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2014年8月18日 (月)

恒星視位置(赤経・赤緯)計算が間違ってました!

前回記事「天文アプリ - 恒星の赤経・赤緯 - 計算精度ランキング - 暫定第三版」で「今日はショックなできごとがあった」と書いたのですが今日はさらにショックなできごとがありました。

私の恒星視位置計算に誤りがありました。これまで書いた記事それぞれについてどう対応するか検討中ですが、状況だけ先に記します。

その後「このブログの変更履歴・正誤表など」にあるように固有運動の計算にはさらに誤りがあることが判明しました。ふつう問題になることはなさそうな程度なのですが、誤りは誤りなわけで....

  「
恒星の視位置に対する固有運動と視線速度の影響

現時点(2016年8月)でもっとも正しい(=正確な)計算式は次の記事からダウンロードできるExcelファイルの”恒星の視位置”のシートにあるものです。

  
太陽の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版

-----

ヒッパルコス星表から恒星の視位置を計算するとき最初に固有運動の計算をします。
このとき赤経方向の動きについては赤緯のcos()を掛けてから使います。
星表にある固有運動のデータpmRA、pmDEはμα、μδそのものだと思って計算していたのですが、じつは違っていてヒッパルコス星表等ではpmRAは“Proper motion mu_alpha.cos(delta)”でした。
つまり現在cos(δ)をかける計算を二回してしまっていることになります。

ちょっとだけ言い訳をさせていただくと私の場合視位置計算はほとんどの場合星食の予測が目的なのでほとんどが天の赤道近くの恒星が対象です。この場合cos(δ)は1に近くなるので気づきませんでした(幸か不幸かバーナード星も赤道近くでした)

念のために書いておきますがヒッパルコス星表では星表データがcos(δ)を掛けたものになっているからcos(δ)を掛けて使ってはだめなわけで、もし(そういう星表があるかどうかわかりませんが)星表データがμαの生の値になっているものだったらちゃんとcos(δ)を掛けて使わないとダメです。

----

もし視位置計算のExcelをダウンロードしてお使いの方がいらっしゃいましたら、できるだけ早く修正版をアップしますのでそれを使っていただきますようお願いします。
星食予測については9月版から修正したものにします。

具体的な修正個所は次の二つです。

μ0[mas/year] に相当するセル
    =SQRT((C49*COS(D47))^2+C50^2)
となっていますが
    =SQRT(C49^2+C50^2)
が正しいです。

その四つ下、一つ左(”M”の右側)
    =IF(C49=0,PI()/2,ATAN2(C50,C49*COS(D47)))
となっていますが
    =IF(C49=0,PI()/2,ATAN2(C50,C49))
が正しいです。

以上ひとまずお知らせするとともにご迷惑をおかけした方にお詫びいたします

またこのことに気が付いたのはほよほよさんの

  「Tycho と MySQL ここまでのまとめ

の記事がきっかけです。ここに記し御礼申し上げます m(._.)m

-------

グラフを修正版に入れ替えました。
このグラフのサイズだと国立天文台のものと完全に一致して見えます。

精度が上がって平均の誤差が0.1秒(arcmin)を切ったら自慢たらたらの記事を書くと言ってたのですが、お詫びの記事になってしまいました (^^;;

SkySafari Pro 3.8.5の値は私の年周光行差を考慮していない計算とだいたい合っているから精度はよさそう、なんて上から目線的な評価を書いてしまったのですが、今回の結果で比較すると年周光行差を抜きにして見ると完璧に一致してます。間違ってたのは私です m(._.)m

計算精度順位 アプリ/サイト名 計算誤差
[arcsec]
表示精度
[arcsec]
表示結果の信頼度 備考
暫定一位 iStellar Ver.2.7.1 0.8 1.8 表示桁数が多いのにそれに見合う計算精度があります。
計算結果は最後の一桁まで十分に信用できます。
iアプリ
(\900._)
暫定ニ位 お星様とコンピュータ ★彡
(Ohoshisama to Computer)
1.0 1.8 表示桁数が多いのにそれに見合う計算精度があります。
計算結果は最後の一桁まで信用できます。
注 中央標準時0時の値がなかったので世界時0時の値を使っています。
ウェブサイト
お星様とコンピュータ ★彡 - 恒星のデータを読もう/恒星の視位置もわかる
暫定三位 海上保安庁海洋情報部
近似式
(JCG)
3.8 - -

