黒点の緯度・経度を求める - 実践編(1)
「Excelで天文計算・記事目次とリンク集 」
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長らく放置してしまいましたが
「太陽の自転軸 」
「黒点の緯度・経度を求める - 北極方向角・日面緯度・日面経度 」
の続きの話です。
黒点が太陽面を移動しているのを見るとそのことから太陽の自転速度を求められないかと考えるのですがじつはこれはけっこうむずかしいです。
太陽の自転軸の向きがはっきりわかっていればあんまり難しくありませんが、太陽の自転軸の向きは太陽の自転を観測した結果わかるわけですから「太陽の自転軸の向きが既知として黒点の動きから自転速度を求める」というのは数学的な課題としてはともかく現実的にはあんまり意味がないような気がします。
そこで今回は最初のステップとして太陽の自転軸の向きも自転速度も既知であるとし、黒点の緯度、経度を求めることにします。つまり黒点が太陽面でどういう動きをしているかを調べようというわけです。
太陽の自転軸の向きがわかっているときの黒点の緯度・経度の求め方はすでに上にリンクした記事に書きましたのでじっさいに太陽・黒点を撮影した画像をもとに計算してみます。
手順はこうでした。
・写真からOを原点とした座標(y,z)を読み取ります。
・太陽の半径を1とするとx=sqrt(1-y^2-z^2)になります。
・太陽の北極が天の北極を向くように座標をx軸の周りに北極方向角Pだけ回転します。
・赤道が太陽の中心にくるように日面緯度の分だけ前後に(y軸の周りに)回転します。
こうすると太陽面の経度L0度、緯度0度のところが中心になります。
画像から読み取った黒点の座標(x,y,z)を上記のように回転して得られた黒点の座標を(x',y',z')とすると黒点の緯度・経度は次の式によって求めることができます。
緯度 = asin(z')
経度 = atan2(x',y')+L0
ここで一点問題があります。上の考え方では天の北極が上になるように画像を撮影する、あるいは画像を撮影するとき北極の向きがわかっていることを前提にしていますがじっさいになかなかそうはできないと思います。
そこでカメラを固定したまま太陽が左、中央、右になるように3枚の写真を撮影します。黒点の緯度経度は中央にした画像から求めるのですが、左右の太陽の位置を比較して北極の方向を求めます。
IMGP7318.jpg 2013/11/18 10h55m24s
IMGP7320.jpg 2013/11/18 10h57m58s
IMGP7322.jpg 2013/11/18 10h59m58s
はっきりと画像上の位置を特定しやすい黒点(最初の画像でマークしてあるもの)を選び最初の写真と最後の写真の座標を求めます。この2点を結ぶ直線と直交する向きが(だいたい)天の北極の向きになるはずです。
次に黒点の座標を求めるためには太陽の中心の座標と半径が必要です。
太陽の中心の求め方はいろいろ考えられます。ここでは(あまり適切な方法とは思えないのですが)周上の三点の座標を読み取りその三点を通る円の中心座標を計算するという方法にします。読み取った座標を円の方程式に代入し相互に引き算をすると二元連立一次方程式になりますのでこれを解きます。
以上で準備は整いましたので、今度は黒点の座標から緯度・経度を求めます。
上記のExcelファイルは次の記事にリンクを貼ります。
(「太陽黒点の緯度・経度を求める - 実践編 (2)」に続く)
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