アラビア語の定冠詞の読み方のもう一つの規則
太陽文字が、月文字が、という話は
「アラビア語の太陽文字と月文字 - サタナラ行の法則」
に書きましたので、もう一つの規則のことを書きます。
「はくちょう座デネブ (4) - アラビア語の星」
に書いた
定冠詞が発声の単位の先頭になく....
というところの説明です。
まず教科書になんと書いてあるかを示します。
الのاは前述のハムザトルワスルですから、文頭にきた場合のみ発音され、それ以外の場合にはその発音は省略されます
(新妻仁一「アラビア語文法ハンドブック」 白水社)
「ハムザトルワスル」というのが何なのか問題なのでもう少し詳しく説明してあるところを引用します。
ءはاとともに用いられる場合、أやإのように書かれます。しかし、一部のاにおいては表記されません。代表的なものは、اِسْم「名前」、.....、اَلْ(定冠詞)、....などの省略されたءです。表記上省略されたءはこれらの語が文頭に用いられたときにのみ発音されます。そして発音されない場合はاの上にワスラ記号をاؐ のように書きます。このように表記されず、また場合によっては発音されずに省略されてしまうءを「ハムザトルワスル」と呼びます。........
(新妻仁一「アラビア語文法ハンドブック」 白水社)
このあとにも大事なことが書いてあるので興味がある方はちゃんと買って読んでください (^^)
さて上の説明は要するに、定冠詞“アル”の“ア”は文頭にあるときしか発音されない、ということを言っています。
上の文章にءというのがたくさん出てきます。これは“ハムザ”といって子音の一種でしょうか。定冠詞は“アル”と読むので“母音+子音”のように見えますがじつは“子音+母音+子音”であるわけです。ハムザは教科書には“声門閉鎖音”と書かれています。私はちゃんと発音できてないと思うのでどういう音かはアラビア語に詳しい方に聞いてください (^^;;
なお上の文章には“文頭にあるとき”と書いてありますが、私は“発声の単位の先頭にあるとき”と書きました。発音されるかされないかは文章のどこにあるかではなく一息で話されるかどうかで決まると思ったからです。
説明をいくら書いてもキリがないので実例を示します。
定冠詞“アル”の“ア”を発音する場合は(1)、発音しない場合は(2)としてあります。
アラビア語の万能の挨拶とその答礼
السلام عليكم アッサラームアライクム (1)
وعليكم السلام ワアライクムッサラーム (2)
「おはようございます」とその答礼
صباح الخير サバーフルハイル (2)
صباح النور サバーフンヌール (2)
「おかげさまで」とか「ごちそうさま」とか
الحمد لله アルハムドゥリッラー (1)
お天気の話し
كيف الجو اليوم؟ カイファルジャウウルヤウム? (2)と(2)
الجو اليوم جميل جدا アルジャウウルヤウマジャミールンジッダン (1)と(2)
自己紹介とその答礼(定冠詞じゃないんですが“ハムザトルワスル”の例として)
اسمي حسن. ما اسمك؟ イスミーハサン。 マスムカ? (1)と(2)
انا اسمي موموتارو アナスミーモモタロー (2)
---------
余談 1
ワスラはどうやってキーボードで入力するんだ?、というのをネットでよく見かけます。どうしてそれを知っているかというと私もそれで悩んでググったからです (^^;;
これはコード表から拾って入力しています。それしか方法はないような.....
「東京外国語大学アラビア語専攻 - Windowsでアラビア語~特殊な文字や記号の入力」
余談 2
上の自己紹介の答礼、“アナスミーモモタロー”つまり「私は桃太郎です」なんですが、アラビア語を勉強し始めたばっかりの私はこういうことになります。
「アナ...(あれ?なんだっけ?あっ、そうだ!)....イスミーモモタロー」 (1)
いったん途切れているわけですからこれはこれで正解(?)だと思います。
余談 3
アラビア語には"a","i","u"しかなくしかもふつう母音記号は使わないので桃太郎は上のように“ムームータールー”と表記することになります。
でも自己紹介するときは“イスミーモモタロー”でぜんぜん問題ないです。次に会ったときは(ちゃんと名前を覚えてくれていれば)“ヤーモモタロー”と言ってくれます。
余談 4
من اليابان は「ミナルヤーバーン」と読みます。一見定冠詞“アル”の“ア”が発音されているように見えますが、これもやっぱり定冠詞“アル”の“ア”が発音されなくなるのは同じです。
ただその結果子音が三つ連続することになるのでそれを避けるため補助母音“a”が挿入されて「ミナル」となっているだけです。
定冠詞“アル”は子音(ء)で始まっているわけですから“ミン・アル”が縮まって“ミナル”とはならないと思います。
余談 5
文頭にない(発声の単位の先頭にない)ハムザトルワスルは発音されない、という規則には余談4に書いたような副次的な規則があるのですが、これにはもうひとつ、前にある単語が長母音で終わっているときは短母音になる、というのがあります。
(定冠詞ではありませんが)上のما اسمك“ マー”+“イスムカ”が“マスムカ”となるのがそれです。
定冠詞だとهذا الكتاب“ハーザー”+“アルキターブ”が“ハーザルキターブ”というようなのがあります。ただ恒星名にこういうのがあるかどうかは確かめていません。
---------
低レベルなアラビア語の話
「アラビア語の子音の分類」
「ひらがなとアラビア文字とどっちがむずかしい?」
「アラビア語の太陽文字と月文字 - サタナラ行の法則」
「アラビア語の定冠詞の読み方のもう一つの規則」 (この記事)
「ダンマのタンウィーンの書き方はなんでもあり !?」
「アラビア語の発音規則(「アラビア語の星」用)」
--------
アラビア語の星関連記事の一覧
「「アラビア語の星」記事目次」
« はくちょう座デネブ (6) - アラビア語の星 | トップページ | 星食マスターへの遥かな道 - 1 »
「低レベルなアラビア語の話」カテゴリの記事
- リブロに売っている、ジュンク堂で買った - アラビア語は難しいけれど、日本語もむずかしいのかも(2015.04.22)
- アラビア語の発音規則(「アラビア語の星」用)(2014.10.19)
- ダンマのタンウィーンの書き方はなんでもあり !?(2014.07.20)
- アラビア語の定冠詞の読み方のもう一つの規則(2014.06.12)
- アラビア語の太陽文字と月文字 - サタナラ行の法則(2014.06.06)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント