光度変化測定用ソフトLimovieで見る星食観測結果(2014.10.15 ZC1029)
天文が趣味の人は天文というのは科学の一分野だと受け取っていると私はずっと思っていたのですが意外とそうでもないようです。
念のために書いておきますが科学が何より優れているというようなことを言っているわけではありません。これについては学生の頃読んだファインマンの著書に書いてあったことを思い出します。宗教も音楽も数学も科学ではないですがそれらを無価値だと思う人はいないでしょう。
私は天文というのは科学の一分野だと思っているのでほよほよさんが「皆既月食の最長時間を概算する 」(のコメ返)に書かれていたように客観性=再現性というのはとても重要なことだと思っています。
星食をビデオに記録するというのもそのためにやっています。さらにビデオで撮影したものを分析するためにはビデオを見てここで消えたようだと目で見て判断することとともにそれを数値化して誰が見ても、ああなるほどここで消えたんだ(現れたんだ)、と思っていただけるようにすることも重要だと思います。
とは言ってもこの数値化というのが曲者でどうかすると目で見て判断するより怪しいことになったりもしますが....
今回は「光度変化測定用ソフト Limovie」を使って星食の動画を分析することについて書きます。
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一昨日のZC1029の星食
「星食観測報告(2014年10月15日早朝/5.3等星)」
「(訂正版)星食観測仮整約結果(2014.10.15 ZC1029)」
をLimovie(「光度変化測定用ソフト Limovie」)を使って“数値化”してみました。
Limovieの入力はAVIである必要があります。デジカメで撮影した動画をそのままAVIにしたりするととんでもないことになるので潜入/出現の起きた部分だけ抜き出して分析することになります。
グラフの中で赤い丸で表されている点のある54フレーム目が「星食観測報告(2014年10月15日早朝/5.3等星)」の記事にある5010フレーム目に相当しています。
前記事では54フレーム目までは星像は見えず55フレームで出現というような感じで書いてしまいましたが、54フレームでなんとなく星像が見えているような気がして気になっていました。
このグラフを見るとそれが星像かどうかはともかく星像が出現した位置が少し明るくなっているのは確かなようです。
40フレーム目前後にこれより明るいところがありますのでそれだけでこれを星像と言い切るのはちょっとムリがあると思いますが....
とは言えこれだけ明暗差があれば54フレームが星像のない最後のフレーム、55フレームが星像のある最初のフレームと判断することになんら問題はないと思います。
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ところでLimovieには“Difraction”というボタン(機能)があります。月にたいして恒星が潜入あるいは出現するとき恒星の光は月縁で回折するので恒星の光量は単純に増加(あるいは減少)するわけでもないです。
回折によって予想される恒星の光量の変化とビデオ画像の光量の増減を付きあわせて分析することによってより正確に(つまり動画のフレームレートで決まる時間間隔を超えて)星食の時刻を特定しようというのがこの機能です。
これは恒星と月の相対速度とか撮影に使用したCCDの特性とかいろんな要素が影響するのでそういうところをちゃんと設定する必要があります。設定できるものならいくら複雑でもやってみたいのですが残念ながらデジカメで撮影されて動画は対象と考えられていないようです。
しようがないので適当に設定して(というか設定はほとんどさわらず)“お遊び”でやってみました。
結果は54フレームの録画開始時刻+7ms±3msということになっています。
つまり星食の時刻は
20h00m14.409±0.003sUT
だったということになります。
上に書いたようにこれはあくまでも“お遊び“でこの結果はJCLOに報告できるようなものではないのですがビデオによる動画観測の可能性を示すものではあると思いますしデジカメで撮影した動画にこの機能を適用できないものか研究(?)はしてみたいと思っています。
なお、この件についてLimovieを使って別の切り口で考えたものが
「星像の有無を調べる - LimovieのFWHM」
にあります。
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掩蔽の予測と観測全般については
『「掩蔽(星食)の予測と観測」記事目次とリンク集』
に、2014年10月の星食の予測については
「2014年10月の星食(掩蔽)予測(予測図作成機能つき)」 (予測用Excelシート付き)
にあります。いずれの記事にも参考となるサイトへのリンク等ついています。
それから星食など日時が逃せないものはツィートすることにしました。
@Seppina1
Twitterのリンクの張り方がよくわからなくて (^^;;
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コメント
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ここ何個かの記事は、なんというか私を励ましていただいているようで、ありがたいです(涙)
星食の動画解析用のこんなソフトがあったとは知りませんでした。
それが適用できる動画を撮ったということがまたすごいですね。
私も1つ前のフレームに少しだけ光が漏れてるような気がしてました。完全に見えているフレームがなかったらその場所だとは気が付かないレベルでしたが。
Difractionは、それをある意味補間推定するわけですね。
投稿: ほよほよ | 2014年10月17日 (金) 08時47分
はい、恒星が潜入/出現するとき月縁での回折でけっこう複雑な光量変化をするのですがその光量変化曲線と実際に撮影された光量変化を比較して(フィットさせて)ビデオのフレームレートの限界を超えて掩蔽の時刻を特定しようというやり方ですね。
回折の影響がどう出るかは恒星(の光の経路)と月の相対速度や月縁のなす角度がわかっていなければならないということとカメラの感度特性がわかっていなければならないので面倒です。
前者はちゃんと計算してくれるソフトがあるのでそれを使えばいいのですが、後者がかなりやっかいです。カメラの感度特性がわかってもLimovieを作った方にこの感度曲線をオプションに追加してください、ということになりそうです。
ほよほよさん、こういうの作ってください (^^)
投稿: セッピーナ | 2014年10月17日 (金) 11時23分