とても恥ずかしい年周光行差と月の視位置の話
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本記事についての補足
視赤経に0.00002度程度の差があることからこれはNASAのICRFによる座標をJ2000.0座標系での値として計算したことによる誤差ではないかと思われます。
現在NASA JPL's HORINZONS system(ICRF)の座標をJ2000.0座標系に変換してから計算する方法を試行中です。
結果が出ましたら新たに記事にさせていただきます。
(2014.05.16 11:05)
ICRS/ICRFからJ2000.0への変換処理を追加したものを新たに記事にしました。
「ICRS/ICRFからJ2000.0座標系への変換(月編)」
(2014.05.18 14:00)
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今回のタイトルは正確には
「NASA JPL's HORINZONS systemの月の"J2000.0"の座標を"a-appaent"の座標に変換する」
です。
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それから検索ワードを見ていたら「年周光行差 測り方」というのがありました。
そういうテーマでしたら「FNの高校物理」にある
「ブラッドリーが光行差を見付けた方法(1727年)」
がとても参考になると思います。
(2014.05.14 22:07)
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実はつい最近まで年周光行差というのは天体と地球の相対速度で決まるものだと思いこんでいました。まあ計算式は長沢工「天体の位置計算」にあるものを使っているわけで私がどう思おうと計算式が変わるわけではないので計算結果に問題ないわけですが... (^^;;
だから太陽の視位置を計算するときは年周光行差が大きな影響を与えるとしても月の視位置の計算のときの影響はあんまり大きくはないと思っていました。
でもよくよく考えると年周光行差というのは光がどちらの方向から来るかということと観測点(地球)の動いている速度・方向だけで決まりそうです。太陽系の中での地球の運動は太陽から来る光に対しても月から来る光に対しても同じように影響するはずです。
そこでNASA JPL's HORINZONS systemの月の"J2000.0"の座標からまず真位置(歳差と章動を適用したもの)を計算しじっさいの視位置と比較してみます。
NASA JPL's HORINZONS systemと国立天文台・暦象年表の値に差があること、海上保安庁・海洋情報部の計算式が健闘していることは太陽の場合と同じです。
そして真位置と視位置の差でですが1月1日の値を見ると太陽の場合と同じく0.006度程度の差があります。また1月15日の場合は差の絶対値は同じくらいですが符号が逆です。1月8日、21日は比較的差が小さくなっています。
この差の原因が年周光行差と考えると1月1日は新月に近いので月の光は太陽と同じ方向からくるので太陽と同じような差が発生し、15日は満月に近いので月の光は(地球の運動を基準に考えると)反対方向から来るので符号が逆になります。8日、22日は地球の運動と月の光が来る方向が平行になるのであんまり差が発生しないことになります。
つまり誤差の原因を定性的に説明することができます。
ということで太陽と同じように年周光行差を計算し真位置から視位置を求めてみます。
誤差は0.00001度のオーダーになりこれで計算は正しそうです。
なお年周光行差の計算には太陽の位置に関するデータが必要ですが、今回は太陽の位置は海上保安庁・海洋情報部の計算式から求めたものを使っています。
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