はくちょう座デネブ (9) - アラビア語の星
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「はくちょう座デネブ (8) - アラビア語の星」
に書いた内容を考えに入れて دجاجة (dajaaja(tun))を「アラビア語検索エンジン アラジン Ver.1」で調べてみます。
【個】
1 雌鶏
2 鶏
よくみかける“雌鳥”という訳語は確かにあるのですが、それだけではなく“鶏”という訳語もあります。“【個】”となっているところを見るとどうやら(男性/雄であることを示す男性名詞にター・マルブータ ة がついて女性/雌であることを示す女性名詞となったものではなく)前記事に書いた、“集合名詞”にター・マルブータ ة がついて“個別名詞”となったもののようです。
そこで今度は دجاج (dajaaj(un))を調べてみます。
【集】
1 鶏
2 家禽
確かに集合名詞です。
دجاجة (dajaaja(tun))の訳語には“雌鳥”ともありますが、 دجاجة (dajaaja(tun))は本来は“一羽の鶏”を示す言葉のようです。
これは感覚的に言うと日本語(漢語)の“兄弟”に(逆の意味で)似ているかもしれません。字面は男を意味していますし、実際そういう意味で使われることがあります。でも
御兄弟はいらっしゃるんですか?
はい、姉がいます。
という会話を聞いてヘンだと思う方もあんまりいらっしゃらないと思います。
雌鳥を見てدجاجة (dajaaja(tun))というのはぜんぜん問題ないのでしょうが、 دجاجة (dajaaja(tun))と言ったらそれは必ず雌鳥を指す、と考えてしまうのは言葉の意味を限定しすぎているように思います。
以上のようなことを考えると ذنب الدجاجة ( dhanabu-ddajaaja(ti) ザナブ(・ア)ッダジャージャ(ティ))は「雌鳥の尾」ではなく
「ニワトリの尾」
と訳すのが無難なような気がします。
ただこれは単にアラビア語の ذنب الدجاجة がどういう意味なのか考えての結果です。もし番のニワトリがいて雌鳥だけが天に昇ったという伝説・神話があるとか、 الدجاجة ( addajaaja(tu)) アッダジャージャ(トゥ) = はくちょう座に相当します)の真下に“卵”という星座あるいは恒星があるということであれば話は変わってくるでしょう。
参考
「アラビア語検索エンジン アラジン Ver.1」の“بيضة”の項の用例に“ دجاجة ”を使った次のようなことわざがあります。
بَيْضَةُ اليَوْمِ خَيْرٌ من دَجَاجَةِ الغَدِ
今日の卵の方が明日の鶏より良い
دَجَاجَةِ ” - dajaaja(ti) - “鶏”も“بَيْضَةُ” - baiDa(tu) - “卵”も
集合名詞(男性名詞)から派生した個別名詞(女性名詞)が使われています。
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自分に都合のいいものだけ材料にするものはなんなのでそうでないものも紹介しておきます。
おんどり ديك
めんどり دجاجة
在京サウジアラビア王国大使館文化部「分野別単語集 - 日本語-アラビア語」
(この単語集には“にわとり”というのはありませんでした)
(完)
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「「アラビア語の星」記事目次」
ザナブとかダナブとかアルダジャージャとかアッダジャージャとかアルザナブとか...
カオスと化している(?)はくちょう座α星デネブのアラビア語名の読み方ついて。
「はくちょう座 - デネブ (1)」
「はくちょう座 - デネブ (2)」
「はくちょう座デネブ (3) - アラビア語の星」
「はくちょう座デネブ (4) - アラビア語の星」
「はくちょう座デネブ (5) - アラビア語の星」
「はくちょう座デネブ (6) - アラビア語の星」
デネブのアラビア語名の意味について考えます。
「はくちょう座デネブ (7) - アラビア語の星」
「はくちょう座デネブ (8) - アラビア語の星」
「はくちょう座デネブ (9) - アラビア語の星」
低レベルなアラビア語の話
「アラビア語の子音の分類」
「ひらがなとアラビア文字とどっちがむずかしい?」
「アラビア語の太陽文字と月文字 - サタナラ行の法則」
「アラビア語の定冠詞の読み方のもう一つの規則」
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コメント
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この雌鶏なのかニワトリなのかは、アレンのStar Names — Their Lore and Meaningのはくちょう座の記述にヒントがあるように思います。
“particularly a Hen”が影響しているような。。。
このダジャージャはアラビアの伝説や伝承の鳥ではなく、たぶんギリシャの星座の翻訳なんでしょう。
プトレマイオスのギリシャ語の原本のアルマゲストに何と書いてあったかがカギだと思います。
アラビア語の語学的に見るとデネブは「ニワトリの尾」というのが無難だったんですね^^
大変興味深かったです。
投稿: sadaltemis | 2014年6月21日 (土) 14時25分
サダルテミスさん
「Star Names — Their Lore and Meaning」はけっきょくここかと思わせられることが多いのでけっこう影響力のある本なんですね。
今回はというか「アラビア語の星」ではあんまり他の資料に頼らずにアラビア語としてどういう意味かを追求するというスタンスですが、最終的に意味を確定するところではそうも言ってられませんね。
「アルマゲスト」は私の手に余るのでぜひよろしくお願いします。記事を期待しています m(._.)m
投稿: セッピーナ | 2014年6月22日 (日) 13時33分