要は少ないにしても....
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補足1
最近出版された本であれば「計算コストはほとんどゼロ」であることを意識して書いたと思われるものもあります。長沢工「日食計算の基礎」はそうでしょう。
補足2
計算コストはどんどん小さくなるのに「人間の頭脳の問題解決コスト」はなかなか小さくなりません。というより増大しているようにも見えます。
となると考えることをできるだけ少なくし単純計算で済ませることを多くするというのが問題解決の早道でしょう。いいことだか悪いことだかはわかりませんが....
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