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2014年9月22日 (月)

正確な温度を求めて (1)

温度というのはよくよく考えると不思議なところがあります。

長さとか重さ(質量)とか時間というのは日常的に“この橋はむこうの橋の2倍の長さがありそうだ”、“私の体重はあなたの一割増”、“今日は同じことをやるのに半分の時間で済んだ”といいますので定義がどうのこうの言う前に数量的な概念です。

一方温度は“今日は昨日より暑い”とか”北海道は九州より涼しい”とは言っても“今日は昨日より二倍暑い”とか”北海道は九州より三割涼しい”とは言いませんから人間感覚的には数量的な概念とはちょっと違うようです。

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古典的(?)な定義としては“水の凝固点(氷の融解点)が摂氏0度”、”水の沸点が摂氏100度”でしょう。でもこれは摂氏0度と摂氏100度は定義しているものの、これだけから摂氏30度とか摂氏50度がどう定義されるかは何もわかりません。

そこでどう定義すべきが考えてみました。

たいていのものは温度が高くなると膨張するようです。だからアルミか何かの棒を用意しておいてその長さを測ります。摂氏0度のときの長さと摂氏100度のときの長さを測っておけばアルミの棒の伸びた長さから温度を定義することができそうです。もちろん”ものさし”も温度に応じて伸び縮みしますがこれは問題になりません。“ものさし”もアルミで作ってあったら別ですが。

棒状温度計(水銀温度計やアルコール温度計(これは実際にはアルコールじゃないものもあるらしいですが))はこの“原理”を応用しています。

他にもアイデアはあるのですが、それについては省略し“現代”では温度がどう定義されているかについてざっと書いておきます(詳しい説明は私にはムリです)

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まず“熱力学温度”というものが定義されています。ただ分子とか原子とかそういうものの熱運動のエネルギーに関連して定義されているのでどうやって測るのかよくわかりません。温度計の作り方がわからないと言った方がいいかもしれません。でも産総研のサイトを見ると音響気体温度計や熱雑音温度計と言ったものがあります。興味のある方は調べて見られるとおもしろいかもしれません。

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この熱力学温度というのは上に書いたように「この豆腐の熱力学温度は?」と聞かれても我々には測りようがないものです。熱力学温度というはWikipediaにも記事がありますが、「雲の上の話」的な説明が書いてあります。

現実には国際温度目盛(ITS-90)というものがあり特定の物理現象の起きる温度が決められており、それが温度の基準になっています。

どういう現象が何度と決められているか、は理科年表に一覧があります。全部で17点あります。

理科年表によればこれらの現象(温度)での白金低抗体の電気抵抗を測定し、次に特定の温度での電気抵抗を測定し定義定点での電気抵抗から補間してその特定の温度の具体的な値を求めるという手順で温度を測定します。

つまり17個の物理現象を実現する設備とその物理現象下における白金低抗体の電気抵抗を測定する設備が温度計の“原器”ということになります。

そしてこれらの“原器”は日本の場合産総研にあるようです。

独立行政法人産業技術総合研究所 - 計量標準総合センター

ここが温度計測のピラミッドの頂点、トレーサビリティの出発点ということになるのだと思います。

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さて17個の温度の定義定点の中で“素人”にも体験できそうなものはないかと探すと日常的な温度の範囲内にあるのは次の二つです。

1. 水の三重点....摂氏0.01度(273.16K)
2. ガリウムの101325Pa(要するに1気圧)における融解点....摂氏29.7646度

水の三重点の方は桁数があんまりありませんが、これは「水の三重点の温度を273.16K(摂氏0.01度)と定義する」ということだと思います。

水の三重点の方は私にも実現できないこともないのではないかというような気がだんだんしてきました。まあ水の純度がどうのこうのなどと言い出すとキリがないですが。

またガリウムは市販されているようです。けっこう高価ですが買えない値段ではなかったです。純度的に使えるものなのかどうかは調べていませんが。

精度は抜きにしてこういうのをやって見るとおもしろそうな気がします。
探したらこういうことをやられている方の記事が見つかるかもしれません。

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なお“水の沸点”というのは定義定点ではないです。水の沸点は大気圧下で100度くらい、0気圧付近になると摂氏0度近くまで落ちます。となると気圧が1hPa変化しただけで沸点は平均0.1度下がるわけですからとても定義定点として使うわけにはいかないのでしょう。
沸点となると水を沸騰させるわけですが水中だと水深が1cm増えるだけで1hPa水圧が高くなるので沸点はそれだけで0.1度下がるわけになります。とても0.01度とかそれ以上の精度で温度を測るとかできそうにありません。

一方氷点は気圧が1hPa変化しても(直線的に変化するわけではなさそうですが)平均で0.00001度くらいしか変化しません。だから氷点は水の三重点の“代用”として使えるのだと思います。

ちなみに標準気圧下における沸点は摂氏約99.974度と理科年表には書いてありました。

(続く)

関連

  「正確な温度を求めて (1)」 (この記事)

  「ミニ恒温槽の作成に向けて - 1
  「ミニ恒温槽の作成に向けて - 魔法瓶の活用
  「温度を一定に保つ方法 - ミニ恒温槽の作成に向けて(3)

  「氷点 - 摂氏0度の作り方

  「熱電対の起電力の近似式 - 起電力と温度の相互変換

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コメント

温度にもNICTみたいなところがあるのですね(≧∇≦)
気象のお勉強をかじっているときに温度とは分子の運動みたいなのを読んだ記憶があります。
それが熱力学的温度のことになるんですかね。
温度計というのも突き詰めて行くと市販の温度計というのがどれぐらい精度が甘いかというのが分かってくるのですね(¬_¬)時間と一緒で。

はい分子(物質粒子全般)の運動として熱力学温度は定義されるようですね。
私には遠い世界のできごとのように思えますが (^^;;
確かに温度というのはとらえどころがないのですが、氷点できれば(水の三重点)みたいなのを足がかりにしていけば何かしら(アマチュア的には)成果は得られると思います。

それから、じつは時刻・周波数の標準供給も産総研の担当みたいですよ。つまり時刻・周波数も国家標準は産総研にあるということみたいです。


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