近似式とその係数のみの提供です。
ウェブサイト
海洋保安庁 - 海洋情報部

暫定四位 SkySafari Pro 3.8.5 18.0 0.2 ☓☓

最後の二桁は信用しない方がいいです。
年周光行差を計算せずにこの表示精度は無謀でしょう(「天文アプリ/サイトの計算精度ランキング(暫定版)」参照)
iアプリ
(\4,000._ ただしSkySafari 4 Pro)
(\300._ ただしSkyaSafari 4)

暫定五位 Stellarium 0.12.3 22.8 15.0

計算精度が悪いというより表示の精度にあわせて計算したということでしょう。
表示桁数分の計算精度はだいたい確保されています。
天文アプリの精度比較(恒星編) - Stellarium 0.12.3」参照
アプリ
Stellarium」からダウンロード

暫定六位 Stellanavigator Ver.9.2b 27.1 1.8 最後の桁だけじゃなくてその上の桁もあやしいという….
年周光行差の計算が間違っているように見えます。
ステラナビゲータの視位置がヘンだと思うんだけど....」参照
アプリ
(\16,200._ ただしステラナビゲータ10、
Ver.10では年周光行差の問題は解決済みだそうです)
オープン参加 Seppina
(前回の記事にあるExcelファイルの“Seppina”のシートで計算した結果です)
星表データはヒッパルコス星表のものを使っています。
-----
下の値は固有運動の計算の誤りを修正したものです。
グラフは修正後のものを表示しています。
0.5
-----
0.01
0.2
-----
-

-----
-
表示桁数に相応する計算精度を確保してたつもりなんですが (^^;;
表示精度を一桁減らせば“◎”ですが、今の表示精度に見合った計算精度の達成を目指します。
Excel
天文アプリの精度比較(恒星編) - Stellarium 0.12.3」からダウンロード
------
修正したものは表示桁数に相当する制度が得られるようになりました。
Excelはダウンロードできるように準備中です。

ウェブサイトのURLや価格は記事執筆時点のものです。

計算誤差はオープン参加の私の計算のものが小さいですが、これはより下の桁まで計算したものをそのまま比較の対象にしているからでしょう。(計算が正しいという前提で)より下の桁まで使った方が誤差は小さくなり有利に働きます。だからあんまり気にしないでください。



比較のグラフです。
Sirius


関連

  「恒星の位置計算 - ヒッパルコス星表の使い方から大気差の計算式まで
  「
恒星視位置(赤経・赤緯)計算が間違ってました!
  「
バーナード星の視位置計算の誤差の原因を調べる - 1
  「
恒星の視位置に対する固有運動と視線速度の影響」 

  「「Excelによる天文計算」記事目次とリンク集

  「ステラナビゲータの視位置がヘンだと思うんだけど....
    「ステラナビゲータ Ver.9.2b」を取り上げました
  「天文アプリの精度比較(恒星編) - Stellarium 0.12.3
    「Stellarium 0.12.3」のデータを追加しました。
    上記の比較に使ったExcelファイルはこの記事からダウンロードできます。
  「天文アプリ/サイトの計算精度ランキング(暫定版)
    「お星様とコンピュータ ★彡」と「SkySafari Pro. 3.8.5」のデータを追加しました。
  「天文アプリ/サイトの計算精度ランキング(暫定第二版)
    「iStellar 2.7.1」のデータを追加しました。
  「「天文アプリ - 恒星の赤経・赤緯 - 計算精度ランキング - 暫定第三版」」
    海上保安庁、海洋情報部の近似式による結果を追加しました。

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コメント

なるほど、赤緯0度近辺だと気が付きにくいですね。
私もモヤモヤが無くなってスッキリです。
テーブルを作り直してから、アークトゥルス、HIP114046、HIP24186(カプタイン星)、HIP3821A(ηCas)で検証作業をして2015年版に自信がもてる感じになってきました^^。
ステラナビゲータは10で直ってるんですね^^。

はい、私もすっきりしました (^^)
ただはくちょう座61番星を見ると暦象年表と0.0001度くらい違うのでまだ何かあるのかもしれません。
ほよほよさんのプロジェクトには影響はないと思いますが....

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