月の視位置を計算で求めたい! (2)
けっきょくはっきりしているのは「月の位置の計算は面倒である」ということです。
やり方としては
1. ブラウンの理論をもっと簡略化したようなものを使う。
2. 理論あるいは数値積分で求められた月の位置を近似したものを使う。
のどちらかになりそうです。
1.に関しては長沢工「天体の位置計算」にある海上保安庁水路部の式なんかはそうだと思います。三角関数の級数になっていますが角度の引数にいろんな係数がかかっていてそれぞれ何かの摂動の反映になっているのでしょう。
2.に関しては短期(一ヶ月くらい)であれば
「「天測暦」、「天測略暦」」
に海上保安上海洋情報部の式があります。この式も三関数の級数になっているのですが各項がcos(Nθ)になっていますので1.とは違って摂動とかそういうのと無関係に位置推算のデータから近似式を作ったものでしょう。
また2.のタイプはNASAから提供されているというコメントをブラック・イマイさんからいただきました(前記事のコメント参照)
-----
ただこれではあたりまえすぎるので違う方法を考えてみます。
私が必要なのは星食のときの月の位置情報です。そんなに長い時間の位置情報は不要です。全国で使えるものでも1時間くらいで十分ですし、自分の観測地だけだったらそれこそ必要なのは10分くらいです(ただし精度は重要です。最低でも角度の度で小数点以下4桁、できれば5桁~6桁ほしいです)
A. 星食に近い時点の月やその他の天体の位置と速度の情報を入手し数値積分する。
(その他の天体と書きましたが短時間の積分なので地球と太陽で十分なはずです)
B. 接触軌道要素を入手して軌道計算する。
どっちもあんまり省力化にならない上に刹那的ですが....
A.、B.ともある時点の軌道に関する情報が必要ですからそれが入手できることが前提です。
で、これらは実際に入手可能です。NASA JPL Horizonsにあります。
A.は次の機会にまわしB.の方をやってみました。
手順はオーソドックスに
a. 平均近点離角から離心近点離角を求める。
b. 離心近点離角から軌道面での動径とx,y座標を求める。
c. 近日点引数、軌道傾斜角、昇交点赤経の分を順次回転する。
d. これで赤道直交座標が求まるのでそこから赤経・赤緯に変換する。
とします。

軌道要素のところがとんでもなく桁数が多いですが、元データはもっと桁数がありました。
-----
実際にやってみているのですがまだ赤経・赤緯が意図した値になっていません。時系・座標系の取り違えと思われますが、ひとまず直交座標で比較してみます。
(接触)軌道要素の元期(?)から一時間後の予測です。
2013.10.01 00:00:00TTから一時間後
精度はぎりぎりな感じです。一時間しか経ってないのにこれだけの桁しか一致しないというのがちょっと驚きです。月の位置の推算がむずかしいのも当然と思われる結果になりました。
「月_軌道計算.xls」
やり方としては
1. ブラウンの理論をもっと簡略化したようなものを使う。
2. 理論あるいは数値積分で求められた月の位置を近似したものを使う。
のどちらかになりそうです。
1.に関しては長沢工「天体の位置計算」にある海上保安庁水路部の式なんかはそうだと思います。三角関数の級数になっていますが角度の引数にいろんな係数がかかっていてそれぞれ何かの摂動の反映になっているのでしょう。
2.に関しては短期(一ヶ月くらい)であれば
「「天測暦」、「天測略暦」」
に海上保安上海洋情報部の式があります。この式も三関数の級数になっているのですが各項がcos(Nθ)になっていますので1.とは違って摂動とかそういうのと無関係に位置推算のデータから近似式を作ったものでしょう。
また2.のタイプはNASAから提供されているというコメントをブラック・イマイさんからいただきました(前記事のコメント参照)
-----
ただこれではあたりまえすぎるので違う方法を考えてみます。
私が必要なのは星食のときの月の位置情報です。そんなに長い時間の位置情報は不要です。全国で使えるものでも1時間くらいで十分ですし、自分の観測地だけだったらそれこそ必要なのは10分くらいです(ただし精度は重要です。最低でも角度の度で小数点以下4桁、できれば5桁~6桁ほしいです)
A. 星食に近い時点の月やその他の天体の位置と速度の情報を入手し数値積分する。
(その他の天体と書きましたが短時間の積分なので地球と太陽で十分なはずです)
B. 接触軌道要素を入手して軌道計算する。
どっちもあんまり省力化にならない上に刹那的ですが....
A.、B.ともある時点の軌道に関する情報が必要ですからそれが入手できることが前提です。
で、これらは実際に入手可能です。NASA JPL Horizonsにあります。
A.は次の機会にまわしB.の方をやってみました。
手順はオーソドックスに
a. 平均近点離角から離心近点離角を求める。
b. 離心近点離角から軌道面での動径とx,y座標を求める。
c. 近日点引数、軌道傾斜角、昇交点赤経の分を順次回転する。
d. これで赤道直交座標が求まるのでそこから赤経・赤緯に変換する。
とします。

軌道要素のところがとんでもなく桁数が多いですが、元データはもっと桁数がありました。
-----
実際にやってみているのですがまだ赤経・赤緯が意図した値になっていません。時系・座標系の取り違えと思われますが、ひとまず直交座標で比較してみます。
(接触)軌道要素の元期(?)から一時間後の予測です。
2013.10.01 00:00:00TTから一時間後
暦 | 計算値 | |
x | -306127.15 | -306127.03 |
y | 245059.62 | 245059.71 |
z | 67813.32 | 67813.35 |
精度はぎりぎりな感じです。一時間しか経ってないのにこれだけの桁しか一致しないというのがちょっと驚きです。月の位置の推算がむずかしいのも当然と思われる結果になりました。
「月_軌道計算.xls」
« 月の視位置を計算で求めたい! (1) | トップページ | 月の視位置を計算で求めたい! (3) »
「編集用」カテゴリの記事
- メモ(2013.11.04)
- 天体望遠鏡・拡大撮影の原理 (1)(2013.07.26)
- 天体望遠鏡・拡大撮影の原理 (2)(2013.07.26)
- 天体望遠鏡・拡大撮影の原理 (3)(2013.07.26)
- 天体望遠鏡・拡大撮影の原理 (0)(2013.07.26)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント