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2014年7月 9日 (水)

はじめてのGPS受信モジュール - GE-612T編 - 1

星食(掩蔽)の観測のためには正確な時刻を知ることが必要です。だいたいの時刻__つまり日常生活では正しい時刻と解釈されるもの__を知る手段はいくらでもあるのですが星食の観測のために必要な1/1000秒の精度のあるものはほとんどありません。

電子部品を扱っているようなお店(秋月電子通商とかaitendoとかそんなところ)でGPS受信モジュールを数千円で購入することができます。そういうものの中には1PPS信号を出力できるものがあります。このGPS受信モジュールの1PPS信号は非常に正確です。データシートには誤差はたいてい1/1,000,000秒以下と書かれています。

このGPS受信モジュールは時計を作りたいとか周波数標準を作りたいという人たちのために売られている(高精度発振器をGPS受信モジュールとPLLで作る - はじめに)のでしょうが、ここではまず1PPS信号をどう利用するかということに絞って記事を書きます。

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aitendo - 極小GPSモジュール[GE-612T] 」を例にとります。これを例にとったのは通販で簡単に購入可能、比較的取扱が容易、機能的に使いやすい、といった特長があるからです。

まず上のリンクにデータシートがあるのでよく内容を吟味します。

・電源電圧は3.3V~3.6V

3.3 ~ 3.6 V power supply」、「Power Consumption 50 mA / average tracking」とありますのでニッケル水素電池3個で使えそうです。というかこれ以外では電圧が合わなくて使えなさそうです。
ただ実測すると消費電流はこれよりちょっと大きいようです。

・アンテナが必要

アンテナが内蔵されていませんので外部アンテナが必要です。でもアンテナコネクタ(ソケット)があるので接続は難しくありません。
アンテナのコネクタはI-PEXですので「aitendo - 外付GPSアンテナ[GPS1589R-A] 」みたいなものをいっしょに買っておく必要があります。
内蔵アンテナがなくコネクタもついていないものはなかなかタイヘンですので気をつけましょう。そういうのは「初歩の電子工作」の知識技能では正しく実装するのは難しいです。正しく実装していなくても動いたりはしますが....

・1PPS出力

TIMEPULSEという名前になっていますが、「Default: 1 pulse per second(1Hz), synchronized at risingedge, pulse length 100ms.」とありますので1PPS出力そのものです。パルス幅は100msとなっていますので加工せずにそのまま使えます。パルス幅が1us(1μs)となっているものもありそういうのは扱いがちょっとめんどうです。
精度は「Time Pulse Signal Accuracy 30ns (RMS) <60ns (99%)」となっています。これは1PPS信号の出方にばらつきがあることを意味しているのだと思います。ただそのばらつきは平均的に3/100,000,000秒であり、誤差が6/100,000,000秒を越えることは100回に1回しかないということですから星食観測に使うのであればまったく問題ありません。
ただこの精度を保ったままLEDを光らせるというのはムリだと思います。LED発光の精度は1/100,000秒くらいだと思っておいた方が無難でしょう。

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買ったらまず最小限必要な配線だけして動作を確認します。
せっかくGPS受信モジュールを手に入れたのですからまず1PPS信号を確認したくなるのが人情ですがそれは後回しにします。なぜかと言うと

  1. 1PPS信号出力まで時間がかかることもあり何分も待っていると不安になります。
    この記事に書いた方法は1秒で結果がわかります。
    空の見える場所に行く必要もありません。

  2. もし1PPS信号の出力時間(パルス幅)が1us(1μs)だと信号の確認が手間です。

の二つの理由からです。

最初はTXDに出てくる信号を検出することにします。TXDというのはGPS受信モジュールが得た情報、つまり時刻とか緯度とか経度を(通常1秒間に一回)出力するものです。
ここからどうやってそういうデータを取得するかはまた別の記事で書きます。ここではこのTXD端子からデータが出力されていることさえ確認できれば十分です。

例えばこんな感じです。

Ge612ttxd1
もしGPS受信モジュールが正常に動作していればLEDは点灯し、そしてずっと見ていると1秒間の一回少しLEDが暗くなるのがわかるはずです。この暗くなっているというのが信号が出力されている証拠です。これが確認できれば一安心です。

各端子についてざっと説明しておきます。

No.1 VCCは電源電圧を与えます。3.6V以下3.3V以上です。
もちろん電源に接続するのはいちばん最後です。

No.2 TXD(測位情報の出力)、No.3 RXD(制御情報の入力)は「TTL serial data output(from GPS)/input(to GPS)」です。これらを本来の目的で使うのはけっこう面倒です。
私の知る範囲では電波が来ていようがいまいが電源を入れさえすればここから何らかの信号が出力されていますので最初の動作確認には最適です。
RXDはこのシリーズではしばらく使わないからそのままにしておきます(使わないからそのまま、というのはいつも正しいわけではないですが...)

