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2014年7月28日 (月)

バーナード星は動いているか? - 1 - 固有運動と年周視差

プロジェクト(?)が始まって三ヶ月も経っていないのですがすでにバーナード星が“動いている”ことは確認されました。

  「星空のおぼえ方-ソラのソムリエから自由をめざす - もう動いてた♪ バーナード星☆彡

私の方は固有運動量の算出を目標にぼちぼち行きたいと思います (^^)
そしてあわよくば年周視差も (^^;;


  ==>
  「
バーナード星の2枚の写真から固有運動の赤経・赤緯成分を計算してみた
  「バーナード星の年周視差と固有運動を6枚の写真から計算してみた
  バーナード星の年周視差と固有運動の観測・まとめ

サダルテミスさんが2014年5月9日と2015年5月14日に撮影した写真をアニメーションGIFにされています。さすがに一年も経つと疑いようもなく動いています。

  「星空のおぼえ方-ソラのソムリエから自由をめざす - あれから1年! バーナード星☆彡

(2015.05.15 11:32)
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位置を変えないから“恒星”というんでしょうが、いろんな理由で位置は変化しています。
とは言っても視位置(瞬時の春分点/赤道に対する赤経/赤緯)の変化は我々アマチュアにはなかなか感じることはできないものです。

でも恒星相互の位置関係が変化するとなると写真に撮ればすぐにわかるわけですから興味深いものになります。

恒星相互の位置関係が変化するのは恒星の位置(視位置)が変化するいろんな理由のうち座標の回転では表されないものです。つまり次のように分類されます。

写真で見てもわからない=恒星相互の位置は変化しないもの

・ICRSからJ2000.0への座標変換
・歳差(一般歳差、日月歳差)
・章動
・極運動

ある程度の時間を隔てて撮った写真を比べればわかりそう=恒星相互の位置が変化するもの

・固有運動
・年周視差
・年周光行差
・大気差

大気差で位置の相互関係がかわるのは確かにはっきりわかります。地平線に沈む太陽がひしゃげて見える__つまり太陽の上側と下側の位置関係が変わることを意味します__のはよく経験します。でもこれは一種の気象現象ですからここで話題にしていることとはちょっと違います。

年周光行差の影響はけっこう大きいです。ただ年周光行差は太陽との位置関係で決まるものです。東の空にある恒星と西の空にある恒星の位置関係は変化するのですが東の空にある恒星と西の空にある恒星をわずかな位置変化もわかるようにいっしょに写すことはむずかしそうです。カメラや望遠鏡で撮影する狭い範囲であれば年周光行差は同じように影響しますから、これは実質的には恒星の位置関係が変化しないものの方に分類すべきでしょう。

となると残るのは固有運動と年周視差になります。

年周視差はなかなか手ごわそうです。どのくらい検出するのが難しいかは

  「FNの高校物理 - ブラッドベリーが光行差を見付けた方法

が参考になると思います。年周視差検出の難しさの理由のひとつは周期的な変化であることでしょう。一年間(半年間?)で見つけられなければそれで終わりです。

年周視差について否定的に書いてしまったのですが、バーナード星に限ればぜったいに検出はムリ、ということではなさそうです。これについてはまた記事を書く機会があると思います(2014.08.03 10:00)

最後に残る固有運動ですが、これは短期間で検出するのはとても難しそうなのですが周期的な動きではなく一方向への永続的な動きですから一年で検出できなければ二年、二年でダメだったら三年、それでもムリだったら十年、二十年あるいは一生頑張ればどうにかなるかもしれません。

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ということで唐突ですがバーナード星の動き__固有運動__を数ヶ月で検出することに挑戦したいと思います (^^)

最初にやることはバーナード星の写真を撮って他の恒星との位置関係を調べることです。
バーナード星の写真を撮りたいのですが私には今はその能力がありません。そのうち“バーナード星の撮り方”という記事は書くつもりですが (^^;;

今回はサダルテミスさんの力をお借りします。

  「星空のおぼえ方-ソラのソムリエから自由をめざす - ウチから見える一番近い夜空の恒星!初GET☆彡

にある画像から恒星の位置の相互関係を徹底的に調べます。そして数カ月後サダルテミスさんが撮られるであろう写真も同じように調べてバーナード星の動きを検出するのが目標です。

