天文アプリ - 恒星の赤経・赤緯 - 計算精度ランキング - 暫定第三版
最新のアプリ精度比較の表とグラフは
「恒星視位置(赤経・赤緯)計算が間違ってました!」
にあります。
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今日はショックなできごとがあったのでそのことについて書きます。
その後さらにショックなできごとがありました。
「恒星の視位置に対する固有運動と視線速度の影響」
現時点(2016年8月)でもっとも正しい(=正確な)計算式は次の記事からダウンロードできるExcelファイルの”恒星の視位置”のシートにあるものです。
「太陽の赤経・赤緯・地心距離をExcelで求める(海洋情報部の計算式) 2017年版」
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以前星食(掩蔽)の予測をしようと考えたときまず最初に必要になったのは恒星と月の正確な視位置(瞬時の春分点と赤道に対する位置)を求めることでした。星食の予測には度で0.00001度、つまり赤経で0.002秒、赤緯で0.04秒くらいの精度のデータがあれば理想です。
恒星の視位置はがんばれば自前で星表から計算できます。Excelでやっていますので月の方はそうは簡単にいきません。いろいろ調べたら海上保安庁海洋情報部(昔の水路部ですね)から近似式が提供されていることを知りそれを使うことにしました。
近似式とは言ってもけっこうな精度がありこれまで星食の観測に支障をきたすほど予測がはずれたことはありません。
今日、海洋情報部の近似式には主要な恒星の視位置もあったのを思い出しました。そこでさっそくやってみました。
現在計算精度ランキングトップにあるiStellarを上回る精度が出るのではないかと思っていたのですが、残念ながらそこまでの精度はありませんでした。
運動が複雑を極める月の近似式は赤経・赤緯それぞれ30個の係数を持つ多項式からなっておりそれも一ヶ月ごとに係数を変えなければなりません。それに対し恒星の近似式は係数は8個しかなくそれが一年間ずっと使えます。
どうして月の視位置より恒星の視位置の方が精度が悪いのか不思議です。
よく見ると赤緯は国立天文台の値とよく一致しています。すべての月について赤経が0.3秒くらい小さくなっているようです。国立天文台と海洋情報部では視位置の定義が違う、ということはないでしょう。これまで何度も書いたように視位置というのは明確に定義されているものですから。
試しに海洋情報部と同じ式で国立天文台の値にもっともよく合うような係数を求めてみました。そうしたら計算誤差は0.2秒を下回る結果になりました。つまり赤経で言えば誤差0.01秒にせまる精度です。
海洋情報部に問い合わせみようかと思っています (^^;;
計算精度順位 | アプリ/サイト名 | 計算誤差 [arcsec] |
表示精度 [arcsec] |
表示結果の信頼度 | 備考 |
暫定一位 | iStellar Ver.2.7.1 | 0.8 | 1.8 | ◎ | 表示桁数が多いのにそれに見合う計算精度があります。 計算結果は最後の一桁まで十分に信用できます。 iアプリ (\900._) |
暫定ニ位 | お星様とコンピュータ ★彡 (Ohoshisama to Computer) |
1.0 | 1.8 | ◎ | 表示桁数が多いのにそれに見合う計算精度があります。 計算結果は最後の一桁まで信用できます。 注 中央標準時0時の値がなかったので世界時0時の値を使っています。 ウェブサイト 「お星様とコンピュータ ★彡 - 恒星のデータを読もう/恒星の視位置もわかる」 |
暫定三位 | 海上保安庁海洋情報部 近似式 (JCG) |
3.8 | - | - | 近似式とその係数のみの提供です。 |
暫定四位 | SkySafari Pro 3.8.5 | 18.0 | 0.2 | ☓☓ | 最後の二桁は信用しない方がいいです。 |
暫定五位 | Stellarium 0.12.3 | 22.8 | 15.0 | ○ | 計算精度が悪いというより表示の精度にあわせて計算したということでしょう。 |
暫定六位 | Stellanavigator Ver.9.2b | 27.1 | 1.8 | ☓ | 最後の桁だけじゃなくてその上の桁もあやしいという…. 年周光行差の計算が間違っているように見えます。 「ステラナビゲータの視位置がヘンだと思うんだけど....」参照 アプリ (\16,200._ ただしステラナビゲータ10、 Ver.10では年周光行差の問題は解決済みだそうです) |
オープン参加 | Seppina (前回の記事にあるExcelファイルの“Seppina”のシートで計算した結果です) 星表データはヒッパルコス星表のものを使っています。 |
0.5 | 0.2 | △ | 表示桁数に相応する計算精度を確保してたつもりなんですが (^^;; 表示精度を一桁減らせば“◎”ですが、今の表示精度に見合った計算精度の達成を目指します。 Excel 「天文アプリの精度比較(恒星編) - Stellarium 0.12.3」からダウンロード |
ウェブサイトのURLや価格は記事執筆時点のものです。
計算誤差はオープン参加の私の計算の方が上位のものよりちょっとだけ小さいのですが、これは私の計算はより下の桁まで計算したものをそのまま比較の対象にしているからでしょう。(計算が正しいという前提で)より下の桁まで使った方が誤差は小さくなり有利に働きます。だからあんまり気にしないでください。
さらに一桁精度を上げるつもりでやっていますので計算誤差が0.1をきったらそのときは自慢たらたらの記事を書くつもりです (^^;;
比較のグラフです。また色を変えましたので注意してください。
上位のアプリの国立天文台との差がわかりやすいように図を大きくしました。クリックすれば拡大されるはずです。iStellarの精度がとてもいいことがわかります。
今回は私の計算から年周光行差の影響をのぞいたものも追加しました。SkySafari Proの結果とほぼ一致しています。これを見るとますますSkySafari Proで年周光行差を適用したものを見たくなります。
ほんとは国立天文台の値から年周光行差の影響をのぞいたものを作りたかったのですが面倒で (^^;;
関連
「「Excelによる天文計算」記事目次とリンク集」
「ステラナビゲータの視位置がヘンだと思うんだけど....」
「ステラナビゲータ Ver.9.2b」を取り上げました
「天文アプリの精度比較(恒星編) - Stellarium 0.12.3」
「Stellarium 0.12.3」のデータを追加しました。
上記の比較に使ったExcelファイルはこの記事からダウンロードできます。
「天文アプリ/サイトの計算精度ランキング(暫定版)」
「お星様とコンピュータ ★彡」と「SkySafari Pro. 3.8.5」のデータを追加しました。
「天文アプリ/サイトの計算精度ランキング(暫定第二版)」
「iStellar 2.7.1」のデータを追加しました。
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