オペアンプで作る移相型発振回路 (1)
ときどき“位相型発振器”なんて検索ワードがあるんですが、きっとこれのことなんでしょう。
「電子回路基礎」というような本を読むとウィーンブリッジ発振回路とともに必ず書いてある回路です。
そのわりに製作記事はあんまり見かけないような気がします。ウィーンブリッジ発振回路が抵抗、コンデンサーそれぞれ2個でいいのに対しこっちは3個ずつ必要です。発振周波数を自由に変えたいときなんかちょっと面倒です。三連可変抵抗とかどこに売っているんだろうというようなものが必要になりますから。
とは言え探せば製作記事はあるわけで一つ紹介しておきます。
「JKP's ROOM - 移相型発振回路の実験」
ではさっそく考察から始めます。
発振器というのはいろいろありますが増幅器にたっぷり正帰還をかけるというのも一つの方法です。
ウィーンブリッジ発振回路は非反転増幅器に同相の信号を帰還する方法でしたが、移相型発振回路は反転増幅器に逆相の信号を帰還する方法です。そしてこの逆相の信号をCRの組み合わせで作ります。「ハイパスフィルターの特性・位相をリサジュー図形で見る」にある画像を見れば感じがつかめると思いますがCRでの位相の変化は0度より大きく90度より小さいです。つまりCR二組では180度の変化はないわけで最低でもCR三組が必要になります。
昔トランジスタだかFETだかで移相型発振回路を作ったのですがなかなかうまく発振しませんでした。ウィーンブリッジ発振回路は「ウィーンブリッジ発振回路の発振条件 - Excelで複素数の計算」に書いたように増幅率が3で発振しますが移相型発振回路はこれが29くらいだったと思います。素人にはなかなか敷居が高いです。
ボルテージフォロワー使用禁止、とか、20dB以上で使ってください、などというオペアンプを使う絶好のチャンスですが
基本的な回路はこうなります。
位相が180度変化すればいいだけですからこうでなくてもいいわけですが、この記事はこれをもとに考えていきます。
教科書だと出力側は増幅器にトランジスタやFETを使うのを前提に定電流源に負荷抵抗が接続されている形に書いてあったりしますが、ここでは増幅器は入力インピーダンス無限大,出力インピーダンス0を前提にしています。
さてこれをオペアンプで作るわけですが、ちょっと問題があります。ウィーンブリッジの場合は非反転増幅回路を使うので実質無限大の入力インピーダンスは簡単に実現できるのですが、この場合反転増幅回路なのでそうは行きません(もちろん入力インピーダンスが無限大である必要はないのですが素人はものごとを単純にして考えた方がいいと思います)
オペアンプを二つ使ってボルテージフォロワー+反転増幅回路の構成もあります__あとのことを考えるとその方がいいような気もします__がここではウィーンブリッジ発振回路を作ったときの残りの一個で作ることを考えます。
A点から右を見ると単にR3を通して接地してあるだけですし、出力は A点の電圧にR4/R3を掛けたものになりますから、この回路は上にあげた概念図(?)と同じことになります。
ただR3を、移相回路の位相を決める、オペアンプの増幅率を決める、の二つの目的で使っていることになりますから、どちらか変更するとなるといろいろ考えなくてはならなくなります。
R4は30kΩあたりを中心に調整できるようにしておきます。
R4をていねいに調整した上で発振波形のスペクトラムを見てみました。
こういう状態は不安定でやっぱりちゃんと振幅制限が必要になりますが、上の回路だとちょっと面倒そうです。
やっぱり“ボルテージフォロワー+反転増幅回路”がいいかも....
移相型発振回路の発振条件については
「移相型CR発振回路の発振条件」
に示します。
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関連
「ウィーンブリッジ発振回路の帰還量(増幅率)と波形の関係」
「ウィーンブリッジ発振回路の発振条件 - Excelで複素数の計算」
「“ふつう”のサーミスタをウィーンブリッジ発振器のリミッタ(振幅制限)に使う方法」
「“ふつう”のサーミスタをウィーンブリッジ発振器のリミッタ(振幅制限)に使う方法 (2)」
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「PICのDAコンバータ(DAC)を使ってみた - 補足」
「インダクタンスの測り方」
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