大気差を実測する(太陽編)
「大気差の計算式 」で大気差のいろんな計算式や資料にある値を紹介しましたが、今回は大気差の影響を実感してみようという記事です。
日の出直後の太陽や日没直前の太陽の写真を見るとひしゃげています。
この画像は日没直前の太陽を撮った写真から太陽の部分を正方形に切り出したものです。左右はぴったりにおさまっているのに上下はけっこう余白があるので上下の方向につぶれていることがわかります。よく見ると下の方が潰れ方がひどいこともわかります。
大気差は「大気差の計算式 」にあるように地平近くになると急激に大きくなります。太陽の半径は約0.25度なので太陽の上辺と下辺は高度が0.5度違います。そのわずか0.5度の差で大気差が違うため浮き上がり方も違ってきてこんなふうに潰れて見えるわけです。
国立天文台・暦象年表の用語解説にある計算式でこのときの大気差の影響__つまりどのくらい太陽がつぶれて見えるか__を計算して写真の太陽のつぶれ方と比較してみました。
暦象年表・こよみ用語解説にある大気差の計算式だと太陽の横幅は縦幅の93.4%になるはずです。一方写真を見ると93.8%になっていますのでまあだいたい計算式通りということでしょうか。
こういう計算をするとき注意しなければいけないことがあります。ふつう大気差の計算式や表は「みかけの高度に対する大気差」が与えられます。計算に必要な大気差は真の高度に対する大気差です。ですから補間などを使って真の高度に対する大気差を求める必要があります。このExcelのシートでは不精してExcelのソルバーを使っています。
それから93.4%と93.8%の違いの原因はいろいろ考えられます。
この写真を撮ったときの気象状況が計算式が前提としているものと違った。
画像から太陽の上辺、下辺の座標を正確に読み取れていない。
カメラが水平に設置されていなかった。
座標を計算するときθ=tan(θ)と考えているため。
さらに厳密な話としては(このレベルでは関係ないとは思いますが)大気差の影響は横幅にも出るはず、ということもあります。
今回は「太陽編」としました。大気差の状況は星野写真の方がよくわかると思うのですが写真から大気差を求めようとするといろんな計算が必要でそれについてまだまったく記事を書いていないので「星野写真編」は今後の課題とさせていただきます。
上記のExcelファイル
ダウンロード Excel_AR01.xls (62.5K)
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