「プラトン」か「プラトー」か? - 月のクレーターのこと
月の地形には名前が付いています。
例えばA.は「雨の海」、その左上(北西)にある“湾”になったようなところB.は「虹の入江」です。
「雨の海」A.の右上(北東)にクレータ C.があります。全部が全部そうなんだか知りませんがクレータには“有名人”の名前が付けられています。例えば「雨の海」の下(南)にある立派なクレータ D.はポーランドの(とわざわざ断るまでもない)天文学者「コペルニクス」の名前で呼ばれます。
C.のクレータもひときわ目立ちますのでそれ相応の“一角の人物”の名前が付けられているはずです。
実際このクレータはギリシャの哲学者「プラトン」の名前を持っています。
「天文年鑑2014」で言うと月面図の第2象限の21番です。
私はこれで“解決済み”なんですが、このクレータのことを「プラトー」と呼ぶ方がけっこういらっしゃいます。
なぜ「プラトン」のことを「プラトー」という方が多いのか?
「天文年鑑2014」を見てみます。「プラトン」の左側にこのクレータの名前を“横文字”で書いてあるのですがその綴りは“Platon”ではなく“Plato”になっているのです。おそらくこれが「プラトー」派が多い理由の一つだと思います。
ところでこの記事を読んで私と逆の意見・感想を持たれる方__つまり「プラトーに決まっているではないか、なぜプラトンと言うのか、天文年鑑はけしからん」と考えられる方__もいらっしゃるような気もします。
このことについては続きの中で書く予定です。結論はまだ出ません。
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図書館の“天文”のコーナーに行ってそれらしい本を片っ端から引っ張り出しC.のクレータのことをどう書いているか調べてみました。
リストは出版年(注1)の順(降順)に並べてあります。
著者・編者・監修者 | 書名 | 出版社 | 出版年 | 表記 | 備考 |
長谷部信行・ 桜井邦明編 |
人類の夢を育む天体「月」 月探査機かぐやの成果に立ちて |
恒星社厚生閣 | 2013 | プラトン(Plato) | |
天文年鑑 2014 | 誠文堂新光社 | 2013 | Plato | プラトン | ||
相馬充監修 | 月のこよみ2013 | 誠文堂新光社 | 2012 | プラトン | |
日本語版監修 渡部潤一 |
ビジュアル宇宙大図鑑 | 日経ナショナルジオグラフィック社 | 2012 | プラトン | |
月の撮り方 研究会 |
月の撮り方 | 誠文堂新光社 | 2011 | プラトン | |
白尾元理 | 月の地形-ウォッチングガイド | 誠文堂新光社 | 2009 | プラトー | 注2 |
川村晶編 | 組立天体望遠鏡15倍 | 星の手帖社 | 2006 | プラトー | |
A. ルークル | 月面ウォッチング―エリア別ガイドマップ | 地人書館 | 2004 | 未確認 | |
藤井旭 | ビジュアル版天体観測図鑑 | 河出書房新社 | 2000 | プラトー | |
えびなみつる | はじめての天体観測 | 誠文堂新光社 | 1999 | プラトー | |
天文年鑑 1995 | 誠文堂新光社 | 1994 | プラトン | 注3 | |
天文年鑑 1994 | 誠文堂新光社 | 1993 | 未確認 | ||
天文年鑑 1990 | 誠文堂新光社 | 1989 | プラトー | ||
天文の事典 | 平凡社 | 1987 | プラトン | ||
天文学辞典 | 地人書館 | 1986 | プラトー | ||
改訂版天文と宇宙の辞典 | 恒星社厚生閣 | 1983 | プラトー | ||
世界科学大事典 | 講談社 | 1979 | プラトー |
注1 初版の出版日にすればよかったのですがそうなっていないものがあるかも。
こんど図書館に行ったら調べてちゃんとします。
注2 サダルテミスさんに教えていただきました。
注3 前書きに次のような記述があります。
今年度版から月面図の配置を変えて使いやすくし、月面地名について一貫した読み方を採用した。読者諸氏からのご批判、ご忠言を期待する。
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続きを書く計画があります。
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コメント
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プラトンさんの記事書かれていたんですね♪
出版年ごとに並んでいるのでみやすく分かりやすいです^^
95年度版の天文年鑑でそういった変更があったんですか!
一貫した読み方というのが、よく知られている人名のカナってことですよね。
そこから共感していったプラトン派の人たちが、じわじわとプラトンを広めてる気がしました(^^;
それから10年ほど経った今、プラトン派の勢力は過半数を超えてきている?んですから、こういったことが広まるのって時間がかかるのですねぇ。。。
続きも楽しみにしてます(o^-^o)
投稿: sadaltemis | 2014年5月20日 (火) 22時44分
サダルテミスさん、コメントありがとうございます。
私も「一貫した読み方」というのはそういう意味だと思うのですが今のところ根拠があるわけではありません。
天文年鑑は古くても禁帯出扱いになっているのがふつうなので近所の図書館にないとなかなか面倒です。取り寄せて閲覧というのもできないことはないのですが図書館の人は私以上に面倒なようで (^^;;
でももう少し調べてみたいと思います。
ネットはみんな自分の好きなように書いています(=私もそうしてます)が書籍の場合は校正が入るので著者が「プラトー」と書いていても「先生、『○○』じゃ『プラトン』ということになってますので直してもいいでしょうか」なんてやっているのではないかと想像しています。
「○○」が何かというのが今の課題です。
これを見る限り1995年頃と2010年頃に何かあったのではないかという気もしています。
投稿: セッピーナ | 2014年5月21日 (水) 15時06分