pn接合の順方向電圧(VBE)と電流(IB)の関係
前回の「炭素皮膜抵抗の温度係数を測定する話」の続きです。
上の記事は“測定する話”であって“測定した話”ではないです。その後ちゃんと温度係数を測っておりそれは
「金属皮膜抵抗と炭素皮膜抵抗の温度係数を測ってみた - まとめ」
にあります。またpn接合の順方向電圧の温度特性の測定も行っています。
「pn接合順方向電圧(VBE)の温度係数を測ってみた(高精度版)」
抵抗値の微小な変化は測定できそうなのでこんどは温度変化を測定する話になります。
サーミスタ(例えば「秋月電子通商 - NTCサーミスタ(温度検知・温度補償用)10kΩ(5個入)」)を使う、あるいは、温度測定用IC(例えば「秋月電子通商 - 高精度IC温度センサ LM35DZ」)を使う、というのが順当なところなんでしょうが、どちらも手元にないのでpn接合の順方向電圧の変化で温度変化を検出することを考えました。例えばトランジスタのベースエミッタ間に電流を流しベースエミッタ間の電圧を測定することで温度の変化をとらえようという魂胆です。
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ここまではいいのですが、そのあと順方向電流・電圧の関係に対する温度の影響を勘違いしてしまい的外れなことを書いてしまいました。いったん記事の内容を削除したのですが、順方向電圧・電流の測定結果が間違っているわけではないので温度係数のことは後回しにして順方向電圧・電流の関係のことだけ書いておきます。
(2014.08.17)
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よく見る順方向電圧Vに対する順方向電流Iの関係式はこれです
I = Io * ( exp(q*V/(k*T)) - 1 )
qは単位電荷、kはボルツマン定数ですから物理定数です。Tが温度(絶対温度=熱力学的温度)です。Ioは個体ごとに決まっている(そして温度に依存する)定数です。
まずトランジスタ2SC1815を持ち出しこのような関係が成り立つか測ってみます。
実際には電源電圧と抵抗値を先に測っておいてVBEから流れている電流を逆算したので“イメージ図”ということで.....
VBE=0.676[V]、 IB=0.447[mA]が得られました。
昨日、テスターの3桁目は信用しない、と書いたばっかりなんですが (^^;;
気温29deg.Cだったのでそれから計算したら Io=2.37E-15[A] となります。これを元にVBE、IBの関係をグラフにします。
I = Io * ( exp(q*V/(k*T)) - 1 )
の式でIoは非常に小さいので、今考えている電流・電圧、温度の範囲であれば ( exp(q*V/(k*T)) - 1 )は非常に大きいと言えます。つまり exp(q*V/(k*T)) >> 1 ですので上の式を
I = Io * exp(q*V/(k*T))
と考えてもよさそうです。この式の両辺の対数をとると
ln(I) = ln(Io) + q*V/(k*T)
となりますので片対数のグラフで表示すれば実質直線になります。
“理論式”とグラフを見比べると特定の温度ではIoつまり使用するデバイスによって直線は傾きは同じまま上下し、特定のデバイスでは温度が変化するとそれにともなって傾きが変わることがわかります。
Excelファイルはここから
「ダウンロード VBE_01.xls (67.5K)」
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次にいろんな電流でVBEを測りこのグラフと一致するか調べてみます。
どういうわけか最初の式で表される関係とは違います。
この理由については「pn接合の理想係数を測る」に続きます。
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その後徹底的(?)にやってます。
測定方法については「ログアンプ - ベース電流(IB)とベース電圧(VBE)の関係」にあります。
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参考
「山形大学大学院理工学研究科 - 廣瀬文研究室」
「半導体デバイス教科書執筆プロジェクト」
「第3 章 pn接合ダイオード」
※ 記事の冒頭にある“理論式”はこの教科書にあるものとは違います。
(「pn接合の順方向電圧(VBE)と温度の関係 -1」へ続く)
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関連
「pn接合(VBE)の理想係数と飽和電流の簡単な求め方」
「pn接合の飽和電流と理想係数を測定する - ダイオード・1SS355」
「pn接合順方向電圧(VBE)の温度係数を測ってみた(高精度版)」
「pn接合の飽和電流と理想係数の温度特性(を調べる準備)」
「pn接合順方向電圧(VBE)の理想係数や温度特性の測定装置」
「pn接合の順方向電圧(VBE)と電流(IB)の関係」
「pn接合の順方向電圧(VBE)と温度の関係 -2 測定方法」
「pn接合の理想係数を測る」
「測定対象別記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
温度、気圧をはじめいろんな物理量の測定方法について
「過去記事の一覧(測定、電子工作、天文計算)」
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コメント
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なるほど、とても難解です( ;´Д`)
私はもう少し低レベルな実験をしてみます^^;
投稿: 惑 | 2014年8月12日 (火) 18時50分
はい、このあたりは難解というか面倒ですね。
あと一回か二回はこんな感じで続くのですが、その後に来る結論・結果はとても簡単なものになるはずです (^^)
というか簡単にならないと私は困ります (^^;;
投稿: セッピーナ | 2014年8月12日 (火) 19時25分