写真から未知の天体の赤経・赤緯を求める (1)
この記事に書いた手法を使った例が
「バーナード星は動いているか? (2)」
にあります。
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これまで
「デジカメで三角測量 (1)」
で始まる記事を書いてきましたがこれは今から書く記事の準備でした。
「写真から未知の天体の赤経・赤緯を求める」というのもこれまでの話と似ています。
もしカメラの向いている方位や仰角や傾きがわかっていればそれを使って画像上の未知の天体の座標を求めることができます。ただ現実にはカメラがどういう状態で設置されているかを知ることはアマチュアの機材ではムリでしょう。水準器を使ったらカメラを正確に水平に設置できるというようなものでもありません。
そこで「デジカメで三角測量 (1)」のシリーズと同様に
1. 既知の天体の座標の画像上の位置を調べカメラの設置条件を求める。
2. カメラの設置条件を使って画像上の未知の天体の座標を決定する。
という手順を踏むことになります。
この方法は「関連係数法(1) 」に書いた方法に似ています。しかしそれより正確な方法になります。
今回は上の1.の方の話です。
なお前提として画像から恒星の座標を読み取るとか写っている恒星の星表番号を調べるというのが必要ですが、それにはこんなアプリがあります。
「「写真から星の座標を得る」アプリ」
「「写真から撮影方向を分析する」アプリ」
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天体の座標と言った場合赤経・赤緯で表す方法と方位角・高度で表す方法がありますが、ここでは赤経・赤緯で表す方法で行きます。こちらの方法の方が方位角・高度で表す方法よりずっと簡単に見えますが大気差の影響まで考えるとけっこう面倒です。ここでは大気差の影響が少ない比較的高度が高い場合を例にとって話を進めます。
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「デジカメで三角測量 (1)」とは違って座標系は赤道座標系にします。
そうすると方位角は赤経、仰角は赤緯ということになります。カメラの傾きは等赤緯線に対する傾きということになりますので真北や真南ならカメラを水平にしていれば赤道座標系でもカメラを水平に設置したことになりますが東や西ならカメラをけっこう傾けていることになりますので注意が必要です。
作業はこういう手順になります。
A. 画像上の天体(恒星)を特定し画像上の位置を測定するとともにその天体の視位置を調べます。
B. カメラの向いている方向の赤経・赤緯と傾きを仮定し天体の視位置から画像上の位置を計算します。
C. 計算で求めた画像上の位置と実際の画像上の位置が一致するようにカメラの設置条件を変化させます。
ここでB.の操作は「デジカメで三角測量 (1)」とまったく同じです。方位角を赤経、仰角を赤緯、傾きを等赤緯線に対する傾きに読み替えるだけです。そしてC.の操作も同じくExcelのソルバーを使います。
ただ計算は直交座標で行いますので赤経・赤緯を直交座標に変換する必要があります。直交座標と言っても問題になるのは向きだけですから方向余弦=天体はすべて半径1の天球上にあるものとする=を使います。
赤経・赤緯を方向余弦に変換することについては
「極座標(赤経・赤緯)と直交座標(方向余弦)の変換 (1) 」
に書いたとおりです。
実際にこの写真でやってみました。
ヘラクレス座全体が写っています。左下に写っている明るい恒星はベガです。恒星の視位置は「国立天文台 - 暦計算室 - 暦象年表 - 恒星の視位置」で調べます。
上に書いたことを画像上の12個の恒星についてやっています。
残差の合計が13.9になっていますが、これは一つ一つの恒星の残差が1前後であることを意味しています。左下のベガあたりになると星像が膨らんでしまってどこを恒星の位置としたらいいかわからないような状態ですから残差が平均1というのはもうぴったりあっていると言っていい数値です。
ところで今回はカメラの設定の“収差の補正”は“ON“にして写したものです。計算は収差があるものとして収差の係数も“変化させるセル”に含めてやってみましたが収差の係数は非常に小さくなっています。じつは収差の係数を0に固定してやってもたいして結果はかわりません。そういう意味ではカメラの“収差の補正”はとても効果的に働いているようです。カメラの“収差の補正”がないと明らかに樽型の収差が出ていましたが“収差の補正”があるとわずかに糸巻型の収差がある程度に見えます。
ただこれは純正のレンズだからちゃんと補正されているわけでそうでないときは面倒でもちゃんと歪曲収差の補正をやった方がいいと思います。
次は未知の天体の画像上の位置から赤経・赤緯を求めることになります。
Excelのファイルはここにあります。
「ダウンロード Excel_SRV_12.xls (51.5K)」
(「写真から未知の天体の赤経・赤緯を求める (2)」に続く)
なお「写真から恒星(名)を特定したい」ということであれば「デジカメ PENTAX Q7 のセンサーサイズを実測してみた」のなかで紹介している方法が現実的です。
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