太陽の自転軸
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太陽の自転速度を観測から求めようとすると誰でも思いつくのは黒点の移動速度を調べる方法でしょう。黒点は太陽面にはりついているという前提があることになりますが、これはこれであやしい__根拠がない__ようにも思えます。太陽というのは一言で言えばガスでしょうから太陽面に黒点がはりついているというのはヘンな話に思えます。
じつは直接自転速度を測る方法もないことはないです。太陽の回転を考えると左側は地球に向かって運動しており右側は遠ざかるように運動しています。太陽の左側と右側からくる光のドップラー効果の影響の違いを測れば自転速度がわかるはずです。原理的には簡単でもこういうことを調べるには大掛かりな機材が必要ですが、これにしても太陽表面のガスの移動速度を調べているわけでそれが太陽の自転速度と一致するかと聞かれると素直にイエスとは答えられません。
もっと言えば(ガスの塊である)太陽の自転速度を考えるなんてナンセンスとも言えます。
そうは言っても黒点は毎日左から右に少しずつ移動して行きますのでここではこれを太陽の自転を示していると考えることにします。詳しく黒点の移動の様子を調べれば黒点相互の位置関係の変化から太陽面のガスの動きもわかってくるかもしれません。
太陽は真球と考えてよいとされていますから黒点の動きからその移動速度(角速度)を求めるのは比較的容易なはずですが一点問題があります。それは太陽の自転軸はどちらの方向を向いているかです。
もし太陽の自転軸が地球の公転面と直交していれば黒点は直線的に移動していくはずですし、自転軸が地球の方向を向いていれば黒点は円弧を描いて動いていきます。
実際に観測してみると直線に近い楕円弧を描いているように見えます。つまり少しだけ(公転面に対して)傾いているようです。
さてでは自転軸の向きというのはどう定義されるのかというのが問題になります。私は最初これがわからずピントのはずれたことをやっていました。
「国立天文台 - 暦計算室 - 暦象年表 」に「太陽の自転軸 」というのがあるのでこれで調べられそうです。しかしここでわかるのは地球から見た自転軸の向き(P、天文年鑑では「北極方向角」という用語を使っています)、(太陽面の中点の)日面緯度(B0)、(太陽面の中点の)日面経度(L0)の三つです。この三つは確かに自転軸の向きで決まる値なのですが自転軸の向きそのものを表しているわけではありません。
太陽は真球と考えてよいとされていますから黒点の動きからその移動速度(角速度)を求めるのは比較的容易なはずですが一点問題があります。それは太陽の自転軸はどちらの方向を向いているかです。
もし太陽の自転軸が地球の公転面と直交していれば黒点は直線的に移動していくはずですし、自転軸が地球の方向を向いていれば黒点は円弧を描いて動いていきます。
実際に観測してみると直線に近い楕円弧を描いているように見えます。つまり少しだけ(公転面に対して)傾いているようです。
さてでは自転軸の向きというのはどう定義されるのかというのが問題になります。私は最初これがわからずピントのはずれたことをやっていました。
「国立天文台 - 暦計算室 - 暦象年表 」に「太陽の自転軸 」というのがあるのでこれで調べられそうです。しかしここでわかるのは地球から見た自転軸の向き(P、天文年鑑では「北極方向角」という用語を使っています)、(太陽面の中点の)日面緯度(B0)、(太陽面の中点の)日面経度(L0)の三つです。この三つは確かに自転軸の向きで決まる値なのですが自転軸の向きそのものを表しているわけではありません。
じつは自転軸の向きはその言葉のとおり自転軸が向いている方向の天球上の位置で表されます。つまり赤経・赤緯で表されます。これについては「暦計算室 - こよみ用語解説 」にも書かれており
自転軸の方向はおよそ赤経19h5m、赤緯+63.9°です。
となっています。参考までに書いておくとこの位置はりゅう座になります。概略の位置としてはこと座のベガと北極星の中間点くらいと覚えておくといいかもしれません。
例えば最初に例をあげた黒点から太陽の自転速度を求めるようなことはこれらをもとにして考えていくことになります。
自転軸の方向はおよそ赤経19h5m、赤緯+63.9°です。
となっています。参考までに書いておくとこの位置はりゅう座になります。概略の位置としてはこと座のベガと北極星の中間点くらいと覚えておくといいかもしれません。
例えば最初に例をあげた黒点から太陽の自転速度を求めるようなことはこれらをもとにして考えていくことになります。
なお、上の文章では「およそ」となっています。これ以上詳しい値は国立天文台のウェブサイトや理科年表ではわからないようですが「NASA ジェット推進研究所 Horizons 」で知ることができます。ただこのサイトの値は座標系が違う(J2000.0)ので注意が必要です。
「黒点の緯度・経度を求める 」に続く
「黒点の緯度・経度を求める 」に続く
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コメント
この記事へのコメントは終了しました。
太陽自転軸の方向は赤経で19h5mとなっておりますが、これの黄経での方向はどうなりますか。
赤経から黄経への変換式ありましたら教えてください。
投稿: ts | 2014年5月14日 (水) 12時10分
コメントありがとうございます。
赤経・赤緯から黄経・黄緯への変換式は「月の黄経・黄緯を求める(赤経・赤緯を黄経・黄緯に変換する)」など天文計算関係の記事にあるExcelファイルにあるのですが、Excelファイルをダウンロードあるいは利用できない環境でしたらあらためてコメントか記事で計算式を示させていただきます。
方法としては赤経・赤緯から方向余弦を求めこれをx軸(春分点の方向)を軸に黄道傾斜角だけ回転し得られた方向余弦を黄経・黄緯に変換するということになります。
実際に
赤経19h5m(286.25度)、赤緯+63.9度
を2014年1月1日の黄道傾斜角23.44度を使って計算すると
黄経346.1度、黄緯82.7度
になりました。
太陽の自転軸は地球の公転面に対し7度強傾いていることになりますね。
これは“天動説”で太陽の自転軸に対して地球の公転面が7度強傾いているというべきかもしれません (^^;;
投稿: セッピーナ | 2014年5月14日 (水) 12時56分
ちょっと補足させていただきますと、赤経19h5m、赤緯+63.9°というのは“だいたいの値”だと思いますので上の計算も“だいたい”です。
ちゃんと計算するのであればこれがいつの値であるかどういう座標系での値か調べた上で計算する必要があります。
より精度の高い自転軸の方向はNASA JPL's HORIZONS systemにあります。
ただこれにしても度の小数点表示で小数点以下2桁までだったと思います。
投稿: セッピーナ | 2014年5月14日 (水) 13時02分