長沢工「天体の位置計算」地人書館
このブログは、何か計算したいものがあったときそれをどうやって計算するかをExcelの具体的な計算例で示すことを目的にしています(「恒星の位置(赤経・赤緯・高度・方位)計算 - ヒッパルコス星表の使い方から大気差の計算式まで 」、「Excelで天文計算・記事目次とリンク集 」)
中には天文計算を系統的に勉強したいという方もいらっしゃると思いますのでそういう方向けにそういう分野の書籍を紹介して行きたいと思います。いわゆる天文書全般ということではなく天文計算つまり位置計算・軌道計算などに限ったものになります。ただ天体力学の本はいくらかとりあげるかもしれません。また天文書ではなくても物理学(力学)や数学(解析学、線形代数、数値計算)なども参考になるようなものがあれば取り上げたいと思っています。
単にこんな本があります、だけではあんまり役にたたないというか書籍の紹介サイトを見れば済む話なので私の視点で感想など付け加えておきます。ただあくまでも私の感想なのでできるだけ自分で手にとって内容を確認されることをお勧めします。
専門家の書評ではなく実際に勉強している初学者の感想ですからかえって役に立つこともあるかなあと思っています。
「天文計算の本」
なお探せば図書館でもけっこういろんな本があります。例えば東京ですと自分の住んでいるところの近くの図書館になくても同じ区内の図書館にあればすぐに取り寄せてもらえますし、東京都内の区立・市町村立の図書館にあるものであれば(ちょっと時間がかかりますが)取り寄せが可能です。
「東京都立図書館統合検索」
自分のお住まいのところの図書館のシステムがどうなっているか調べておくと重宝するかもしれません。
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まずはじめに
長沢工「天体の位置計算」地人書館
です。この本はもう位置計算に関してはバイブル的な本なのでわざわざ取り上げる必要はないと思いますが、もしかしてご存じない方もいらっしゃるかもしれないと思い最初にとりあげました。
「恒星の位置(赤経・赤緯・高度・方位)計算 - ヒッパルコス星表の使い方から大気差の計算式まで 」の表もこの本を参考にして作りました。
内容はとてもわかりやすくしかも網羅的です。半分くらいのページが恒星の位置の計算__つまり星表位置からとうやって見かけの位置を求めるか__とそのための準備に費やされています。ここまで丁寧に説明した本はあんまり見たことがありません。
またこの書籍は球面三角法ではなく行列(マトリックス)演算を主に使っています。どちらがいいということはないのでしょうが行列演算は計算量は多いものの考え方が単純ですしそのための関数がExcelにありますのでExcelで計算を実行するのであれば便利だと思います。とは言っても正弦定理と余弦定理くらいは知っていた方がいいと思いますが (^^;;
この書籍の欠点を無理やりあげるとすれば内容が古いことでしょうか。これは1981年出版のものなので仕方がないのですが、もちろん古いと言っても計算法が古いとかそういうことではなく使われているデータやパラメータが古いというだけです。例えば地球時じゃなくて暦表時だとか東京測地系だとかまた細かい話しになると年周光行差に関して
「通常の星表には、このe項の量を含ませたものを恒星の位置として示すことになっている」
とありますが(J2000.0に基づく)最近の星表ではe項は除いてあるようです。
まあいずれにしてもアマチュア的にはほとんど取るに足らない話ですし、このくらいしか気になるところはないということでもあります。
構成(目次)は次のようになっています。
1. はじめに
2. 天球座標
3. 恒星位置のずれ
「東京都立図書館統合検索」
自分のお住まいのところの図書館のシステムがどうなっているか調べておくと重宝するかもしれません。
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まずはじめに
長沢工「天体の位置計算」地人書館
です。この本はもう位置計算に関してはバイブル的な本なのでわざわざ取り上げる必要はないと思いますが、もしかしてご存じない方もいらっしゃるかもしれないと思い最初にとりあげました。
「恒星の位置(赤経・赤緯・高度・方位)計算 - ヒッパルコス星表の使い方から大気差の計算式まで 」の表もこの本を参考にして作りました。
内容はとてもわかりやすくしかも網羅的です。半分くらいのページが恒星の位置の計算__つまり星表位置からとうやって見かけの位置を求めるか__とそのための準備に費やされています。ここまで丁寧に説明した本はあんまり見たことがありません。
