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2014年10月10日 (金)

ウィーンブリッジ発振回路の発振条件 - Excelで複素数の計算

前記事

  「ウィーンブリッジ発振回路の帰還量(増幅率)と波形の関係

は大急ぎで書いたので“理論”を省略しました。そこで今回は発振条件を考えてみます。
理論編と言いたいのですが、“理論編もどき”になってしまいました。

あんまりスマートとは言えない方法ですが、応用はききます。例えば

  「コルピッツ発振回路の発振条件 - LCだけでは決まらない発振周波数

にあるようにコンデンサやインダクタのESRを考慮した発振条件を求めるという目的にも使えます。

なお振幅制限についてはちょっと変わった方法でやってみました。
  「“ふつう”のサーミスタをウィーンブリッジ発振器のリミッタ(振幅制限)に使う方法 (2)

まともな振幅制限の方法もやってみました。
  「ウィーンブリッジ発振回路の歪率(高調波歪)を小さくする工夫

なお、もう一つのCR発振回路、移相型発振器については
  「オペアンプで作る移相型発振回路 (1)
  「移相型CR発振回路の発振条件
にあります。

-----

ウィーンブリッジ発振回路はこんな回路です。

Wb_cndosc

オペアンプの出力EoがZ1、Z2で分圧されたEiが入力となります。つまり

  Ei = Eo * Z2 / (Z1 + Z2 )

です。

オペアンプの増幅率をAとすると発振条件はこうなります。

  Eo = Ei * Aであること。

オペアンプで増幅する場合Aは実数ですから Ei/Eoも実数であることが要求されます。
つまり上の条件は

  EoとEiは位相が一致していなければならない

ということも言っています。

Z1 部分のインピーダンスは

  Z1 = R1 + 1/jωC1    ... ω=2πf

Z2部分のインピーダンスは

  Z2 = 1 / ( 1/R2 + jωC2 )

です。以下これをもとに上の条件を満たす周波数を求めればいいわけですが、それはググればいくらでもあるので今回はExcelでEi/Eoの周波数による変化を調べてみました。

Excelで複素数の計算を行うサンプルにもなるかと思ってダウンロードできるようにしてあります。
  「ダウンロード WB_CndOsc.xls (45.5K)

Excelでの複素数計算は例えば上のZ2を計算するところだと

  =IMDIV(1,COMPLEX(1/$C$3,2*PI()*B15*$C$4))

みたいにしてやります。これはもちろんExcelのヘルプを見ればわかりますが、こういう方面についてはとても参考になるサイトがあるので紹介しておきます。

  有限会社ゴッドフット企画 - 「Excelで虚数、複素数の計算

  応用としてこんなものもありました。
    「エクセルを用いたフーリエ変換(FFT)

-----

上のZ1,Z2を各周波数で実際に計算しEi/Eoの実数部分、虚数部分をグラフにしたものです。

Wb_rme_ime


Ei/Eoの虚数部分がなくなるのは緑色の一点鎖線で示したところです。f=159Hzです。
このときのEi/Eoは1/3です。

結論としては

  オペアンプ(で作った増幅器)の増幅率が3のとき159Hzで発振する。

ということになります。

ふつうこういうグラフはEi/Eoの絶対値と偏角(位相)で書くものなのでそれも示しておきます。
Wb_e_ph

位相φは度じゃなくてラジアンで表してあります。

------

関連
  「“ふつう”のサーミスタをウィーンブリッジ発振器のリミッタ(振幅制限)に使う方法
  「ウィーンブリッジ発振回路の帰還量(増幅率)と波形の関係
  「ウィーンブリッジ発振回路の発振条件 - Excelで複素数の計算」 (この記事)

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  「きむ茶工房ガレージハウス  - PICの内蔵DAC機能を動作させて見る

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  「PICで作るお手軽サーミスタ温度計

  「炭素皮膜抵抗の温度係数を測定する話
  「ミニ恒温槽の作成に向けて - 1
  「ミニ恒温槽の作成に向けて - 魔法瓶の活用

参考

  「きむ茶工房ガレージハウス - PICの動かせ方入門はこちら - 16F1938覚書
  「きむ茶工房ガレージハウス - I2C通信の実験
  「きむ茶工房ガレージハウス - 気圧センサーで大気圧と標高を測定して見ます(MPL115A1)(MPL115A2)」

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コメント

今回出てきた内容は今まで勉強したところなのでなんとなく分かりました(¬_¬)
といってもなんとなくです、、、

緑色の点線のところはEoをEiでわったときに虚数が消えるところということですか?
その位置でしか発振しないということですね?(¬_¬)

意外と簡単でしょう。出てくる値が複素数になるだけで計算の仕方は直流と違いはありません。
おっしゃるとおり緑色のところで虚数部がなくなり、ここでだけ発振します。
電気をやっている人と話すときは「虚数部がなくなる」というより「位相が等しくなる(ところで発振する)」と言った方が話が通じやすいでしょう。たぶん (^^;;

あっ、なるほど(≧∇≦)
直交形式にした場合、虚数部は位相に当たるからですね〜
少しずつだけど、分かって来て嬉しいです。

はい、教科書にはいろいろ難しいことが書いてありますし、もちろんそれを勉強する意味はおおありなんですが、実際に直面する問題はオームの法則で解決することがほとんどなのかも (^^;;

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