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2014年5月 9日 (金)

天文計算のための天文用語集 - 1

関連記事の目次は「Excelで天文計算・記事目次とリンク集 」にあります。

天文計算サイトの精度比較 - 月の視位置(赤経・赤緯・黄経・黄緯・位相角・輝面比)」を書いたときいろんな方の天文計算のサイトなりブログを見たりアプリを動かしたりしていて思ったのは人によって用語の使い方が違うのではないかということでした。

そもそも別のものを計算しているのに結果を比較してもあんまり意味がないわけで、こういうブログをやる以上“用語”つまり何を計算しているかを明確にすべきと思いました。
また天文計算を行う上でいちばん問題になるのは計算しようとしている量が何に依存するかなのでその意味でも重要だと思います。

ということでこのブログで使っている用語の意味をぼちぼちまとめていきたいと思っています。
今太陽の視位置の計算に熱中(?)していますのでまずそのあたりから行きます。

--------

国際天文準拠系=ICRS(赤経・赤緯)

J2000.0と表記されるものNASA JPL's HORIZONS systemで“Astrometric RA & DEC”と表記されているものがこれだと思います。
恒星であれば星表位置固有運動を適用したあとの座標になります。
Astrometric RA & DEC”がそうですが光差は補正されたものを使うようです。つまり太陽の場合だと地球が太陽から1天文単位の位置にあるとすれば499.00秒前の太陽の幾何学的位置ということになります。
このブログでは
  R.A.(J2000.0)[deg.]とか赤経(J2000.0)[hms]
  Dec..(J2000.0)[deg.]とか赤緯(J2000.0)[dms]
のような項目名にしています。

補足1

上ではICRS(国際天文準拠系)と書いたのですが、“座標系”という意味であればICRF(国際天球基準座標系)というべきかもしれません。

補足2

「天体の位置と運動」に「J2000.0において、これまでの理論による赤道座標系と観測誤差の範囲で合致する」と書いてあったので上ではJ2000.0とICRS(ICRF)と同じものであるような書き方をしてしまったのですが、このICRFというのは“J2000.0座標系”(J2000.0における平均春分点と平均赤道に基づく座標系)とは厳密には一致しないそうです。
このあたりの事情については

  「電子航海歴について」  “5.座標系”の項目

にあり参照すべき資料も示してあります。

補足3

国立天文台がICRFを採用していることは

  「国立天文台 - 暦計算室 - トピックス - 暦の改訂について

に明記してあります。一方国立天文台は座標系について次のような表現も使っています。

種類内容
J2000.0 (2000年分点) 座標系 J2000.0における平均赤道 (黄道) と平均春分点を基準とした座標系
瞬時の平均座標系 その時刻における平均赤道 (黄道) と平均春分点を基準とした座標系
瞬時の真座標系 その時刻における真赤道と真春分点を基準とした座標系

  「国立天文台 - 暦計算室 - 暦Wiki - 歳差・章動と座標系」より


J2000.0座標系

上の国立天文台の資料にあるようにJ2000.0における平均赤道と平均春分点を基準にした座標系です。
この座標系はICRS/ICRSとほとんど異ならないのですが度で小数点以下5桁くらいの計算をすると差が出てきます。
  「電子航海歴について」  “5.座標系”の項目
に具体的な説明があります。
またICRS/ITRFとJ2000.0座標系の変換については(ちょっと自信がないのですが)作ってみました。説明は
  「J2000.0座標系からICRS(ICRF)に変換する
  「ICRS(ICRF)からJ2000.0座標への変換
にあります。

平均位置(赤経・赤緯)

上のAstrometric RA & DECJ2000.0座標系歳差を適用したものです。
つまり「計算の対象とする時刻における平均春分点、平均赤道に基づく赤道座標系」での(光差は補正した)幾何学的位置を示しています。
上の国立天文台の用語を使うと「瞬時の平均座標系」での位置です。

真位置(赤経・赤緯)

上の平均位置に章動を適用したものです。
つまり「計算の対象とする時刻における真春分点、真赤道」に基づく赤道座標系」での(光差は補正した)幾何学的位置を示しています。
上の国立天文台の用語でいうと「瞬時の真座標系」における位置です。

視位置(赤経・赤緯)

NASA JPL's HORIZONS system
で“Apparent RA & DEC”と表記されているものです。
これは真位置に年周視差(恒星の場合)、光行差重力場の影響を適用したものになります。
国立天文台・暦象年表の場合は“光行差を含みます”とありますが重力場の影響を含んでいるかどうかは触れられていません。内惑星の外合時前後の位置を調べて比較してみるとわかると思います。
なお私のブログでは(今のところ?)重力場の影響は無視しています。無視しているというより考慮するスキルがないという方が正しいんですが (^^;;

視位置は地心から見た天体の幾何学的な位置を示すものではなく“見かけ”の位置であることに注意が必要です。

せっかくですので太陽の場合どうなるか具体的に書いておきます。
太陽位置の計算プログラムを作る方の簡単な検証用データくらいにはなるかも....

2014年1月1日 09時中央標準時

赤経[deg.] 赤経[hms] 赤緯[deg.] 赤緯[dms] 備考
ICRS/ICRF 281.18947 18h44m45.47s -23.03874 -23d02m19.5s NASA JPL's HORIZONS system
J2000.0 281.18945 18h44m45.47s -23.03874 -23d02m19.5s 計算値
平均位置 281.40132 18h45m36.32s -23.02347 -23d01m24.5s 計算値
真位置 281.40425 18h45m37.03s -23.02099 -23d01m15.6s 計算値
視位置 281.39799 18h45m35.52s -23.02145 -23d01m17.2s 国立天文台 暦計算室・暦象年表

なお計算値というのは私が計算した値という意味です (^^)
だから最後の桁は1か2くらいは違っているかもしれません。
  <=== 赤経が0.00002度ほど大きくなっていました。 <== 正しい値に修正済みです。
      ICRFの座標をJ2000.0座標系での座標として取り扱っていたためです。
暦象年表の数値は比較しやすいように精度を一桁落としてあります。
度分秒、時分秒は最後の一桁は省略しました。
視位置はこの表にある精度であればNASA JPL's HORIZONS systemのApparent RA & DECとも一致します。

関連
  「J2000.0から視位置への変換(太陽編)
  「続・J2000.0から視位置への変換(太陽編)

(続く)

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