ICRS(ICRF)からJ2000.0座標への変換
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目的
ICRS/ICRFから視位置への変換を行う
座標系
ICRS/ICRF、J2000.0座標系、平均位置、真位置、視位置(地心)、視位置(測心)
適用期間
特に制限はありません。
計算手法
記事本文参照
精度
度の表示で0.00001度
(0.00001度=度分秒の0.04秒、時分秒の0.002秒)
実際にはそれ以上の精度があると思われますが検証用データがなく未確認です。
備考・使用上の注意
実際の天文計算でのICRS/ICRFからJ2000.0座標系への変換の要否については
記事本文にあります。
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太陽や月のJ2000.0座標から視位置への変換について記事を書きました。
「続・ICRS(J2000.0)から視位置への変換(太陽編)」
「とても恥ずかしい年周光行差と月の視位置の話」
いずれも0.00001度(度分秒の0.04秒、時分秒の0.002秒に相当します)のオーダーで値が一致していませんでした。実用上問題になるような誤差ではないのでそれで終わりにしていたのですがよくよく考えると使った「NASA JPL's HORINZONS system」のデータはICRS/ICRFでの値です。それをJ2000.0座標系のものとして扱っていましたからそれで誤差が発生したのかもしれません。
ということでまずICRS/ICRFからJ2000.0座標系への変換方法を考えてみました。参考にしたのは
「電子航海歴について」 “5.座標系”の項目
とその中で参照されている
「Definition of ICRS axes」
の二つです。
前者にはICRS/ICRFとJ2000.0座標の関係(つまり違い)について
J2000.0平均赤道面の極は、ICRSの極に対して12時の方向へ17.3mas(milli arc second)、18時の方向へ 5.1masずれており、J2000.0平均春分点の方向はICRSの赤経の原点に対して78masずれている。
という記述があります。後半の春分点の赤経の話は問題ないとして前半の方が今ひとつわからないのですが後者の方にある図を眺めるとこういうことのようです。
ICRFの北極の上の方から北極点(?)を見て0時の方向をx軸、6時の方をy軸とするとJ2000.0座標系の北極点(?)はx=-17.3[mas]、y=-5.1[mas]の位置にある。
これをもとに以下のようにして変換したのですが正直あんまり自信がないです (^^;;
上を見ればわかるように軸の傾きより春分点の赤経の差の方が影響が大きそうですから月や太陽の計算で簡単にやるのであれば
ICRFでの位置の赤緯はそのままで赤経を78[mas]引いたものをJ2000.0座標系での赤経・赤緯とする。
ということでもよさそうです。78[mas]というのは0.000022度に相当します。
詳しく書くとこんな感じでしょうか。
計算精度が(度で)小数点以下4桁かそれ以下のとき
==> ICRS/ICRFとJ2000.0座標系は同じものとして扱う。
計算精度が(度で)小数点以下5桁のとき
==> ICRS/ICRFの赤経の値を -0.00002度 したものをJ2000.0座標系での赤経とする。
計算精度が(度で)小数点以下6桁かそれ以上のとき
==> ちゃんと計算する
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ICRFの座標を回転させて極と春分点つまりz軸とx軸がJ2000.0座標系のものと一致するようにすればいいんでしょうがどう回転すべきかがよくわかりません。そこでこうすることにしました。
まず極がx=-17.3[mas]、y=-5.1[mas]ということは
atan2(-17.3, -5.,1)
つまりx軸の方向を0度として196.4度の方向にz軸が傾いているということでしょう。そして傾きの大きさは
sqrt( (-17.3)^2+(-5.1)^2)
で18.0[mas]となるはずです。こういうところはほんとうは球面三角なんでしょうが極周辺の半径0.00001度くらいの範囲のことを考えているわけですから平面と考えてぜんぜん問題ないと思います。
以上からこうやって変換します。
1. x軸がJ2000.0のz軸の傾きの方向を向くようにz軸回りに回転する。
Rz(J2000.0の軸の方向)
2. y軸の回りにJ2000.0の軸の傾きの大きさの分だけ回転する。
Ry(J2000.0の軸の傾き)
3. z軸回りに1.と反対方向に回転する。
ただし回転の角度はJ2000.0のz軸の傾きの方向の分から
J2000.0の春分点の方向の分を引いたものにする。
Rz( - J2000.0の軸の方向 + ICRFでのJ2000.0の春分点の方向 )
章動の計算と同じ計算手法を使っています。これで正しいかどうか判断のしようがありませんが2.の回転は微小なものなのでそんなヘンなことにはならないはずです。
J2000.0の極と春分点のICRFでの座標を入力し結果を確かめます。
極の赤緯は90度ぴったり、春分点の赤経は360度ぴったり(つまり0度ぴったり)になっています。
次はJ2000.0の座標をICRS/ICRFに変換する方法を考えます。
また実際にICRS/ICRFからJ2000.0座標系への変換を太陽や月の視位置計算に応用して誤差がなくなる(小さくなるか)か確かめてみることにします。
上記計算のExcelファイルは太陽の視位置計算
「続々・ICRS/ICRFから視位置への変換(太陽編)」
からダウンロードできるようにしました。
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