星食観測用1PPS発光器取扱説明書 - 6
いよいよ観測結果から星食(掩蔽)の時刻を求めるところまできました。
やり方はすでに記事にしているのですが今日読み返してみたら相変わらずわかりにくいです (^^;;
今回は理論(?)抜きで実戦的な説明をします。
具体的な計算方法をExcelのシートにしてあります(2014.07.14)
「ダウンロード Camera_00.xls (49.0K)」
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潜入/出現の前あるいは後で1PPSによるLEDの発光が十分な光量で録画されていることが前提です。「十分な光量」という言葉が何を意味しているかは
「**重要** 星食観測用1PPS発光器取扱説明書 - 4」
「**重要** 星食観測用1PPS発光器取扱説明書 - 5」
に書きましたのでそちらを参考にしていただければと思います。
また下記で「センサー走査時間」や「露出時間」という言葉が出てきますがこれらの調べ方も上の二つの記事にあります。
掩蔽の時刻を求める方法としてはLEDの発光の開始を基準とする方法とLEDの発光の終了を基準にする方法があります。
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動画の縦方向ピクセル数をPyとします。 Py=480
フレームレートをRfとします。 Rf=29.97
センサー走査時間をTsとします。Ts=0.027
LEDの発光時間をTwとします。 Tw=0.100
1フレームの露出時間をTeとします。 Te=0.030
1. LEDの発光の終了を基準にして潜入の時刻を求める
せっかくですから実際の観測をもとに説明します。
2014年4月7日のZC1106=λ Gem 3.6等星です。
動画から次の内容を調べます。
LED発光が終了した瞬間が写っている画像のフレーム番号 Ne=371
LEDの発光終了位置(発光が終わったところの縦方向のピクセル数のことです) Ye=224
LED発光の時刻 To=12h03m18.000sUT
星像が最後に写っている画像のフレーム番号 No=1592
そのときの恒星の位置(縦方向のピクセル数) Yo=364
以上がわかれば後は機械的に計算するだけです。
潜入の時刻 = To + Tw + 1/Rf * ( No - Ne + 1 ) + Ts * ( Yo - Ye ) / Py
= 12h03m18.000sUT + 0.100 + 1/29.97 * ( 1592 - 371 + 1) + 0.027 * ( 364 - 224 ) /480
= 12h03m18.000sUT + 40.882
= 12h03m58.882sUT
この掩蔽については潜入時刻を 12h03m58.88s±0.04sUT とJCLOに報告しました。
上の例は潜入の前の1PPS発光(終了)を基準にしていますがもちろん潜入の後のものでもかまいませんし計算式も同じです。
もし掩蔽の前後に1PPS発光が録画できた場合は前後から計算して矛盾がないことを確認します。発光と掩蔽の時刻が1分くらい離れているケースだとどちらから計算しても0.001秒の差があるかないかというくらいだと思います。
違っていたらセンサー走査時間も含め計算間違いがないか調べます。それでも違っていたらフレームレートが正しいか調べることになります。
2. LEDの発光の開始を基準にして潜入の時刻を求める
LED発光が開始した瞬間が写っている画像のフレーム番号 Ns=367
LEDの発光開始位置(発光が始まったところの縦方向のピクセル数のことです) Ye=287
として次の計算式を使います。
潜入の時刻 = To - Te + 1/Rf * ( No - Ne + 1 ) + Ts * ( Yo - Ye ) / Py
= 12h03m18.000sUT - 0.030 + 1/29.97 * ( 1592 - 367 + 1) + 0.027 * ( 364 - 287 ) /480
= 12h03m18.000sUT + 40.882
= 12h03m58.882sUT
もちろん同じ結果になります。
3.LEDの発光の終了を基準にして出現の時刻を求める
これは
星像が写っていない最後の画像のフレーム番号をNo
次のフレームの恒星の位置(縦方向のピクセル数)をYo
として1.の式を適用します。
4.LEDの発光の開始を基準にして出現の時刻を求める
これは
星像が写っていない最後の画像のフレーム番号をNo
次のフレームの恒星の位置(縦方向のピクセル数)をYo
として2.の式を適用します。
重要な補足
フレーム間の時間より露出時間の短いですからこれをどう考えるかというのが課題です。どう解釈するかで掩蔽の時刻は最大0.003秒違ってきます。
じつは上の計算式は潜入と出現ではフレーム間時間と露出時間の差の扱い方が違っています。
デジカメで撮影した動画は原則±0.04秒の精度として扱います。フレーム間時間=時間解像度が0.034秒なのでこれを切り上げて0.04秒としているわけです。0.003秒違っても0.034秒が0.037秒になるのだから0.04秒の精度は確保されていると言っていいとは思いますが光度変化まで分析してより高い精度を求めるようなケースでは問題になってくると思われます。
(「星食観測用1PPS発光器取扱説明書 - 7」(回路図)に続く)
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参考
「星食観測日本地域コーディネーター」
「JCLO - [PDF版] 星食観測ハンドブック2014 発行のお知らせ」
関連
「星食観測用1PPS発光器取扱説明書 - 1」
「星食観測用1PPS発光器取扱説明書 - 2」
「**重要** 星食観測用1PPS発光器取扱説明書 - 4」
「**重要** 星食観測用1PPS発光器取扱説明書 - 5」
「星食観測用1PPS発光器取扱説明書 - 6」
「星食観測用1PPS発光器取扱説明書 - 7」
「星食観測でのGPS・1PPS信号の利用法 (1)」
「デジカメのセンサー走査時間を測る方法」
「動画の撮影時刻を知る(1)」
「動画の撮影時刻を知る(2)」
「NY NEX-5Nの1/15秒露出の動画を調べてみた」
「デジカメの特性を比較する」
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