画像から恒星の位置を読み取らなければならないのですが、これには心強い味方があります。

「写真から星の座標を得る」アプリ」の記事に書いたほよほよさんの作られたプログラムです。


サダルテミスさんからいただいた画像はJPEGですからまずこれをペイントで開き“24ビット ビットマップ”で保存します。そしてほよほよさんのアプリを使います。

  .......>keypoints_r DSC03078.bmp

197個の恒星が見つかりました。
Keypoints_r_out1

“,”で区切りExcelで読み込めるように直します。
Keypoints_r_out2

Excelで読み込み(例えばfloat xの昇順にソートし)“星像データ”のシートに貼り付けます。
int x、int yは今は必要ないので削除し残りをB3のところから貼り付けます。
Keypoints_r_out3

B列からF列がkeypointsの出力です。A列はこれらから生成したものです。A列はこれから書く“星像データ”と“星表”データを突き合わせるときの効率をアップするためのものです。
float xでソートしたのも突き合わせを楽にするためです。

Excel(の“星像データ”)に読み込んだ197個の恒星の星像位置をSVGで可視化するとこんな感じになりました(SVGは“SVG星像”のシートに自動的に作られますので、それをテキスト・エディターなどにコピーし“○○.svg”という名前で保存します。SVGファイルは Internet Explorerで表示したりGIMPで読み込んだりできます)
Barnard_image


この図をぜひ

  「星空のおぼえ方-ソラのソムリエから自由をめざす - ウチから見える一番近い夜空の恒星!初GET☆彡

にある画像と見比べていただきたいと思います。いろいろな観点(?)で眺めていると確実に小一時間は楽しめます (^^)

この後延々と話しが続きます。結果だけみたいという方は次のExcelファイルをご覧になった方が早いと思います。

  「Excel_SRV_V1_3_バーナード星.xls

先日一瞬だけダウンロードできるようにしたけれどすぐに削除してしまったExcelファイルよりだいぶ進歩しています (^^)

ところでデジカメの画像はデジタルデータです。でもそれはファイル形式の話であって恒星の位置とか考えると写真と変わりはないわけでアナログデータでしかありません。
上のようにして恒星の位置を読み取ることによってデジカメの画像ははじめてデジタルデータになるんだと思います。

参考

  「星空のおぼえ方-ソラのソムリエから自由をめざす - ウチから見える一番近い夜空の恒星!初GET☆彡
  「星空のおぼえ方-ソラのソムリエから自由をめざす - 試しにもう一度バーナード星を見たけれど…
  「星空のおぼえ方-ソラのソムリエから自由をめざす - もう動いてた♪ バーナード星☆彡

  「ほよほよのブログ - 画像処理の最初の一歩
  「ほよほよのブログ - 写真から星の座標を得るために -画像処理その2
  「ほよほよのブログ - 写真から星の座標を得るために -画像処理その3
  「ほよほよのブログ - 写真から星の座標を得る - プログラム公開
  「ほよほよのブログ - 写真から星の座標を得る - ここまでのまとめ
  「ほよほよのブログ- 画像から読み取った座標を評価する
  「ほよほよのブログ- 画像から読み取った座標を評価する-その2
  「ほよほよのブログ- (追記あり)写真の座標から赤経・赤緯を求める-プログラム再公開
  「ほよほよのブログ- SIFT特徴量を計算する


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天文計算」カテゴリの記事

コメント

これはいいですね!
サダルテミスさんちの画像と見比べて楽しみました。そのうちバーナード星が動いていることがわかるとさらにエキサイティングですね^^。
SVG出力も充実してきて、後は目ぼしい星にラベルがついてると完璧かも。
写真整理のときに同じファイル名でファイルタイプが.SVGのものを作って赤経・赤緯と星の名前がいくつか入っていればいいなぁ(妄想^^)。
この記事を拝見すると keypoints の出力は int が要らなくてすべて ,(カンマ)区切りのほうがいいみたいですね。この手の改修は5分もかからないんで修正しておきます。

