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2014年10月 2日 (木)

サーミスタや白金抵抗温度計の自己発熱の影響を補正する方法

だいたいの温度を知りたければ温度の値を直接知ることができる温度センサーを利用するのが便利です。それなりの精度で温度を知ることができます。

  「温度センサー3種の精度比較(摂氏0度~40度編)
    白金薄膜抵抗で測った温度を基準に
      I2C温湿度センサー AM2321
      I2C大気圧温度センサー LPS331AP
      NTCサーミスタ
    で測定した温度を比較しています。

一方サーミスタや白金薄膜抵抗を使って温度を測る方法も捨てがたいものがあります。サーミスタは安価で取り扱いが楽でPICを使うと多くの観測点の温度を連続的に測定するというようなことができます。また白金抵抗(測温抵抗体)は確度の高い測定が期待できます。

ただこの二つには頭の痛い問題があります。いずれも抵抗値から温度を知るのですが“抵抗値を測る”ためには電流を流し電圧降下を測ることになります。どんなにわずかでも電流を流せば電力を消費し発熱してしまいます。そのため温度を測定すると実際の温度より高い温度を示すことになります。

サーミスタの場合は“熱拡散係数”というのがデータシートにあってこれから温度を補正することができます。これまで書いた記事ではこれを使って補正しています。
と言ってもこの熱拡散係数は特定の条件(おそらく無風の空気中)で測定したものなので実際にいろんな条件で使うとき無条件にデータシートの熱拡散係数を使うのはよくないはずです。

一方白金薄膜抵抗はサーミスタよりはちょっと大きな電流を流して使います。でも抵抗値が低いので発熱はあんまりなさそうということで補正を行っていないわけですが、実際どの程度誤差が出ているかは気になります。

<==== 現在(2015年4月)はサーミスタ 0.1mA、1V、白金測温抵抗体 1mA、0.1Vみたいなことになっていて消費電力は同じになっています (^^;;

------

あるとき温度や温度測定についてググっていろいろ読んでいるとき自己発熱に対する温度補正については簡単な方法があることを知りました。

田中貴金属工業株式会社 浜田登喜夫 - 白金抵抗温度計を用いた精密温度測定

によれば

1mAと√2mAを測定電流に選び、1mAでの測定値を2倍して√2mAの測定値を引けば、測定電流ゼロmAへの外挿値が簡単に求められる

とあります。最初、なぜ?、と思ったのですがちゃんと考えてみます。

自己発熱による測定値の誤差は発熱量に比例するはずです。特定の測定条件における正しい温度をT、サーミスタあるいは白金抵抗の抵抗をR、測定電流をI、熱拡散定数Cとすると、温度の測定値はこうなります。

  T1 = T + R * I^2 / C

電流を√2*I[mA]にして測定したときの測定値はこうです。

  T2 = T + R * ( I * √2 ) ^2 / C

上に資料にあるように計算してみます。

   T1 * 2 - T2
  = ( T + R * I^2 / C ) * 2 - ( T + R * ( I * √2 ) ^2 / C )
  =  T + R * I^2 / C * ( 2 - 2 )
  =  T

これで正しい温度が求まりました (^^)

それにしても簡単です。
どうして今までこんな簡単なことに気付かなかったかと思うと恥ずかしいです (^^;;

もっともこれを実際の回路に組み込もうとするとたいへんです。√2というのが問題で、これは測温抵抗体の場合標準が1mAちょうどだとすると1.41421mAあるいはそれ以上の精度が要求されます。
この記事は“趣味の温度測定”ですので実際には規準となる抵抗での電圧降下から電流を測定して計算することになると思います。この場合は√2=1.4でじゅうぶんでしょう。


なおサーミスタについては熱放散係数を実際に測った例があります。
  「サーミスタの自己発熱・熱放散係数を測ってみた
白金測温抵抗体については
  「白金測温抵抗体の自己発熱(熱放散係数)を測ってみた - 1
  「白金測温抵抗体の自己発熱(熱放散係数)を測ってみた - 2
  「自己発熱を測定してわかる白金測温抵抗体の扱いにくさ」 (測定失敗例)
です。

------

関連

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    PIC

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  「氷点 - 摂氏0度の作り方

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    「白金測温抵抗体の自己発熱(熱放散係数)を測ってみた - 1
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コメント

コロナでテレワークしています。
普段温度センサーやら圧力センサーを使っていて、あまり深く考えたことが無かったのですが、時間があるのでそれらの精度について深掘りしていて、ここにたどり着きました。
ついついセンサーの出している出力=真値と思いがちですが、いろいろあるんですね!
大変参考になりました。たまには、こういう時間が必要だということを強く認識しました。
ありがとうございました。

(一ヶ月経っていまさらですが)トロロッソさん、コメントありがとうございます。
こういうのって考え始めるときりがないですよね。
けっきょく「自分は今何の温度を測ろうとしてるんだろうか?」というのはつねに考えることが必要なんでしょうね。
氷点の温度を測るとき、部屋の熱がリード線を伝わってセンサーに届き実際の温度より高めに出ていたというのもありました。

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