SHINさんの写真にアイソン彗星を探す
アイソン彗星はそのうち見よう(撮ろう)と思っていたら残念ながらお亡くなりになってしまいました (^^;;
南側の空は比較的得意なんですが北側は方向によって見る場所を探す必要がありそれもピンポイントなのでなかなかたいへんです。じつは北極星を見たこともほとんどないです。北極星は見えるほど空の状態がよいことがあんまりないということもありますが....
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さて今回は「人の褌で....」みたいな記事です。
二ヶ月ほど前でしたがSHINさんの記事に
「捉えることができません・・・」
というものがありました。この記事の最初の画像がアイソン彗星のある方向を写したものです。
まだまだアイソン彗星が暗かった頃の写真ですから写ってはいないだろうということだったのですがほんとに写っていないのか探してみました。
結論だけ先に書くと見つかりませんでした。あんまり記事としてはおもしろくないのですが夜なべ仕事の結果を捨てるのも忍びないのでどうやって探したかを記事にします。
それにしても五島の空はきれいです。ISO3200で60秒露出だそうですが、うちじゃ10秒超えたら白飛びしそうです。
SHINさんの写真には星が際限なく写っています。35mmなのにどうやら10等星前後まで写っているみたいです。
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やり方はこれまでの「成果」を使ったものです。カメラの方向や傾きを適当に仮定して天体の赤経・赤緯からそれが画像のどの位置に写るか計算します。とうぜん実際の画像の位置とは異なりますので計算上の位置と実際の画像の位置が最小になるようなカメラの向き・傾きを求めます。
あとはアイソン彗星の赤経・赤緯からその画像上の位置を求めその付近にアイソン彗星が写ってないか目を皿のようにして探します。
もちろん他の彗星や小惑星を探すのにも使えますし、画像上の位置から未知の天体の赤経・赤緯を求めるのにも使えます。だからぜんぜん役にたたない記事でもないと思います (^^)
私は「我流」でやっていますがこの画像上の位置から赤経・赤緯を求めるというのは天体観測には必須の作業ですからこれについて詳しく説明した本もありますので紹介しておきます。例えば
福島登志夫編「天体の位置と運動」
「天体位置の測定」の「狭角度観測での位置測定」のところ
長谷川一郎「天体軌道論」
「関連係数法」のところ
なお「関連係数法」については以前記事にしましたが後者の「関連係数法」はそれよりずっとレベルの高い(?)手法です。つまり単なる線形補間ではなく画像が天球の写像であることを前提に位置を求める方法です。
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計算に使用したExcelのファイルです。
「Mr.SHIN_20131007.xls」
まず撮影日時やら経度・緯度を設定します。B18~B21はB22の初期値を求めるためのもので適当と言えば適当でいいです。

見てすぐにそれとわかる天体の画像上の位置とその赤経・赤緯を入力します。

数個入力したところで残差の合計(このシートだとE84)を目的セル、カメラの方位・傾きなどを変化させるセルにして目的セルを最小にするようにソルバーを実行します。こうするとカメラの方位・傾きがだいたい求まります。
今回は歪曲収差の多項式の係数は変化させるセルにはしていません。画像の一部のところから集中的にデータを拾っていますので歪曲収差を求めてもろくな事にはならないと思ったからですが、結果を見るともともと非常に歪曲収差が小さいレンズのようです。あるいはカメラでディストーションの補正が行われているのかもしれません。
一回ソルバーを実行しておくと「これはぜったい写っているはず」という恒星などがあったらその赤経・赤緯を入力し「推定位置」のあたりを探すとめざす天体がすぐに見つかるようになります。

もしはっきり写っているがどの恒星なのかよくわからなかったら画像上の位置から赤経・赤緯を推算します。

今回のケースでは(年周視差が小さいためか)けっこう明るいのにヒッパルコス星表にない恒星(GSC1411.814)があり手間取りました。
最後に残差の合計が最小になるようにソルバーを動かした上でいよいよアイソン彗星の赤経・赤緯を入力すると画像上の推定位置がわかります。

