星野写真の星像の明るさは何で決まるのか?
この記事には“勘違い”があります。記事に書かれた数値等は“実測”に基づくものですがその解釈が間違っているようです。この件については訂正記事を書くつもりでずっと放置状態で.....
基本的にどのくらい暗い恒星が写るかは望遠鏡の口径で決まります。
昼間恒星を見るときF値の大きいあるいは焦点距離の長いレンズを使いますが、これは昼間だと口径が大きいとホワイトアウト(?)してしまうので視野を全体的に暗くするためにそうしなければならないというだけで焦点距離が長いレンズで露出を長くすれば暗い恒星が写るという考え方は間違っているようです。
そのうちこれを数値的に説明する記事を書く予定です。
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これまで
「デジカメPENTAX Q7の静止画と動画の明るさ比較 」
「ISO値の設定によるラティチュードの違い」
とデジカメの感度特性を調べてきました。
この結果をもとに実際の星野写真の星像の明るさの違いが光度等級の違いと一致しているか確かめてみました。
80mmφ f=700mm F8.75と64mmφ f=180mm F2.8のレンズで撮影した画像を比較したところ次のような結果が得られました。
どちらのレンズで撮影しても画像上の星像の大きさは同じであった。
星像の明るさは口径のみによって決まっている。つまりF値は関係なかった。
この結果がどういう場合も適用できるとすれば焦点距離の長いレンズほど解像度がよいという変な結論が出てきます。つまりこれらはあくまでも私の手元にあった二つのレンズを比較した結果でしかありません。
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次のようにして調べました。
まず「動画で見るM45プレアデス」で記事にしたプレアデスをf=180mm、f=700mmで撮影した動画から20フレーム分を切り出します。
プレアデスのうち右側(西側)のq Tau、16 Tau、17 Tauの三個について「光度変化測定用ソフト Limovie」を使って星像の明るさと大きさ(半値幅)を調べます。明るさも大きさも20フレーム分の平均とします。
結果を表にするとこうなりました。
まず注目すべきなのは星像の大きさ(半値幅)がどちらのレンズで撮ったものもほとんど同じであることでしょうか。ふつうの被写体は(月や星雲を含め)レンズの焦点距離によって画像上の大きさは異なります。このあたりまえのことが恒星には通用しないようです。
また星像はF8.75のレンズで撮ったものの方がF2.8のレンズで撮ったものより明るいです。つまりF値が小さい方が画像は明るくなるという常識も恒星の場合はあてはまりません。
単に二つのレンズを比べただけですからこれから何かの結論を引き出すのはムリがありますが、幾何光学的には恒星像の明るさはレンズの口径だけで決まるということに似た結果が出ています。
もっと詳細に比較してみます。「デジカメPENTAX Q7の静止画と動画の明るさ比較 」で作成した感度曲線を使って星像の明るさから恒星の光度等級を求めます。
やり方は、まず星像の明るさをEV値に換算します。次にEV値の差を光度等級の差に変換します。これは1.33で割るだけです。17 Tauの明るさは星表(Stellalium)にある3.70等星とし光度等級の差から他の恒星の光度等級を求めてみます。
16 Tauは星表5.45等級に対しf=180mm 5.5等級、f=700mm 5.4等級、q Tauは星表4.30等級に対しいずれも4.2等級とよい一致を示しています。
またf=700のレンズで写した星像はf=180mmで写した星像に対し平均0.63EV(0.47等級に相当)明るくなっています。これは口径の差による0.64EVとこれまたいい一致を示しています。
まだまだ検証は必要ですが、この方法を使えばいろんなことに適用できそうです。
例えば
・上記のようなレンズやカメラの光学特性の確認、比較
・大気による減光の調査
・変光星の光度の決定(比較性との光度差の決定)
などです。
ところでほんとうに星像の大きさは同じだったのかと思われる方もいらっしゃいそうなので16 Tauの星像を示します。
ピクセルの大きさをご覧になるとわかるように画像を同じ縮尺で拡大したものです。
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関連
「ISO値の設定によるラティチュードの違い」
「デジカメPENTAX Q7の静止画と動画の明るさ比較 」
「デジカメのセンサー走査時間を測る方法」
「動画の撮影時刻を知る(1)」
「動画の撮影時刻を知る(2)」
「NY NEX-5Nの1/15秒露出の動画を調べてみた」
「デジカメの特性を比較する」
「振動する焦点距離」
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コメント
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そうすると焦点距離は長ければ長いほど良いということでしょうか(@_@)
でも、あまりに長いと導入が大変そうですね^^;
投稿: 惑 | 2014年10月28日 (火) 14時08分
記事に書いたようにこれだけから一般的な結論を出すのはムリだと思います。
暗い恒星を観測するのであれば口径を大きくしなければならないという常識的なことは言えると思いますが今回は焦点距離も口径も違うレンズで比較しているわけでやってることがあんまり科学的じゃありません (^^;;
F値信仰(?)から開放されたのが今回の成果でしょうか (^^)
今後の課題は星像の大きさは何で決まるのかを調べる(考える)ことでしょうか。もう一つ別のレンズでやってみれば進展があるかもしれません。
口径も焦点距離も違うレンズの星像の大きさが同じになったのはたまたまなのか、何かそうなる理由があるのか、というところを解決しなければなりません。
投稿: セッピーナ | 2014年10月28日 (火) 15時59分
もしデータが必要であれば私もお手伝いしたいので言ってください(≧∇≦)
星像で気になったのですが、今回webカメラでトラペジウムを捉える前にシリウスでファインダーを合わせてたのですが、画面に映るシリウスがとても大きく感じたことです。
センサーサイズとかって関係あります?
投稿: 惑 | 2014年10月28日 (火) 16時37分
幾何光学的には恒星は大きさがないはず。それが大きさをもつのは波動光学的な影響があるから。
と単純に考えていたのですが、それより先にシンチレーションの影響が強く出ているのかもしれません。そう考えると今回の結果は問題なく説明できます。
要するに明るい恒星ほど大きく写るわけでシリウスが大きかったのもWebカメラの感度がいいからということかもしれません。
ありがたいお言葉、感謝します。惑さんが撮られた画像も見たくなっています。あとでこの記事のこの画像のこの部分をアップしてくださいとお願いすることになると思うのでよろしくお願いします m(._.)m
投稿: セッピーナ | 2014年10月28日 (火) 16時48分
昨夜の宿題のカメラレンズで月を撮影してみました(≧∇≦)
セッピーナさんのω Leoの動画を見ていると、やっばり無理なんじゃないかと思えてきました。。。
投稿: 惑 | 2014年10月28日 (火) 18時40分
動画を拝見するかぎり行けそうな気がするんですが、不安材料もあります。最新の記事にコメントさせていただきました。
投稿: セッピーナ | 2014年10月28日 (火) 19時54分