ウィーンブリッジ発振回路の発振条件 - Excelで複素数の計算
前記事
「ウィーンブリッジ発振回路の帰還量(増幅率)と波形の関係」
は大急ぎで書いたので“理論”を省略しました。そこで今回は発振条件を考えてみます。
理論編と言いたいのですが、“理論編もどき”になってしまいました。
あんまりスマートとは言えない方法ですが、応用はききます。例えば
「コルピッツ発振回路の発振条件 - LCだけでは決まらない発振周波数」
にあるようにコンデンサやインダクタのESRを考慮した発振条件を求めるという目的にも使えます。
なお振幅制限についてはちょっと変わった方法でやってみました。
「“ふつう”のサーミスタをウィーンブリッジ発振器のリミッタ(振幅制限)に使う方法 (2)」
まともな振幅制限の方法もやってみました。
「ウィーンブリッジ発振回路の歪率(高調波歪)を小さくする工夫」
なお、もう一つのCR発振回路、移相型発振器については
「オペアンプで作る移相型発振回路 (1)」
「移相型CR発振回路の発振条件」
にあります。
-----
ウィーンブリッジ発振回路はこんな回路です。
オペアンプの出力EoがZ1、Z2で分圧されたEiが入力となります。つまり
Ei = Eo * Z2 / (Z1 + Z2 )
です。
オペアンプの増幅率をAとすると発振条件はこうなります。
Eo = Ei * Aであること。
オペアンプで増幅する場合Aは実数ですから Ei/Eoも実数であることが要求されます。
つまり上の条件は
EoとEiは位相が一致していなければならない
ということも言っています。
Z1 部分のインピーダンスは
Z1 = R1 + 1/jωC1 ... ω=2πf
Z2部分のインピーダンスは
Z2 = 1 / ( 1/R2 + jωC2 )
です。以下これをもとに上の条件を満たす周波数を求めればいいわけですが、それはググればいくらでもあるので今回はExcelでEi/Eoの周波数による変化を調べてみました。
Excelで複素数の計算を行うサンプルにもなるかと思ってダウンロードできるようにしてあります。
「ダウンロード WB_CndOsc.xls (45.5K)」
Excelでの複素数計算は例えば上のZ2を計算するところだと
=IMDIV(1,COMPLEX(1/$C$3,2*PI()*B15*$C$4))
みたいにしてやります。これはもちろんExcelのヘルプを見ればわかりますが、こういう方面についてはとても参考になるサイトがあるので紹介しておきます。
有限会社ゴッドフット企画 - 「Excelで虚数、複素数の計算」
応用としてこんなものもありました。
「エクセルを用いたフーリエ変換(FFT)」
-----
上のZ1,Z2を各周波数で実際に計算しEi/Eoの実数部分、虚数部分をグラフにしたものです。
Ei/Eoの虚数部分がなくなるのは緑色の一点鎖線で示したところです。f=159Hzです。
このときのEi/Eoは1/3です。
結論としては
オペアンプ(で作った増幅器)の増幅率が3のとき159Hzで発振する。
ということになります。
ふつうこういうグラフはEi/Eoの絶対値と偏角(位相)で書くものなのでそれも示しておきます。
位相φは度じゃなくてラジアンで表してあります。
------
関連
「“ふつう”のサーミスタをウィーンブリッジ発振器のリミッタ(振幅制限)に使う方法」
「ウィーンブリッジ発振回路の帰還量(増幅率)と波形の関係」
「ウィーンブリッジ発振回路の発振条件 - Excelで複素数の計算」 (この記事)
「PCオーディオをオシロスコープ代わりに使う - 1」
「PCオーディオをオシロスコープ代わりに使う - 2」
「PCオーディオでサンプリングスコープ - 1」
「PICのDAC(DAコンバータ)を使ってみた」
「PICのDAコンバータ(DAC)を使ってみた - 補足」
「インダクタンスの測り方」
参考
「きむ茶工房ガレージハウス - PICの内蔵DAC機能を動作させて見る」
関連
「I2Cデバイス・アドレス一覧」
「同じアドレスのI2Cデバイスを使う」
「PICで平方根 - 白金薄膜抵抗で温度を測る」
「PICでI2C - ADコンバーター・MCP3425の使い方」
「PICでI2C - MPL115A2の大気圧計算法」
「I2C大気圧センサーLPS331の驚くべき分解能」
「I2C大気圧温度センサーLPS331 - 海面更生気圧を気象庁とくらべてみた」
「I2C大気圧センサーLPS331の分解能はほんとうに高いのか?(温度編)」
「PICでI2C - 1 (温度計を作る)」
「PICでI2C - 液晶(LCD)ディスプレイ(ACM1602N1-FLW-FBW)に表示する」
「PICでI2C - LCD(液晶)ディスプレイによる違い」
「サーミスタによる温度測定の精度」
「サーミスタ温度計の精度を調べる - 1」
「PICで作るお手軽サーミスタ温度計」
「炭素皮膜抵抗の温度係数を測定する話」
「ミニ恒温槽の作成に向けて - 1」
「ミニ恒温槽の作成に向けて - 魔法瓶の活用」
参考
「きむ茶工房ガレージハウス - PICの動かせ方入門はこちら - 16F1938覚書」
「きむ茶工房ガレージハウス - I2C通信の実験」
「きむ茶工房ガレージハウス - 気圧センサーで大気圧と標高を測定して見ます(MPL115A1)(MPL115A2)」
« ウィーンブリッジ発振回路の帰還量(増幅率)と波形の関係 | トップページ | 交流電圧計(ミリバル)の簡単な作り方 »
「趣味の電子工作」カテゴリの記事
- PICで作る100MHz周波数カウンタ検証用XOR(エクスクルーシブオア)逓倍器(2016.03.08)
- 150MHz(~200MHz?)周波数カウンター用プリスケーラー(1/4分周器)(2016.03.06)
- 測温抵抗体(Pt100、白金薄膜温度センサー)の抵抗値を温度に変換する(平方根を使わない)計算式(2016.03.01)
- GPS/JJY(標準電波)を基準周波数源とするためのPLLの詳細(2016.02.27)
- GPS受信モジュール1PPS対決 - GE-612T vs GM-5157A(2016.02.21)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
« ウィーンブリッジ発振回路の帰還量(増幅率)と波形の関係 | トップページ | 交流電圧計(ミリバル)の簡単な作り方 »
今回出てきた内容は今まで勉強したところなのでなんとなく分かりました(¬_¬)
といってもなんとなくです、、、
緑色の点線のところはEoをEiでわったときに虚数が消えるところということですか?
その位置でしか発振しないということですね?(¬_¬)
投稿: 惑 | 2014年10月10日 (金) 16時29分
意外と簡単でしょう。出てくる値が複素数になるだけで計算の仕方は直流と違いはありません。
おっしゃるとおり緑色のところで虚数部がなくなり、ここでだけ発振します。
電気をやっている人と話すときは「虚数部がなくなる」というより「位相が等しくなる(ところで発振する)」と言った方が話が通じやすいでしょう。たぶん (^^;;
投稿: セッピーナ | 2014年10月10日 (金) 17時09分
あっ、なるほど(≧∇≦)
直交形式にした場合、虚数部は位相に当たるからですね〜
少しずつだけど、分かって来て嬉しいです。
投稿: 惑 | 2014年10月11日 (土) 08時50分
はい、教科書にはいろいろ難しいことが書いてありますし、もちろんそれを勉強する意味はおおありなんですが、実際に直面する問題はオームの法則で解決することがほとんどなのかも (^^;;
投稿: セッピーナ | 2014年10月11日 (土) 12時17分