TXDは通常“High”(ふつう2.4V以上)で信号を送出するときだけ断続的に(1/4800秒~/9600秒を単位に)“Low”(ふつう0.4V以下)になります。LEDを直接つないでも光るはずなので電流制限用の抵抗を入れてLEDを接続します。電流制限用の抵抗は数kΩ~10kΩくらいと控えめにしておきます。また電圧が低いのでLEDが赤色のものを使います。これだとあんまり電流は流れないのですがそれでも光っているのはちゃんと見えます。ちょっと暗いのですがデータシートを見てもどのくらい電流が取り出せるかわからないのでムリをしないで使います。今は動作確認が目的ですから....
LEDを明るくするにはどうしたらいいかは別に書きます。


No.4 PWR_CTRLは「Module power control High or floating: power OFF Low: power ON」とありますのでLowにします。“Low”というのは0.8V以下にしろという意味だと思うのでGNDに落とします。“Low”への接続を切断するか“High”にすれば(=VCCの方に接続すれば)“待機状態”__つまり測位情報を保持したまま電流消費がほとんどゼロになる__に入るはずです。なお“High”にするというのは2.0V以上にしろという意味でしょう。

No.5 TIMEPULSEが肝心の1PPS出力です。
1PPS出力の詳細については次の次の記事で書きます。

No.6 RESERVEDはそのままにします。“RESERVED”は将来的に何かに使うかもしれないという意味です。

No.7、No.9 GNDはすべての信号の基準になるところです。電池のマイナスの方に接続します。

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点灯の仕方が信号のあるときだけ少し暗くなるというのはヘンな気がしますが、上に書いたような仕様(?)なので仕方ありません。

これが気になるんだったら次のように配線することをお勧めします。こうやると信号があるときだけ点灯するので“あ、動いている!”というのを実感できます (^^)

Ge612ttxd2



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上の図を見るとどちらも昔作った鉱石ラジオより簡単に見えるのですが実際はここまでこぎつけるのもなかなかたいへんです。次回は“実技編”配線の仕方です。

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補足

VCCとGNDの間には電解コンデンサーとセラミックコンデンサーを入れておいた方がいいでしょう。いつも無条件に入れているので回路図に書くのをつい忘れてしまいます (^^;;

使用上の注意としてデータシートには次のような記述があります。

Please solder GND pins (7, 8) to big (say,main board) ground plane. Additional soldering of shielding case to big ground plane may also boost the performance.

動作を確認するだけならともかく実際に製品化(?)するときはちゃんと守りましょう。

実際このようにしたら、待機状態から電源を投入するとすぐに1PPSが出力されるとか室内でもかなり窓から離れたところでも1PPSが出力されているとか電波のつかみがよくなったような気もします。あくまで“気がする”というだけの話です。たまたまそのときの衛星のめぐり合わせがよかっただけかもしれません。 <==“気のせい”だったようです (^^;;

はじめてのGPS受信モジュール - GE-612T編 - 2
はじめてのGPS受信モジュール - GE-612T編 - 3
GPS受信モジュールGE-612Tのタイムパルス(Time Pulse)機能
2MHzを(10MHzも!)出力できるGPS受信モジュールGE-612T(u-blox6/LEA-6)

に続きます。

具体的な1PPS、TXD信号の取り出し方については
  「はじめてのGPS受信モジュール - GM-5157A - 概要
が参考になると思います。
また測位情報のバックアップのやり方は
  「GPS受信モジュールGE-612Tのバックアップ
に書きました。

関連
  「時刻標準について
  「GPS受信モジュールあれこれ
  「GPS受信モジュールGM-316による星食(掩蔽)観測用1PPS発光
  「GE-612T vs GM-316 1PPS対決 - GPS受信モジュール
  「GPS衛星の電波を失ったGM-316の1PPS出力はどうなる?
  「1PPS信号を音声で記録すると遅延するか?
  「星食観測でのGPS・1PPS信号の利用法 (1)
  「星食観測用1PPS発光器取扱説明書 - 1
  「星食観測用1PPS発光器取扱説明書 - 2
  「はじめてのGPS受信モジュール - GE-612T編 - 1」 (動作確認)
  「はじめてのGPS受信モジュール - GE-612T編 - 2」 (配線の仕方)
  「はじめてのGPS受信モジュール - GE-612T編 - 3」 (1PPS出力の確認)

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