今回は恒星の視位置はステラナビゲータのデータを使ったのですがアイソン彗星についてはNASA JPL Horizonsのデータも使ってみます。今回は数ピクセルの差ですが原画像であれば10ピクセル以上の差になると思います。どこからどういうふうにターゲットの視位置を持ってくるか吟味が必要です。
一生懸命「推定位置」を探したのですがアイソン彗星が見つからなかったのは最初に書いたとおりです。もし見つかっていれば今度は使ったつまり予測された赤経・赤緯にどのくらい誤差があるのかがわかります。
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今後の課題
計算に視位置を使っていますがこれはステラナビゲータみたいなソフトや国立天文台の暦象年表から拾ってくる必要がありけっこうめんどうです。星表のデータから直接計算するようにすればいいのですが固有運動やら年周視差やら計算して歳差の影響を考えさらに日周光行差を計算するみたいな手順になりますのでまだ手をつけていません。
今回の方法は赤経・赤緯から方位・高度を求めそれから画像上の位置を求めるとしています。以前記事に書きましたがとうぜん赤経・赤緯から直接画像上の位置を求めることもできます。この場合は大気差の補正がちょっと複雑になります。
南側の空は比較的得意なんですが北側は方向によって見る場所を探す必要がありそれもピンポイントなのでなかなかたいへんです。じつは北極星を見たこともほとんどないです。北極星は見えるほど空の状態がよいことがあんまりないということもありますが....
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さて今回は「人の褌で....」みたいな記事です。
二ヶ月ほど前でしたがSHINさんの記事に
「捉えることができません・・・」
というものがありました。この記事の最初の画像がアイソン彗星のある方向を写したものです。
まだまだアイソン彗星が暗かった頃の写真ですから写ってはいないだろうということだったのですがほんとに写っていないのか探してみました。
結論だけ先に書くと見つかりませんでした。あんまり記事としてはおもしろくないのですが夜なべ仕事の結果を捨てるのも忍びないのでどうやって探したかを記事にします。
それにしても五島の空はきれいです。ISO3200で60秒露出だそうですが、うちじゃ10秒超えたら白飛びしそうです。
SHINさんの写真には星が際限なく写っています。35mmなのにどうやら10等星前後まで写っているみたいです。
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やり方はこれまでの「成果」を使ったものです。カメラの方向や傾きを適当に仮定して天体の赤経・赤緯からそれが画像のどの位置に写るか計算します。とうぜん実際の画像の位置とは異なりますので計算上の位置と実際の画像の位置が最小になるようなカメラの向き・傾きを求めます。
あとはアイソン彗星の赤経・赤緯からその画像上の位置を求めその付近にアイソン彗星が写ってないか目を皿のようにして探します。
もちろん他の彗星や小惑星を探すのにも使えますし、画像上の位置から未知の天体の赤経・赤緯を求めるのにも使えます。だからぜんぜん役にたたない記事でもないと思います (^^)
私は「我流」でやっていますがこの画像上の位置から赤経・赤緯を求めるというのは天体観測には必須の作業ですからこれについて詳しく説明した本もありますので紹介しておきます。例えば
福島登志夫編「天体の位置と運動」
「天体位置の測定」の「狭角度観測での位置測定」のところ
長谷川一郎「天体軌道論」
「関連係数法」のところ
なお「関連係数法」については以前記事にしましたが後者の「関連係数法」はそれよりずっとレベルの高い(?)手法です。つまり単なる線形補間ではなく画像が天球の写像であることを前提に位置を求める方法です。
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計算に使用したExcelのファイルです。
「Mr.SHIN_20131007.xls」
まず撮影日時やら経度・緯度を設定します。B18~B21はB22の初期値を求めるためのもので適当と言えば適当でいいです。

見てすぐにそれとわかる天体の画像上の位置とその赤経・赤緯を入力します。

数個入力したところで残差の合計(このシートだとE84)を目的セル、カメラの方位・傾きなどを変化させるセルにして目的セルを最小にするようにソルバーを実行します。こうするとカメラの方位・傾きがだいたい求まります。
今回は歪曲収差の多項式の係数は変化させるセルにはしていません。画像の一部のところから集中的にデータを拾っていますので歪曲収差を求めてもろくな事にはならないと思ったからですが、結果を見るともともと非常に歪曲収差が小さいレンズのようです。あるいはカメラでディストーションの補正が行われているのかもしれません。
一回ソルバーを実行しておくと「これはぜったい写っているはず」という恒星などがあったらその赤経・赤緯を入力し「推定位置」のあたりを探すとめざす天体がすぐに見つかるようになります。

もしはっきり写っているがどの恒星なのかよくわからなかったら画像上の位置から赤経・赤緯を推算します。

今回のケースでは(年周視差が小さいためか)けっこう明るいのにヒッパルコス星表にない恒星(GSC1411.814)があり手間取りました。
最後に残差の合計が最小になるようにソルバーを動かした上でいよいよアイソン彗星の赤経・赤緯を入力すると画像上の推定位置がわかります。

今回は恒星の視位置はステラナビゲータのデータを使ったのですがアイソン彗星についてはNASA JPL Horizonsのデータも使ってみます。今回は数ピクセルの差ですが原画像であれば10ピクセル以上の差になると思います。どこからどういうふうにターゲットの視位置を持ってくるか吟味が必要です。
一生懸命「推定位置」を探したのですがアイソン彗星が見つからなかったのは最初に書いたとおりです。もし見つかっていれば今度は使ったつまり予測された赤経・赤緯にどのくらい誤差があるのかがわかります。
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今後の課題
計算に視位置を使っていますがこれはステラナビゲータみたいなソフトや国立天文台の暦象年表から拾ってくる必要がありけっこうめんどうです。星表のデータから直接計算するようにすればいいのですが固有運動やら年周視差やら計算して歳差の影響を考えさらに日周光行差を計算するみたいな手順になりますのでまだ手をつけていません。
今回の方法は赤経・赤緯から方位・高度を求めそれから画像上の位置を求めるとしています。以前記事に書きましたがとうぜん赤経・赤緯から直接画像上の位置を求めることもできます。この場合は大気差の補正がちょっと複雑になります。
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