小惑星による掩蔽(星食)の予測はあてになるか?
最新の記事は
「22日早朝の小惑星による4.7等星の掩蔽」
にあります。
(2013-10-21 20:55:00)
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小惑星による星食(掩蔽)は月によるものとはかなり違います。
星食というのは簡単にいうと恒星の光によってできる月や小惑星の影を見ていることになります。そして恒星からの光はほとんど平行光線なので月や小惑星の影の大きさは月や小惑星そのものの大きさとかわりません(地表面が恒星からの光から傾いていればその分広がりますが)
ですから小惑星の場合掩蔽が起きる場所(星食をみることができる場所)は非常に限られたものになります。東京や群馬では見られなかったが埼玉では見えたなんてことがふつうだということになります。
それから地表面の月や小惑星の影は地球とその天体の相対速度で移動します。月の場合に比べ小惑星の場合は一般的には桁違いに速くなります。今調べているカルダエアの場合は計算してみると中心食でも継続時間は2.9秒でした。カルダエアを半径48kmの球だと考えるとなんと秒速30km以上にもなります。
だからカルダエアの中心食時刻は能登半島と相馬でも10秒程度しか違いません。月による星食と異なり観測時刻から観測地を正確に特定するのはムリでしょう。
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ところで天体観測の教科書「星食・月食・日食観測[編]」にこんな話があります。
1991年に直径150kmの小惑星による1.9等星の掩蔽があったそうです。直径150kmですから掩蔽帯の幅もその程度しかありません。同書にある図も見ると初期予想では掩蔽帯は屋久島・種子島あたり、改良予想では鹿児島県を通るとされていたそうです。
ところが実際に掩蔽が起きたのは関東地方だったとか。もっとも関東にもダメ元で待機していた人がたくさんいたらしく報告だけでも数十人からあったととのことです。というか誰か見ていたから「掩蔽帯は関東地方を通った」と言えるわけですが....
みんなで見ていたら誰かが見ることができる。
どんなに条件が悪くてもじっと待っていてこそ見られることもある。
という教訓を思い出させる話です。
22年前の話ですが小惑星の掩蔽予測はあんまり信用すると痛い目にあう(がっかりする?)と考えておいた方がよさそうです。
観測精度と計算精度が問題なのですが22年前だったら計算精度は今とたいして違わないような気がします。小惑星の軌道が正しく求まっていなかったということでしょうか。
恒星の位置が違っていたという可能性もありますが22年前とは言え1.9等星ですからこれはないと思います。
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昨日記事にしたExcelのワークシートで計算して見ると最大継続時間は2.9秒くらいのようですが、郡山駅前の継続時間は2.3秒、三春ダムの継続時間は2.2秒でどちらも中心から少しずれています(注)
調べて見ると私の計算では掩蔽帯の中心は郡山駅前の数十km南を通っています。ただいろいろなところで計算して天文年鑑の図と比較してみると私の計算は天文年鑑にある掩蔽帯より数十km南側にあるようです。
とすれば郡山駅前とか三春ダムというのは掩蔽帯の中心に近いところなのかもしれません。
でも、これは天文年鑑の予測が正しいとした場合の話です。ひょっとしたら私の予測の方が正しい__正しいというよりまぐれであたったというべきでしょうが__かもしれません。
こればっかりはその日にならないとわからないです。
「ダメ元で東京で観測」というのもありかも.....
注
掩蔽継続時間は次の式で概算できるはずです。
中心食の場合の継続時間(今回の313 Chaldaea=HIP 47130の場合で2.8秒)をTo、
小惑星の視半径をRo、
恒星と小惑星のもっとも近づいたときの離角をR、
とします。
継続時間 ≒ To * sqrt(Ro^2 - R^2) / Ro
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星食(掩蔽)に関する関連記事や参考文献の一覧はこちら
「星食(掩蔽)参考文献・関連記事一覧」 編集
「22日早朝の小惑星による4.7等星の掩蔽」
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(2013-10-21 20:55:00)
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小惑星による星食(掩蔽)は月によるものとはかなり違います。
星食というのは簡単にいうと恒星の光によってできる月や小惑星の影を見ていることになります。そして恒星からの光はほとんど平行光線なので月や小惑星の影の大きさは月や小惑星そのものの大きさとかわりません(地表面が恒星からの光から傾いていればその分広がりますが)
ですから小惑星の場合掩蔽が起きる場所(星食をみることができる場所)は非常に限られたものになります。東京や群馬では見られなかったが埼玉では見えたなんてことがふつうだということになります。
それから地表面の月や小惑星の影は地球とその天体の相対速度で移動します。月の場合に比べ小惑星の場合は一般的には桁違いに速くなります。今調べているカルダエアの場合は計算してみると中心食でも継続時間は2.9秒でした。カルダエアを半径48kmの球だと考えるとなんと秒速30km以上にもなります。
だからカルダエアの中心食時刻は能登半島と相馬でも10秒程度しか違いません。月による星食と異なり観測時刻から観測地を正確に特定するのはムリでしょう。
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ところで天体観測の教科書「星食・月食・日食観測[編]」にこんな話があります。
1991年に直径150kmの小惑星による1.9等星の掩蔽があったそうです。直径150kmですから掩蔽帯の幅もその程度しかありません。同書にある図も見ると初期予想では掩蔽帯は屋久島・種子島あたり、改良予想では鹿児島県を通るとされていたそうです。
ところが実際に掩蔽が起きたのは関東地方だったとか。もっとも関東にもダメ元で待機していた人がたくさんいたらしく報告だけでも数十人からあったととのことです。というか誰か見ていたから「掩蔽帯は関東地方を通った」と言えるわけですが....
みんなで見ていたら誰かが見ることができる。
どんなに条件が悪くてもじっと待っていてこそ見られることもある。
という教訓を思い出させる話です。
22年前の話ですが小惑星の掩蔽予測はあんまり信用すると痛い目にあう(がっかりする?)と考えておいた方がよさそうです。
観測精度と計算精度が問題なのですが22年前だったら計算精度は今とたいして違わないような気がします。小惑星の軌道が正しく求まっていなかったということでしょうか。
恒星の位置が違っていたという可能性もありますが22年前とは言え1.9等星ですからこれはないと思います。
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昨日記事にしたExcelのワークシートで計算して見ると最大継続時間は2.9秒くらいのようですが、郡山駅前の継続時間は2.3秒、三春ダムの継続時間は2.2秒でどちらも中心から少しずれています(注)
調べて見ると私の計算では掩蔽帯の中心は郡山駅前の数十km南を通っています。ただいろいろなところで計算して天文年鑑の図と比較してみると私の計算は天文年鑑にある掩蔽帯より数十km南側にあるようです。
とすれば郡山駅前とか三春ダムというのは掩蔽帯の中心に近いところなのかもしれません。
でも、これは天文年鑑の予測が正しいとした場合の話です。ひょっとしたら私の予測の方が正しい__正しいというよりまぐれであたったというべきでしょうが__かもしれません。
こればっかりはその日にならないとわからないです。
「ダメ元で東京で観測」というのもありかも.....
注
掩蔽継続時間は次の式で概算できるはずです。
中心食の場合の継続時間(今回の313 Chaldaea=HIP 47130の場合で2.8秒)をTo、
小惑星の視半径をRo、
恒星と小惑星のもっとも近づいたときの離角をR、
とします。
継続時間 ≒ To * sqrt(Ro^2 - R^2) / Ro
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