記事の方はまだ書かなきゃいけないことがあるので続くのですが、じつはサダルテミスさんが28日の深夜新しい写真を撮られており提供していただきました。
さっそく分析したのですが、バーナード星だけ突出して残差が大きくなってました。
不思議に思っていろいろ調べてみたら7月28日の画像を分析するときファイルを使いまわしたので日付が5月9日のままになっていました。
それに気がついたとき、あっ、動いてる!、とちょっと興奮しました (^^)
それからいつもいつもご対応いただきありがとうございます m(._.)m
もうフルカスタマイズのアプリを作っていただいているようで心苦しいです。

ほよほよさんのアプリとセッピーナさんのエクセルファイルで、こんなことまでできてしまうんですね(≧∇≦)
私も見比べててみました^^
ノイズまでは星像データになってないようで良かったです(^^;

エクセルファイルもダウンロードさせていただきましたけど、すごい事されてるんだなっていうくらいしか分かりませんでした(;´▽`A``

はい、ほよほよさんのアプリ、たいしたもんですね。
星の明るさとサイズがあまりよく一致していない感じがするところ(特に右下)がありますが星像の状態が悪いとそうなるみたいです。
今週撮られた写真を使うとますますリアルになるんじゃないでしょうか (^^)
なお星表にあって星像を認識していないものが二つありました。
ひとつは例の幽霊星です (^^;;

写真の右と左で半径判断する方法を変えると星像の状態が悪くても近い半径を得られるような気がします。
たいていコマ収差で外側に向かって崩れていますので、半径を測るときは星中心から画像中心に向かって測るといいかも知れません。今は右に向かってしか測っていないので写真右のものだけ大きめに判断されてると思います。

あれ、そうなんですか (@@)
画像を左右反転したものでやったものと平均をとるというのはどうでしょう (^^;;
ところでもう8月分の掩蔽予測を作らなきゃいけないんですが、掩蔽の様子を表す図をSVGで書こうかとか思い始めました。
時間が..... (^^;;

なるほど、またも左右反転!
今の画像で反転して keypoints にかけると左右はっきり誤差が現れるでしょうね。
プログラムのほうでは反転画像をメモリに持つなんてもう無理ですから、きちんと左向きに辿る方法でやろうかと思います^^;
keypoints から9等級より明るく適切な大きさの3角形を2つ選ぶ( tetra 用、都合4つの点)方法を考えているのですが・・・画像中央からハビタブルゾーンみたいなドーナツ状領域から4点とかうまく選べないですかね。
それから大気差って上下1度の写真で何度くらい出るのでしょう。セッピーナさんの記事で見たような気がしてるんですが。たとえ高度が低い写真でも上が0.59度で下が0.6度のズレなら全体平均では0.01度程度ですよね。歪曲収差の補正ができるようになったので大気差の許容誤差をtetraのTHRESHOLDに設定しようかと思っています。

以前左右や上下を反転して動かしてみたのは処理に方向性があるのではないかと気になったからでした (^^;;
大気差は小さいと言えば小さいです。
1度の画角のレンズでどのくらいの範囲が写るか国立天文台の式で計算すると20度で1.00229度、40度で1.00068、60度ともなると1.00038度です。
でも縦幅が3000ピクセルとすると差は20度で6ピクセル、40度で2ピクセル、60度でも1ピクセルということになりますから今の計算精度だとほっとけないですね。

20度で6ピクセルですか。星ひとつ分はズレてる感じになりますね。
調べていただき、ありがとうございます。

5月末に撮ったへびつかい座の写真が高度22度あたりを向いていて、歪曲収差を補正しても閾値を広げないと見つかりませんでした。
tetraに大気差計算入れるとなるといくら参考書(Excelファイル^^)があっても大変そうですよね;;
もうプラネタアプリそのものになってしまいます^^;
バーナード星のGIFアニメ、見てきました。かなり感動しました^^。

はい大気差は緯度、時角という新しい要素が入ってきますのでタイヘンでしょうね。
カメラの鉛直線に対する角度は時角と北極方向角から求まる、でいいんでしょうか....
完全に他人事みたいな発言ですが (^^;;
バーナード星、おもしろいですね。恒星が動くというのは頭じゃわかってもこうやって見るとちょっと興奮します。

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