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2013年9月29日 (日)

光度等級とは何か?

以前書いた記事

  「写真から恒星の光度を求めるには?



  「画像のGチャンネルから求めた恒星の光度はVt光度と良い相関があるらしい」

という話を書きました。

そのときたぶん記事を読んだ方は疑問を持たれたのではないかと思います。

  Vt光度って何?
  Vt光度とV光度(実視等級)とどう違うの?
  そもそも光度等級って何?

じつは私も疑問を持ちました。持ちましたがよくわからないのであえてそこには触れませんでした (^^;;

まだわかったというわけではありませんが、放っておくのもどうかと思うのでわかった範囲で書きます。

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実視等級(その一)

目で見た光度。たいへんわかりやすですが、一方で定義がさっぱりわからないという面もあります。「この望遠鏡の口径は手のひらサイズ」みたいな。
「基準星と光度を比較して光度等級を決める」のはいいとして基準星の光度等級はどうやって決めるんでしょう?

フェヒナーの法則

  「感覚の強さは与えられた刺激の強さの対数に比例する」

人間の感覚が頼りです。

写真等級

  「非整色乾板による写真で測定する」

そうです。
乾板の濃度と光度等級に単純な関係があるとは思えませんが校正する手段はいくらでもありそうです。

写真実視等級

  「パンクロ乾板に黄色フィルターをかけて写した写真で測定する」

写真の乾板はエネルギーの高い(つまり波長が短い)光によく感光するはずなのでそこのところ補正して人間の目で見たときと同じなるようにしようという話みたいです。

実視等級(そのニ)

誰しも実視等級をもっと定量的に定義したいと思います。
理科年表やその他の書籍などを参考にすると現在は次のように定義(測定)されているのではないかと思います(もっと厳密に定義されているような気もします)

  透過度がもっとも大きい波長が550mで半値幅83nmのフィルターを通し光電管で測定する。

光電管は光電効果を利用していますから電流は入射した光子の数に比例するはずです。比例しなくても校正の手段はあると思いますが。

この「実視等級の定義には変遷があったようです。初期の定義(提案と言った方がいいかも)だと思いますが

  反射鏡で、透過度がもっとも大きい波長が550nmで半値幅が70nmのフィルターを使って....

と書かれたものもありました。

反射鏡で、というのは屈折だと対物レンズの透過特性に依存してしまうからでしょう。口径の大きな対物レンズはけっこうクセがあるらしいです。

以上はV光度になりますがB光度の方は

  透過度がもっとも大きい波長が400nmで半値幅が100nmのフィルターで....

と定義されているようです。

放射等級

これまでの定義はフィルターを使って等級を決めているわけですがフィルターを使わずその恒星のすべての(つまり可視光線以外も含めて)輻射の量から光度を決定するという方法もあります。これは放射等級というそうです。

ちょっと余談になります。先日のほよほよさんの記事

  「くじら座 - Mira - ミラ型変光星

にあったミラなんですが、放射等級という観点で見るとそんなに大きな変光をしているわけではないようです。輻射のピークが赤外領域にあり可視光線のところは裾野になってしまうためちょっと温度が変わっただけで(=輻射のピークが移動しただけで)大きく変光するということのようです。

この放射等級は「恒星の全輻射量」で決まるので絶対等級ということになるようです。

  放射等級 Mbol = 4.75 - 2.5 log( 恒星の全輻射量 / 太陽の全輻射量 )

という定義がありました。つまり太陽は放射等級から言うと4.75等星と(定義)されていることになります。

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ということで次はヒッパルコス(=Hipparcos)星表やティコ(=Tycho)星表で使われているVt光度になるのですがVt光度についてはまだ使用するフィルターの中心波長と半値幅を確認できていません。
でもなんとかVt、Bt光度とV光度、B光度の換算式だけは見つけました。

  V = VT + 0.008 - 0.0988*(BT-VT)
  B = BT + 0.018 - 0.2580*(BT-VT)

この式は最初

  「C2A (Computer Aided Astronomy)

で見つけました。

ただこの式の根拠・出典がわかりません。いろいろ調べたのですが、

  「The Amateur Sky Survey - Converting Tycho magnitudes to the standard scale

あたりみたいな気がしますが....

ESAの資料にもあたっているのですが直接的な定義はまだ見つかっていません。

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以上がわかったあとで


  「これまでの検証結果
  「今村和義 - デジタル一眼レフカメラによる測光観測の検証

をあらためて読むと画像のGチャンネルから恒星の光度を求めることがそれなりに根拠があることだということがわかります。

(2013-09-29 20:13:00、2013-09-30 10:16:37)

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