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2014年10月22日 (水)

“ふつう”のサーミスタをウィーンブリッジ発振器のリミッタ(振幅制限)に使う方法

ウィーンブリッジ発振回路の振幅制限の一つの方法としてサーミスタを使う方法があります。
ただこの場合のサーミスタとしては“ふつう”のサーミスタは使えないとされています。確かにそうなんですがなんとか工夫して“ふつう”のサーミスタを振幅制限に使ってみたいというのがこの記事の目的です。
なお“ふつう”のサーミスタは“ディスク型”とか“温度検知用”とか言われる温度係数が高く熱拡散係数が大きいもののことをいいます。

“実践編”は
    「“ふつう”のサーミスタをウィーンブリッジ発振器のリミッタ(振幅制限)に使う方法 (2)
にあります。

けっこう面倒でうまくいくのかどうかはっきりしませんが、この方法はFETを使う方法と違い素子に非直線性がないはずで上にリンクした記事にあるように高調波歪がとても少ない波形が得られます

“正統的”な振幅制限の方法もやっています。
  「ウィーンブリッジ発振回路の歪率(高調波歪)を小さくする工夫
ただ振幅制限さえすればきれいな正弦波が得られるとは考えないほうがいいです。
  「ウィーンブリッジ発振回路の振幅制限には使えそうにないFET?

波形の美しさを求めるなら今のところナツメ球がいちばんいいようです。
  「もっとも波形がきれいなウィーンブリッジ発振回路

でも安定度が今一つでなんとかできないか試行錯誤中です。

今インダクタンスやコンデンサと抵抗を直列に接続したものに正弦波を印加し抵抗の端子電圧からインダクタンスやコンデンサの値を求めようという実験をやっています(「インダクタンスの測り方 (2)」)

こういう実験で気を使うことの一つとして印加する正弦波の品質があります。もし高調波が含まれていたら測定精度に大きな影響を与えます。

今正弦波はウィーンブリッジ発振回路で発生させようとしていますので正弦波の品質をよくするためには振幅制限が必須となります。

ウィーンブリッジ発振回路の基本
Wb_1_2
ウィーンブリッジ発振回路の発振条件は「ウィーンブリッジ発振回路の発振条件 - Excelで複素数の計算」に書いたように増幅回路部分の増幅率が3(以上)であることです。
上の回路で言えばR3/R4が2(以上)であることです。

もっとも抵抗器にもばらつきというものがあるので上のように作っても発振したりしなかったりするのでR3かR4を可変抵抗にして増幅率を調整することになります。増幅率をうまく調整すれば上のような単純な回路でもけっこうきれいな正弦波が得られることは「ウィーンブリッジ発振回路の帰還量(増幅率)と波形の関係」に書いたとおりです。

とは言ってもいちいち増幅率を調整するなんてことはやっていられませんので自動的に増幅率を調整できるようにしたくなります。

考え方は簡単で出力振幅が大きくなったらR3を小さく(あるいはR4を大きく)して増幅率を下げる、出力振幅が小さくなったらR3を大きく(あるいはR4を小さく)して増幅率を上げる、ということがやれればいいです。

電球を使うとかFETを使うとかいろいろありますがサーミスタを使うという方法があります。
Wb_2_th
出力振幅が大きくなればサーミスタに流れる電流は増え発熱しサーミスタの温度はあがります。そうするとサーミスタの抵抗値は下がるので増幅率は小さくなり出力振幅は小さくなります。出力振幅が小さくなれば同様に増幅率は大きくなって出力振幅を大きくしようとします。

いたって簡単ですが、このサーミスタには“ふつうの”つまりディスク型とも言われる温度検知用のサーミスタは使えません。出力振幅がどうのこうのと言う前に室温が上がれば抵抗が下がって増幅率が下がります。こういうサーミスタは温度係数が大きいのでちょっと室温が上がっただけで発振しなくなります。

こういう温度検知用のサーミスタはそんなに高くありません。秋月だと5個で200円で売っています。表面実装用だと200円で20個買えます。

そこでサーミスタを三個使った次のような回路を考えます。
Wb_3_thx3
これだと室温が上がってもサーミスタは三つとも同じように抵抗値が変化しますので二番目の回路のように室温が上がったら発振が止まるということはなくなります。
もっとも出力が増大してもサーミスタは三つとも同じように発熱して同じように抵抗値が下がりますのでけっきょく最初に示した抵抗で帰還回路を作ったものと何ら変わるところはなく振幅制限の機能もなくなってしまいます。

そこで一工夫します。オペアンプの出力に近いサーミスタだけ断熱材を軽く巻きつけます。こうしてもゆっくりとした室温の変化にはついていけるはずで室温が変化してもそれが増幅率に与える影響は軽微だと思います。

一方このサーミスタは熱拡散係数が他のサーミスタより小さくなりますので出力が増加してサーミスタに流れる電流が増えるとこのサーミスタは他のサーミスタより温度が高くなります。つまり抵抗値が下がります。つまり振幅制限の機能が出てくるはずです。

なんだかうまくいきそうな気がするのですがどうなんでしょう。これから実際に実験して見るつもりです。

もしうまく行ったら続きの記事を書きます。だから続きの記事がいつまで経ってもなかったら実験は失敗したものと思ってください (^^;;

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関連

  「ウィーンブリッジ発振回路の帰還量(増幅率)と波形の関係
  「ウィーンブリッジ発振回路の発振条件 - Excelで複素数の計算

  「サーミスタによる温度測定の精度
  「サーミスタ温度計の精度を調べる - 1

  「インダクタンスの測り方 (2)

  「PICのDAC(DAコンバータ)を使ってみた
  「PICのDAコンバータ(DAC)を使ってみた - 補足
  「インダクタンスの測り方

  「PCオーディオをオシロスコープ代わりに使う - 1
  「PCオーディオをオシロスコープ代わりに使う - 2
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  「I2Cデバイス・アドレス一覧
  「同じアドレスのI2Cデバイスを使う

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  「PICでI2C - MPL115A2の大気圧計算法

  「I2C大気圧センサーLPS331の驚くべき分解能
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コメント

結果を期待しています(¬_¬)
たぶん、私が買ったサーミスタはふつうのサーミスタなので、すぐに真似することは出来ませんが、後学のためにもぜひ結果を載せてください(≧∇≦)

期待したものかどうかは別としてやっぱり結果は書いた方がいいですよね (^^)
まだ“思考実験”の段階ですがすでに問題が山積しています (^^;;
あ、それからサーミスタはあくまでふつうのサーミスタにこだわっています。
惑さんの“ご褒美”にあったのと同じようなものだと思います。

あつ、ふつうのサーミスタだったのですね^^;

はい、よく「ふつうのサーミスタは振幅制限には使えない」と書いてあるのでムキになってやってます (^^;;

これから大須に行くのでサーミスタでいけそうであればあと2つ買ってきますが、つかみ具合はどうでしょうか?(≧∇≦)

まだこれからです。すみません (^^;;
惑さんが作られるんだったら実用目的ですからオーソドックスにFETでやっておいた方が安全確実だと思います (^^)

FETですね(≧∇≦)
FETならこの前購入したのがあるので、他のものを漁ってきます〜

大須、楽しんできてください (^^)
ああ~、秋葉原、行きたい (^^;;

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