熱電対の起電力の近似式 - 起電力と温度の相互変換
熱電対の起電力は“規準起電力”という形で理科年表などにありますが、10℃毎の値なので任意の温度に対する起電力を求められるわけではありません。それにふつうは起電力に対する温度がほしいわけですから困ります。
そこで規準起電力をもとに温度=>起電力、起電力=>温度の計算式(変換式)を作ってみました。
この記事はK型(クロメル・アルメル)熱電対に対するものです。T型(銅・コンスタンタン)用の近似式は
「T型熱電対の規準起電力の近似式 - 起電力と温度の相互変換」
にあります。今回はK型(つまりクロメルアルメル)の-20℃~120℃までのものです。また高温用の近似式は
「熱電対の起電力の近似式 - 起電力と温度の相互変換 (250℃~1300℃編)」
にあります。
-200℃~1300℃の温度範囲を四つの近似式で表します。Excelのシートも用意しました。
-20℃~120℃についてはより精度がいい式も用意しました。
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近似式の説明をする前にお断りしておきたいことがあります。
今回紹介する計算式は規準起電力の近似式としては実用的に十分な精度があると思います(起電力から温度に変換したときの誤差は大きくても0.05℃くらいです)
ただ実際に熱電対を使ったときその起電力が規準起電力と同じか、つまりこの近似式で正しい温度を求められるかというのはこの近似式が規準起電力を正しく表しているかというのとは別の問題です。
参考までに実験結果を紹介しておきます。実際に起電力を測り近似式との差を規準起電力と近似式の差と比較したものです。実験方法の詳細は
「測温抵抗体と熱電対とサーミスタの温度測定値を比較してみた」
にあります。
青い◇が規準起電力、赤い点線はこの記事の近似式で計算したものです。このグラフで見る限りピッタリ一致しています。
一方緑の点は実測値で近似式と(つまり規準起電力と)微妙に差があります。
差をグラフにしてみました。
規準起電力と近似式の差は大きくても1μV程度ですのでちょっとだけ0μVの線からずれているだけです。
一方起電力の実測値は温度が高くなるにつれて近似式(規準起電力)から離れて行きます。だいたい近似式より1.4%ほど低い電圧になっています。
また秋月電子通商だと他に“K型熱電対 ステンレス管タイプ”というのも扱っていますが、こちらは(少なくとも私の持っているものは)補償導線が使われており上の実測値以上に起電力の差が大きくなります(どのくらいの差が出るかは使い方によって変化します)
「K型熱電対 ステンレス管タイプ(秋月電子通商)による温度測定」
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場合によっては
温度 = 起電力(μV) / 40
で済ませた方が手っ取り早いというか十分なことも多いと思います(40というのは低温用で1000℃くらいまで使うのでしたらもう41かそれよりちょっと小さいくらいの値の方がいいでしょう)
参考
「株式会社東京熱学 - 2-3 熱電対の許容差」
JIS C 1602 で規定された熱電対には、それぞれに規準熱起電力が規定されています。この熱起電力に実際の製品の熱起電力をあわせる事は非常に困難なため、ある一定の幅を決めて誤差を許容しています。
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もし比較的広い温度範囲で正確な温度を知りたいのであれば測温抵抗体を使った方がいいと思います。
「(白金)測温抵抗体(白金薄膜抵抗)の使い方 - 基礎編というか入門編というか....」
「温度計のセンサー比較(温度センサ、サーミスタ、熱電対、白金測温抵抗体、pn接合など)」
などを参考にしていただければと思います。測温抵抗体は秋月電子通商だと“白金測温抵抗“という名前で350円あるいは600円で入手できます。値段は違いますが精度は同じです。私の持っているものに限って言えば350円の方が正確そうです。
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今回はK型(クロメル・アルメル)ですがT型(銅・コンスタンタン)もよく使われるようです。
T型の起電力はK型によく似ていて0℃~100℃だったらこちらも
温度 = 起電力(μV) / 40
でじゅうぶんだと思います。
銅・コンスタンタンの話は
「岩手大学農学部 岡田益己 - 温度の正しい測り方(3)熱電対の作り方・使い方」
にありました。この論文は熱電対を扱う上でとても参考になると思うので御一読を!
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ながながと前置きを書いてしまいましたが以上を頭に入れた上で以下を読んでいただきたいと思います。
ExcelあるいはLibreOffice等をお持ちの方はこちらをお使いください。
「ダウンロード Excel_ThermoCouple.xls (42.0K)」
途中は省略して近似式を作ったらこうなりました。最初に書いたようにこれは私に興味がある-20deg.C~-120.0deg.Cの範囲でのものです。
-20度~120度の範囲の式に関しては温度に対する起電力は理科年表にある値と最大でも1μV程度の違いです。起電力から温度を求める方は0.05度も違ってないと思います。
(1) 温度から起電力を求める式
E=((-111.5*T/100+265.3)*T/100+3942.6)*T/100-0.4 -20℃~120℃
E=((-111.37*T/100+270.7)*T/100+3929.3)*T/100-6.3 -200℃~-25℃
E=((-101.95*T/100+250.9)*T/100+3945.3)*T/100-0.1 -25℃~170℃
E=((-7.939*T/100+126.43)*T/100+3592.7)*T/100-508.0 170℃~850℃
E=((-3.0657*T/100+38.344)*T/100+4050.4)*T/100-1.9 850℃~1300℃
Tは摂氏の温度です。結果はμVです。
ざっと1℃で40μVということになります。
(2) 起電力から温度を求める式
T=((0.000044*E/100-0.004160)*E/100+2.538000)*E/100 -20℃~120℃
T=((0.00005*E/1000-3.758)*E/1000+7.28)*E/1000-26.7 ~-2500μV
T=((0.04569*E/1000-0.04569)*E/1000-25.48)*E/1000+0.0 -2500~7000μV
T=((-0.00101*E/1000-0.0)*E/1000+24.71)*E/1000-0.4 7000~20000μV
T=((0.001168*E/1000-0.04804)*E/1000+23.714)*E/1000+21.0 20000μV~
EはμVで、Tは摂氏の度です。
こちらは100μVが2.5℃です。
実際に測定するときは(1)を使って冷接点の温度から起電力を求めこれを測定した起電力にプラスします。そしてその起電力から(2)の式で熱接点の温度が求まります。
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ふつうの熱電対温度計は冷接点の温度をなんらかのセンサーを使って求めそれから熱接点の温度を求めます。つまり熱電対で測定される温度は他のセンサー=温度計の精度に依存することになります。
そういうのがいやな場合は冷接点を氷水の中につけてつまり0.0℃にしてやります。
「氷点 - 摂氏0度の作り方」
熱電対の起電力の実測値や他の方法との比較は下記の関連記事にあります。
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関連
「記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
「PICで作る温度計のセンサー比較」
「正確な温度を求めて (1)」
「氷点 - 摂氏0度の作り方」
「測温抵抗体と熱電対とサーミスタの温度測定値を比較してみた」
「K型熱電対プローブ(秋月電子通商)による温度測定」
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「熱電対の起電力の近似式 - 起電力と温度の相互変換 (250℃~1300℃編)」
「熱電対の起電力の近似式 - 起電力と温度の相互変換」 (-20℃~120℃編、この記事)
参考
「学習院 - 仲山英之・石井菊次郎 - 2-1 温度測定」
「岩手大学農学部 岡田益己 - 温度の正しい測り方(3)熱電対の作り方・使い方」
「アナログ・デバイセズ - 熱電対温度計測に関する不明瞭な部分の理解」
「株式会社東京熱学 - 2-3 熱電対の許容差」
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