星食マスターへの遥かな道 - 1
ここのところよくわかってもないアラビア語の記事を書き続けていたので久しぶりに“本業”に戻ります。
(自分で見たわけじゃないんですが)昨年のスピカ食で星食(掩蔽)に興味をもち観測を始めました(この経緯についてはまた記事にしたいと思います)
去年はまあ準備期間で、どういう機材でカメラをどういう設定にしたら観測(撮影)できるのか、とか、GPS受信モジュールからどうやって正確な秒信号を取り出すのか、というようなことをやっていました。
今年になってそういうのが解決したので星食の観測を始めJCLOに観測結果を報告し始めました。数えてみたらこれまで8個の恒星について9個の観測を行っていました。
恒星数より観測数が多いのは一つが重星だったからです。この重星は離角が0.9秒角とされており眼視・撮影だったらそうとうに口径が大きくなければ重星と認識できないわけでしょうが星食観測であれば私の塩ビパイプ80mm屈折望遠鏡でも重星であることがはっきりわかります。こういうたいした機材を持っていなくても天文台級の観測ができることが星食観測の魅力でしょうか。
さて観測結果をJCLOに送ると仮整約結果が送られてきます。私のこれまでの観測についてはこういう結果になっています。
Star No. | y m d | Ph | Db | O-C |
R 450 | 2014 1 10 | DD | -0.03 | |
R 730 | 2014 1 12 | DD | 0.07 | |
R 1106 | 2014 4 7 | DD | 0.04 | |
R 1332 | 2014 4 9 | DD | 0.14 | |
S 96371 | 2014 5 4 | DD | 0.19 | |
R 1397 | 2014 5 7 | DD | W | 0.32 |
R 1397 | 2014 5 7 | DD | E | -0.47 |
R 2826 | 2014 5 18 | RD | -0.04 | |
R 2969 | 2014 5 19 | RD | 0.12 |
いちばん右側にある“O-C”というのは“観測結果” と “理論的な計算結果”の差を示しています。
“理論的な計算結果”というのこういうのもとに計算を行っているようです。
NASAの軌道計算による月の座標
ヒッパルコス衛星が測定した恒星の座標
かぐやが測定した月面標高に基づく月縁データ
いずれも現在の最高峰の科学的成果に基づくものです。だったらそれと比べて観測データが違っていたら観測データが間違っているようにも思えるのですがじつはそうと決めつけることはできません。
観測データはデジカメの動画で撮影したものを分析するのですが、そのときの時刻標準として誤差0.000001秒以下とされるGPS受信モジュールの1PPS出力を使用します。と言っても動画ですから一コマ撮影するときの露出時間は1/30秒です。けっきょく時刻の精度は±0.04秒くらいになってしまいます(条件がよければもっと精度は上がるのですが、そういう観測ができたことはまだありません)
ただ時刻の精度が±0.04秒というのは(星食の状況によって違うので必ずそうだとは言えないのですが)だいたい±0.02秒角くらいに相当します。つまり“O-C”の絶対値が0.02以下であればそれは単なる観測の誤差ということになります。
ところが上の表を見ると“O-C”が0.02以下のものは一つはありません。つまり上の観測データの分析は次のいずれかであることを意味しています。
NASAの月の軌道計算が間違っている。
ヒッパルコス衛星の恒星位置測定が正しくない。
かぐやの月の標高測定に誤りがある。
そして
私の観測に何か問題がある。
(「掩蔽(星食)観測の残差“O-C”について」に続く)
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