大気差の計算式
今力を入れている掩蔽(星食)の観測に関して言えば大気差はどうでもいいです。恒星は大気差で浮き上がって見えるのですが、月も同じだけ浮き上がって見えているわけで相対位置は変わりません。掩蔽の予測で大気差を考慮する必要がなければ観測結果を補正する必要もありません。
正直なところ大気差が問題になるのは日の出・日の入りと月の出・月の入りくらいではないでしょうか。
太陽黒点の観測では高度の低い太陽は大気差でひしゃげて見えるので黒点の位置を求めるときは大気差の補正が必要になります。もっとも高度が低くなると画質(結像状態)も悪化するわけで黒点の写真を撮るのに何も好き好んで高度の低いときを狙う必要はないでしょう。でも天体観測を仕事にしているわけではないので朝高度の低いときの黒点の写真を撮らざるを得ないこともありそういときは大気差を考慮することになります。
ぜったいに大気差を意識しなければならないケースもあります。カノープスを東京で見ようとすると高度がとても低いため大気差を考えないと見えるはずのカノープスを見えないと判断してしまうことがあります。そのうち記事にしたいと思いますが先月カノープスの写真を撮ったときはビルの屋上すれすれにあり大気差がなければ見えないケースでした。
(その後カノープスの写真を撮ったとき正確に大気差を評価してみました「カノープスの写真に見る大気差の影響」
)
本題に入るわけですが大気差というのは大気の地上高による密度差による光の屈折ですから気象に依存します。丁寧に計算すればいくらでも精度よく求まるというものでもありません。あくまで目安と考えた方がいいです。同じ時刻に同じ観測値から見ても方向によって大気差の値が違うということもあるはずです。
大気差は天体の真の高度__つまり大気がないときに見える高度__をh、見かけの高度haとしたとき
R = ha - h
あるいは真の天頂角をz、みかけの天頂角をzaとしたとき
R = z - za
真の高度から見かけの高度を求めるときは式を変形しなければならないのですがちょっと手ごわいです。
「こよみ用語解説 」に書いてあるようにもっと詳しい説明と計算式が国立天文台編「理科年表」にあります。上に書いたようにそんなに一生懸命計算するほどの必要性はないと思うのと天頂角があまり大きくないときの計算式なのでこれについては省略します。
この式は星表位置から恒星の見かけの位置を求めるときには便利ですが残念ながら天頂角75度までの範囲でしか使えません。
また「天文年鑑」には(天頂角があまり大きくないときの)より簡略化した計算式があります。
けっきょく高度の全範囲を計算式ですませようとすると「こよみ用語解説 」にある計算式を使うということになりそうです。他にも計算式を見つけたらそのときは追記しておきます。
見かけの高度 [deg.] |
国立天文台 暦計算室 こよみ用語解説 計算式 ----- 条件不明 |
『天体の位置計算』 計算式(注) ----- 1気圧、摂氏0度 |
『理科年表』 表(一部) ----- ラドーの算定 1013.25mhPa 摂氏10度 緯度35度 |
『天文年鑑』 表(一部) ----- 条件不明 |
Wikipedia 『大気差』 表 ----- 条件不明 |
90 | 0'00" | 0'00" | |||
60 | 0'35" | 0'35" | 0'33" | 0'34" | 0'30" |
30 | 1'43" | 1'44" | 1'40" | 1'41" | 1'40" |
15 | 3'39" | 3'41" | 3'35" | ||
10 | 5'24" | N/A | 5'17" | 5'19" | 5'00" |
5 | 9'54" | N/A | 9'49" | 9'53" | 9'50" |
4 | 11'46" | N/A | 14'21" | 11'47" | |
3 | 14'22" | N/A | 14'20" | 14'27" | |
2 | 18'15" | N/A | 18'13" | 18'27" | |
1 | 24'23" | N/A | 24'17" | 24'44" | |
0 | 34'33" | N/A | 34'24" | 35'22" | 34'20" |
注 「天体の位置計算」にある式から求めた値を見かけの高度に対する値に変換したものです。
具体的な計算方法は「大気差の実測(太陽編)」の記事にあるExcelのファイルが参考になると思います。
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