GPS衛星の電波を失ったGM-316の1PPS出力はどうなる?
GPS受信モジュールはたぶんGPS衛星の電波から(双曲線航法みたいな方法で)自分のいる場所を特定し、衛星から自分の場所まで距離、つまり電波の遅延時間を求めそれで衛星から送られてくる報時信号を修正して1PPS信号を出しているんじゃないでしょうか。
一個の衛星から送られてきた電波だけでは正しい時刻はわからないわけで、だから1PPS信号が出るまでけっこう時間がかかるのでしょう。
ところでGPS衛星の電波を完全に失ったらどうなるかというと正しい1PPS信号はだせそうにありません。実際GE-312Tは屋内に入る1PPS信号の出力が止まります。
ところがGM-316は一度1PPS出力を出し始めるとどこに行っても1PPS信号が停止することはありません。
GPSの電波は失われているわけですからただの(水晶)時計として動いているはずです。としたらだんだん誤差が大きくなっていくでしょう。
仮にこの時計が月差15秒だと仮定します。そうすると1日に0.5秒、1時間に0.02秒くらいですから15分も見ていれば進み遅れが検出できるはずです。
こんな実験をします。
まずGE-612TとGM-316を1PPS信号が出るような状態におきます。そしてGE-612TはそのままにしておきGM-316は電波の来てなさそうなところに持っていって両者の1PPS信号を比較します。
最初はこんな状態です。
上がGE-612Tで下がGM-316です。GM-316は極性が逆になってますが気にしないでください。マーキングは0.001秒を示します。
これはすでに記事「GE-612T vs GM-316 1PPS対決 - GPS受信モジュール」にしましたが1/10,000秒ほどの差もありません。
このあとすぐにGM-316を移動します。15分たったらこんな状態でした。なんとこれまた1/10,000秒の差もないです。
仮説1
たまたまこの日は時計の進み遅れが0になるような気温だった。
仮説2
GM-316は電波のあるとき自分の時計の進み遅れを検出し補正値を求め電波がなくなったあともそれを使って1PPS信号を出している。
仮説3
GE-612TとGM-316はポリシーが違う。GE-612Tは測位できなくなったら1PPS信号の出力をやめるがGM-316は測位ができなくてもすでに取得した測位情報を使って1PPS信号を出し続ける。つまり私が電波が来ていない場所と思っていたのは測位ができるだけの電波が来ていない場所にすぎなかった。
仮説4
じつは超小型の原子時計を内蔵している。
でもあれはけっこうなお値段でしたから\3,980._のGPS受信モジュールに内蔵してあるわけないですね。
1.は気温の違う日にやってみれば、2.は気温の変化するときにやってみれば検証できそうです。3.はシールドケースを用意してやるんでしょうか。
どれも面倒そうです (^^;;
ところで上の図を比べるとおもしろいことがわかります。
最初のは3.7522秒に1PPS信号が出力されています。
15分後のは15分11.8488秒に1PPS信号が出力されています。
どうやらテストに使ったボイスレコーダーは15分に0.1秒くらい進んでいるようです。あるいはサンプリングレートが0.01%くらい高くなっているようです。
まあたいしたことはないんですが、1分間の0.006秒となると今の私には大きく感じます (^^;;
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私の記事を読むよりこれを読んだほうが役に立つかも....
「NA3NPL Web - GPS/1ppsを利用した11桁周波数カウンターと周波数標準」
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