ウィーンブリッジ発振回路の帰還量(増幅率)と波形の関係
ウィーンブリッジ発振回路についてはいろいろ書きましたが、この方法がお勧めです。
「もっとも波形がきれいなウィーンブリッジ発振回路 - 1」
「もっとも波形がきれいなウィーンブリッジ発振回路 - 2」
回路も調整も簡単できれいで安定した正弦波が確実に得られます。
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「惑さんのワクワク天体観察日記 - ウィーンブリッジ発振回路で発振! ■追記x2 」
によるとウィーンブリッジ発振回路がうまく発振しないとか。私も責任を感じるので急遽テストしてみました。
作った回路は惑 さんのものと同じです。帰還回路のCRは異なるので発振周波数は違います。以下R3とかR4とかいうのは惑 さんの記事に合わせてあります。
オペアンプは(JRC)072Dを使い+/-5Vで実験しています。
ちょっと変わった方法でやってみたものもあります。
「“ふつう”のサーミスタをウィーンブリッジ発振器のリミッタ(振幅制限)に使う方法 (2)」
まともな振幅制限の方法もやっています。
「ウィーンブリッジ発振回路の歪率(高調波歪)を小さくする工夫」
なお、もう一つのCR発振回路、移相型発振器については
「オペアンプで作る移相型発振回路 (1)」
「移相型CR発振回路の発振条件」
にあります。
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ほんとはウィーンブリッジ発振回路についての分析なんかも書いてみたいのですが、今は緊急事態なので省略します( ==>(「ウィーンブリッジ発振回路の発振条件 - Excelで複素数の計算」)
「電子回路実験教材の部屋 - ウィーンブリッジ正弦波発振回路」が振幅制限のやり方とか含めて実践的で参考になります。
結論だけ書くと帰還回路を通して正帰還がかかるとき__つまり入出力の位相差が0になるとき__帰還量は1/3になります。したがってオペアンプの部分が3以上の増幅率を持っていれば発振することになります。
私の作ったものではR3の抵抗値は9.92kΩでした。
オペアンプ部分の増幅率
A=(R3+R4)/R4
から
R4=R3/(A-1) = 9.92 / ( 3 - 1 ) = 4.96[kΩ]
となりますのでR4を4.96kΩかそれよりちょっと小さくすれば発振するはずです。
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A=3.00 (R4=4.956kΩ)
発振するかしないか微妙な値です。実際やってみたら発振しませんでした。
ただ電源ONした瞬間に何やら減衰する波形が見られます。時間軸を拡大してみます。
どうやら発振しようという意志はあるようです (^^)
もう少しR4を小さくしてみます。
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A=3.01 (R4=4.944kΩ)
今度は発振しました。
電源ONしてから徐々に振幅が大きくなっています。これはオペアンプの増幅率が発振するかしないかの限界をわずかに超えたところにあることを意味しています。
時間軸の拡大図
きれいな正弦波です。
(実用的にはあんまり意味がないのですが)振幅制限をしていない場合きれいな正弦波を得るためにはこの“ギリギリ”感が重要です(“ギリギリ”ですからとても不安定です。オペアンプは二個入りですからもう一個をバッファにすればいいですね)
念のためスペクトラムもチェックします。
まったく問題ありません。先日PICのDACで正弦波を作ろうと苦労したのがバカみたいです
<== その後いろいろやっているのですが“実用性”を考えるとPICのDACの方がよさそうです。すみません。
「ウィーンブリッジ発振回路の振幅制限には使えそうにないFET?」
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A=3.10 (R4=4.734kΩ)
増幅率が大きい=帰還量が大きい、の電源を入れたらすぐに一定の振幅に達します。
波形は省略してスペクトラムだけ示します。レベルはそんなに高くないもののすでに高調波がはっきりとわかる状態になっています。
