オペアンプを単電源で使う方法 - 4
二電源が必要だが単電源しか用意できないときの非常手段としての抵抗分圧を使う方法の問題点とその回避方法についていろいろ書いてきました。
ただこういうのはやっぱり“邪道”という気がします。ちゃんと二電源用意すべきでしょう。
(例えば「RS232CインターフェスICで作るオペアンプ用正負電源 - 定電圧機能つき」)
ただこれから紹介する方法は単電源ではあるものの限りなく二電源用意したのに近い方法になります。
この記事を読んで、これで何にでも使える、とは思わないでください。
この方法のいちばんの問題はこれで作った電源のGNDがもとの電源/電池のGNDとは異なることです。つまりもとの電源とこの方法で作った電源のGNDを共通にすることはできません。じつはこの“事故”は何度も経験しました (^^;;
ケースに入れて他の回路とは接続しないで使うようなものにだけ使うというのが基本です。
もともと回路的にGNDを共通にできないようなもの、例えば「交流電圧計(ミリバル)の簡単な作り方」のための電源というようなことであればそれなりに有効だと思います。
これまでの記事、これからの記事
「オペアンプを単電源で使う方法 - 1」
抵抗分圧による二電源化の問題点
「オペアンプを単電源で使う方法 - 2」
抵抗分圧でなんとかするいろんな方法
「オペアンプを単電源で使う方法 - 3」
抵抗分圧による方法のまとめ
「オペアンプを単電源で使う方法 - 4」 (この記事)
電源電圧の中点をオペアンプで安定化する。
「オペアンプを単電源で使う方法 - 5 」
RS232CインターフェースICのチャージポンプを利用する
「RS232CインターフェスICで作るオペアンプ用正負電源 - 定電圧機能つき」
製作例
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なんだかんだと書きましたがけっきょく抵抗分圧の中点の電位が変動することが問題でした(あるいは中点の電位を基準に考えれば電源電圧が変動することが問題でした)
そこでこんな回路を使うことを考えます。
帰還抵抗はR1、R2は10kΩと20kΩ、負荷には1kΩの抵抗が入っています。
ただの抵抗による分圧回路であればR3、R4は100Ωくらいにしないとまともに動かないケースです。
でもこの回路であればご覧のとおり問題なく動作します。
分圧によって作られた中点の電位が帰還抵抗を流れる電流や負荷を流れる電流によって変動するのが問題だったわけですが、この回路はGNDになる基準電圧を500kΩという高い抵抗値の抵抗で作り出しています。そしてそれをいったんボルテージフォロワーを介して回路に供給しています。
ボルテージフォロワーは増幅率は1なのですが出力抵抗が非常に小さくなります。つまり電流が出ていこうが入っていこうが電圧はほとんど変化しません。
つまり多少の負荷がかかってもGNDの電圧は正しく電源電圧の1/2に保たれます。
こういう回路にすれば負荷に○○mA流れるから分圧抵抗は○○kΩにして、というようなことを考える煩わしさから解放されます。
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これはじつは
「デジタル照度計キット(ルックスメータキット) - 秋月電子」
で使われている回路です。そしてこの製品のことは
「1999年度 電子回路論提出作品集/成績発表」
で知りました。それぞれの作品に対する延與先生の評価がなかなか楽しいです (^^)
こっちにもあります。
「2000年度 電子回路論作品発表、 成績発表(IEでないと化けます)」
ちゃんと勉強したい方向けに講義ノートもあります。物理の先生が書かれたにしては実戦的です(ちょっと失礼な表現かも)
「1999年度 電子回路論講義ノート(html)(ps)」
今は理化学研究所にいらっしゃるみたい(http://rarfaxp.riken.go.jp/~enyo/)ですが、上にある記事は京大にいらっしゃったときに書かれたものです。
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関連
「交流電圧計(ミリバル)の簡単な作り方」
「ウィーンブリッジ発振回路の帰還量(増幅率)と波形の関係」
「ウィーンブリッジ発振回路の発振条件 - Excelで複素数の計算」
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コメント
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それで電子回路論講義ノートを読むように言われたのですね(¬_¬)
内容が難しくて、ほとんど読み進んでいませんが、、、
投稿: 惑 | 2014年10月31日 (金) 12時36分
こういうものがあるという紹介だけで今読む必要はないと思います。
基本的なところを勉強してから読めば、楽しみながら読めると思います。
この講義ノートは
「100Vの電灯線のうち、触ってしびれるのはどっちか知っていますか? 一度試してください。」
とか
「扇風機のコンセントを引っくり返して差しても扇風機が 逆に回らないのはナゼが知っていますか? 」
というようなところが重要(?)です (^^;;
投稿: セッピーナ | 2014年10月31日 (金) 12時48分
その辺りまでなら読みました(≧∇≦)
コンセントのところは本か何かで読んだことあるのですが、怖くて試せません^^;
投稿: 惑 | 2014年10月31日 (金) 13時01分
しびれない方に触ってしびれないことを確かめればいいんじゃないでしょうか (^^;;
投稿: セッピーナ | 2014年10月31日 (金) 13時20分
紹介してもらった照度計キットの回路図と1時間くらいにらめっこしてたので、この記事の内容はわりとすんなり入ってきました^^。
2段目のオペアンプにウィーンブリッジ回路を組めば、サイン波がでるのでしょうか(自分のLTspiceでやるべきですね^^;)
投稿: ほよほよ | 2014年10月31日 (金) 19時42分
後段にあるオペアンプの回路で必要な電流が電位の中点を作る前段のオペアンプの出力能力の範囲にあればどんな回路でも動くはずです。
オペアンプでサイン波を作るのであればほよほよさんにはやっぱり二階の微分方程式を解いてほしいです (^^)
投稿: セッピーナ | 2014年10月31日 (金) 21時16分