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2014年7月12日 (土)

**重要** 星食観測用1PPS発光器取扱説明書 - 4

「星食観測用1PPS発光器取扱説明書 - 3」としてLED(発光器)の設置方法について書く予定なのですがより重要な撮影した動画の分析方法について先に書くことにします。
この記事(と次の記事)の内容を読んでいただければLEDをどう設置すればいいかが自然とわかってくるということもあります。

  具体的な計算方法をExcelのシートにしてあります(2014.07.14)
     「ダウンロード Camera_00.xls (49.0K)

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星食(掩蔽)を記録した動画から潜入/出現の時刻を求めるためにはカメラのセンサー走査時間と撮影時の露出時間を知っておくこと必要です。このことについてはこれまで何度か記事に書いてきたのですが一般性と厳密さを求めるあまりわかりにくく書いてしまいました。今回はできるかぎり理屈抜きでシンプルなやり方を説明します。

この記事を読んで、なんだか二度手間、と思われる方もいらっしゃると思いますが、こういう方法を採っているのは慣れないと画像にLEDの開始/終了の瞬間が確実に写っているかどうかわからないと思うからです。

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まずカメラを星食の観測をするときと同じに設定します。今回の例はカメラ・レンズを使ってのものなので

  ISO12800、F2.8、1/30秒、動画サイズ 640x480

としました(動画サイズは大きくしても時間解像度がよくなるわけではないので後処理が楽なVGAがお勧めです)

そしてここでシャッター速度だけをできるだけ高速に設定します。今回は1/8000秒としました。

そしてLED(発光器)の1PPS発光を録画します。カメラにもよりますが少なくとも1分程度録画すれば必ず発光の開始と終了の瞬間が写っているものがありますのでそれを探します。なお後でもう一度条件を変えて撮影しますのでLEDは動かないように固定しておいてください

さて上の条件で撮影するとLEDは非常に暗く写ります。こんな感じです。
発光の瞬間です。背面ディスプレイで見たときは発光の瞬間がちゃんと見えたのでこれにしたのですがPCのディスプレイではたぶん見えないのではないかと思います。そういう意味では失敗作ですが、説明の都合上いい点もありますのでこれで説明します。
Imgp21520093

トーンカーブを調整するとこんな感じになりました。なお明るさやコントラストを調整した場合は後で同じ操作をする必要があるのでどういう設定で調整したかを必ず記録しておきます。もちろん発光の瞬間が写っていれば何もしないでいいです。高速シャッターで撮影した場合は明るいか暗いかのどちらかですので画像処理しても発光開始の位置が違って見えるということはありません)
Imgp2152009316x224
画像の上から217ピクセルのところで発光が始まっていることがわかります。

この、高速なシャッターで撮ったときに発光の開始(あるいは終了)の瞬間がはっきりわかるようにLEDの取り付け位置や光量を調整しておく、ということがとても重要です。こうしておかないと星食の正確な時刻を求めることができません

次に1秒後の発光の開始が写っているフレームを見ます。これは(フレームレートが29.97fpsですから)30フレーム後です。上のは93フレームですから123フレームということになります。
Imgp2152012316x224


今度は上から198ピクセルのところで発光が開始していることがわかります。

以上の2枚の画像から使用したカメラのセンサー走査時間を求めることができます。
理論はさんざん書いてきたのです今回は計算式のみを示します。

センサー走査時間

= ( ( 二枚目の画像のフレームNo. - 最初画像のフレームNo. ) /29.97
           - 2枚の画像の間隔[秒] )
     * 画像の縦方向のピクセル数
       / (  最初の画像の発光開始位置 -二枚目の画像の発光開始位置 )

        ※ フレームNo.の順序が逆になっていたので訂正しました(2014.07.13)

言葉で書くより実際の数値を使った方がわかりやすいようです。

    ( ( 123- 93 ) / 29.97 - round((123-97)/29.97),0) ) * 480 / ( 217 -198 ) =  0.025[秒]

    ※ フレームNo.の差を29.97で割り四捨五入したものが2枚の画像の間隔[秒]です。

センサーの走査時間が0.025秒であることがわかります。
このカメラのセンサー走査時間は詳細に調べてあり実際は0.0267秒です。なぜ誤差があるかというと1秒と短い間隔で調べているからです。2秒あるいはそれ以上離れたところのデータを使うとだんだん精度が上がります。2秒以上でもセンサー上の開始位置の位置関係が逆でも上の計算式はそのまま使っていただけます。

もっとも0.0267秒が0.025秒になったからと言って観測結果(通常は 0.01秒単位、±0.04秒として報告)に影響を与えることはまずありません。

というような話をJCLOの宮下さんにしたら条件がよければ0.001秒オーダーの観測だってできることもあるんだから、とたしなめられましたが (^^;;

なお、ここでは動画のフレームレートは29.97fpsであると仮定して計算しています。これは経験上特に問題ないと思われます。少なくとも私のカメラ(PENTAX Q7)ではフレームレートは驚くほど正確でしたし「星食観測ハンドブック2014」にもそういう意味のことが書いてありました。

さて次は露出時間の測定を行います。

(上の例だと)露出時間は1/30秒に決まっているだろうと思われる方も多いと思いますがじつはそうでもありません。フレームレートと違って実際の露出時間はカタログ値とはかなり違います。カメラの露出時間の表記には(取扱説明書には書いてない)お約束ごとがあるようです。

(「**重要** 星食観測用1PPS発光器取扱説明書 - 5」に続く)

参考
  「星食観測日本地域コーディネーター
  
 JCLO - [PDF版] 星食観測ハンドブック2014 発行のお知らせ

関連
  「星食観測用1PPS発光器取扱説明書 - 1
  「星食観測用1PPS発光器取扱説明書 - 2
  「**重要** 星食観測用1PPS発光器取扱説明書 - 4
  「**重要** 星食観測用1PPS発光器取扱説明書 - 5
  「星食観測用1PPS発光器取扱説明書 - 6

  「星食観測でのGPS・1PPS信号の利用法 (1)
  「デジカメのセンサー走査時間を測る方法
  「動画の撮影時刻を知る(1)
  「動画の撮影時刻を知る(2)
  「NY NEX-5Nの1/15秒露出の動画を調べてみた
  「デジカメの特性を比較する

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掩蔽(星食)」カテゴリの記事

コメント

高速シャッター1/8000にして録画、というのは動画撮影でよいのでしょうか?
NEX5の動画にはそういった機能がありません。動画撮影中にEVを+2にすることができるだけなのでこのへんの計算をどうしたらよいものか悩んでいます;;

センサーの走査時間を知りたいということであれば
  デジカメのセンサー走査時間を測る方法
    http://seppina.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-b5eb.html
にある方法でいいと思います。
これも動画の場合で書いてありますが静止画でも高速シャッターで写せば同じようになると思います。
(今確かめてみたのですが、少なくとも同じ現象はおきました)
動画でやるように書いてあるのは静止画と動画でカメラの挙動が違う場合を恐れてのことです。
自分の持っていないカメラがどうなっているかぜんぜんわからいという事情があります。
たぶん仕組みは同じなんだと思いますが。
ほよほよさんのカメラではこうだったというのがわかったら教えていただけるとありがたいです。

なおNEX-5Nについてはサダルテミスさんのデータからある程度わかっています。
http://seppina.cocolog-nifty.com/blog/2014/07/post-a47a.html
お持ちのカメラもこれと同じような傾向だと思います。
もっともPENTAXもQとQ7はかなり違ってますが (^^;;


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