またこの書籍は球面三角法ではなく行列(マトリックス)演算を主に使っています。どちらがいいということはないのでしょうが行列演算は計算量は多いものの考え方が単純ですしそのための関数がExcelにありますのでExcelで計算を実行するのであれば便利だと思います。とは言っても正弦定理と余弦定理くらいは知っていた方がいいと思いますが (^^;;
この書籍の欠点を無理やりあげるとすれば内容が古いことでしょうか。これは1981年出版のものなので仕方がないのですが、もちろん古いと言っても計算法が古いとかそういうことではなく使われているデータやパラメータが古いというだけです。例えば地球時じゃなくて暦表時だとか東京測地系だとかまた細かい話しになると年周光行差に関して
「通常の星表には、このe項の量を含ませたものを恒星の位置として示すことになっている」
とありますが(J2000.0に基づく)最近の星表ではe項は除いてあるようです。
まあいずれにしてもアマチュア的にはほとんど取るに足らない話ですし、このくらいしか気になるところはないということでもあります。
構成(目次)は次のようになっています。
1. はじめに
2. 天球座標
3. 恒星位置のずれ
4. いろいろの時刻系
5. 2体問題による惑星、彗星などの位置の概算
6. 地球上の観測点の位置
7. 2体問題からの発展
8. おわりに
「3. 恒星位置のずれ」で扱われているものには次のようなものがあります。
固有運動、歳差、章動、視差、光行差(年周光行差、日周光行差)、極運動、大気差
(アマチュアの)実用的には十分な内容です。そしてそれぞれに厳密な計算方法とそれを簡略化したものを示してあります。簡略式は制約はあるものの少ない計算量で求めることができるという意味ですからExcelでやるのだったら厳密な計算方法を使った方がいいかもしれません。精度が必要ないとしても一々制約を満たしているかと考えるのは面倒ですし計算はExcelがやるわけでいくら複雑でも計算に手間暇がかかるわけでもありませんから。
それから「7. 2体問題からの発展」には人工衛星の位置の計算法とともに月や惑星の海上保安庁水路部による略算式があります。この計算式は補間式ではなく理論的に(つまり摂動を考慮して)求められたもののようです。ひょっとしたら今でも使えるのかもしれませんがこれについては後身の海上保安庁海洋情報部の計算式というのを記事にしましたので参考にしていただければと思います。例えば月に関しては
「月の赤経・赤緯・地心距離を求める(海洋情報部の計算式) 」
です。
なおこの書籍に限らず例えば方向余弦から赤緯を求めるとき
5. 2体問題による惑星、彗星などの位置の概算
6. 地球上の観測点の位置
7. 2体問題からの発展
8. おわりに
「3. 恒星位置のずれ」で扱われているものには次のようなものがあります。
固有運動、歳差、章動、視差、光行差(年周光行差、日周光行差)、極運動、大気差
(アマチュアの)実用的には十分な内容です。そしてそれぞれに厳密な計算方法とそれを簡略化したものを示してあります。簡略式は制約はあるものの少ない計算量で求めることができるという意味ですからExcelでやるのだったら厳密な計算方法を使った方がいいかもしれません。精度が必要ないとしても一々制約を満たしているかと考えるのは面倒ですし計算はExcelがやるわけでいくら複雑でも計算に手間暇がかかるわけでもありませんから。
それから「7. 2体問題からの発展」には人工衛星の位置の計算法とともに月や惑星の海上保安庁水路部による略算式があります。この計算式は補間式ではなく理論的に(つまり摂動を考慮して)求められたもののようです。ひょっとしたら今でも使えるのかもしれませんがこれについては後身の海上保安庁海洋情報部の計算式というのを記事にしましたので参考にしていただければと思います。例えば月に関しては
「月の赤経・赤緯・地心距離を求める(海洋情報部の計算式) 」
です。
なおこの書籍に限らず例えば方向余弦から赤緯を求めるとき
α=atan(M/L)
としてLの符号から象限を決めるのですがExcelであれば
α=atan2(L,M)
とすれば済む話しなのでご参考まで。
としてLの符号から象限を決めるのですがExcelであれば
α=atan2(L,M)
とすれば済む話しなのでご参考まで。
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