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A=3.31 (R4=4.301kΩ)
このくらいになると帰還量たっぷりなので振幅が大きくなりますが、波形も目に見えてきたなくなります。
ちょっと正弦波とは言いかねる状態になります。偶数次の高調波が出ており上下対象でないことがわかります。波形を見ればすぐにわかることですが。
(「ウィーンブリッジ発振回路の発振条件 - Excelで複素数の計算」に続く)
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関連
「“ふつう”のサーミスタをウィーンブリッジ発振器のリミッタ(振幅制限)に使う方法」
「ウィーンブリッジ発振回路の帰還量(増幅率)と波形の関係」 (この記事)
「ウィーンブリッジ発振回路の発振条件 - Excelで複素数の計算」
「PCオーディオをオシロスコープ代わりに使う - 1」
「PCオーディオをオシロスコープ代わりに使う - 2」
「PCオーディオでサンプリングスコープ - 1」
「PICのDAC(DAコンバータ)を使ってみた」
「PICのDAコンバータ(DAC)を使ってみた - 補足」
「インダクタンスの測り方」
参考
「きむ茶工房ガレージハウス - PICの内蔵DAC機能を動作させて見る」
関連
「I2Cデバイス・アドレス一覧」
「同じアドレスのI2Cデバイスを使う」
「PICで平方根 - 白金薄膜抵抗で温度を測る」
「PICでI2C - ADコンバーター・MCP3425の使い方」
「PICでI2C - MPL115A2の大気圧計算法」
「I2C大気圧センサーLPS331の驚くべき分解能」
「I2C大気圧温度センサーLPS331 - 海面更生気圧を気象庁とくらべてみた」
「I2C大気圧センサーLPS331の分解能はほんとうに高いのか?(温度編)」
「PICでI2C - 1 (温度計を作る)」
「PICでI2C - 液晶(LCD)ディスプレイ(ACM1602N1-FLW-FBW)に表示する」
「PICでI2C - LCD(液晶)ディスプレイによる違い」
「サーミスタによる温度測定の精度」
「サーミスタ温度計の精度を調べる - 1」
「PICで作るお手軽サーミスタ温度計」
「炭素皮膜抵抗の温度係数を測定する話」
「ミニ恒温槽の作成に向けて - 1」
「ミニ恒温槽の作成に向けて - 魔法瓶の活用」
参考
「きむ茶工房ガレージハウス - PICの動かせ方入門はこちら - 16F1938覚書」
「きむ茶工房ガレージハウス - I2C通信の実験」
「きむ茶工房ガレージハウス - 気圧センサーで大気圧と標高を測定して見ます(MPL115A1)(MPL115A2)」
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コメント
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ありがとうございます(≧∇≦)
これが発振した状態なのですね( ̄O ̄;)
確かに波形がきちんと出てますね、、、
もう一度、今夜か翌朝あたりに挑戦してみます。
投稿: 惑 | 2014年10月10日 (金) 10時08分
あっ、ちなみに電源は電池ですか?
投稿: 惑 | 2014年10月10日 (金) 10時09分
(振幅制限をしない場合)電源を入れて徐々に振幅が大きくなり0.1秒~1秒くらいで一定の振幅に落ち着くのがR4の適切な値だと思います。
電源は電池(1.2V*4)から±5Vを作って使っています。
投稿: セッピーナ | 2014年10月10日 (金) 10時22分
電源ONする前のところをすごく拡大するとノイズってでてます?
投稿: 惑 | 2014年10月10日 (金) 10時59分
それとわかるノイズはなかったと思います。
電池を使ってますからこの程度でノイズが乗ったらそれはそれで問題です (^^;;
投稿: セッピーナ | 2014年10月10日 (金) 13時20分
先生、また質問です(;ω;)
よろしくお願いします。
投稿: 惑 | 2015年1月13日 (火) 23時28分
今コメントさせていただきました。
違ってそうならコメ返いただければと思います。
投稿: セッピーナ | 2015年1月13日 (火) 23時57分