ウィーンブリッジ発振器の振幅制限には使えそうにないCdS
“使えそうにない”と書いたのですがぜんぜん使えないわけではないです。
実際CdSを使って振幅制限をしている回路の製作例を書かれている方もいらっしゃいます。
ただ振幅制限をする目的はできるだけ美しい正弦波を得るためだと思います。そう考えるとCdSってどうなんだろう、というのが私の感想です。
調べてみるとFETに比べてCdSは直線性が良好であるとした資料もありましたので、FETのときと同じような方法で直線性をチェックした上であらたに記事を書く予定です。
CdS=硫化カドミウムセル、硫化カドミウム光導電セル
Wikipediaだと“フォトレジスタ”という項目になっています。
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もっともFETを使えば解決かというとそうでもないです。
「ウィーンブリッジ発振回路の振幅制限には使えそうにないFET?」
波形の美しさを求めるなら今のところナツメ球がいちばんいいようです。
「もっとも波形がきれいなウィーンブリッジ発振回路」
でも安定度が今一つでなんとかできないか試行錯誤中です。
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CdSの特徴は光が当たれば抵抗値が小さくなることです。これを利用すればウィーンブリッジ発振回路の振幅制限ができそうです。
CdSをリミッタに使うとすればこんな回路になると思います。“出力が大きくなると抵抗値が小さくなる”のですから非反転増幅回路の帰還抵抗をCdSと置き換えます。
使っているのは秋月で売っているアナログフォトカプラです。
上の回路はちゃんと発振しますし振幅にもリミッタが効きます。
念の為に書いておくとFETのときみたいに整流した電流をコンデンサで平滑する必要はないです。CdSのレスポンスはよくないためです。
発振はしたもののスペクトラムがヘンです。
適当に回路定数を決めても高調波がほとんど見られないサーミスタ版(「“ふつう”のサーミスタをウィーンブリッジ発振器のリミッタ(振幅制限)に使う方法 (2)」)や注意深く回路定数を選べば高調波を抑えることができたFET版(「ウィーンブリッジ発振回路の歪率(高調波歪)を小さくする工夫」)と比較すると明らかに高調波が多いです。
これ、どうしてなんだろうとけっこう悩みました。CdSが“光量で抵抗値が変化する抵抗”ならばサーミスタ同様ほとんど高調波は出ないはずです。
いくらレスポンスが悪いとしても上のような回路であれば出力の波形がいくぶんかはCdSの抵抗値にフィードバックされてヘンなことになっているのではないかとも考えいろいろやったりしました。
でもそういうことでもなさそうで“CdSの直線性”に問題があるのではないかという気がしてきました。
いろいろ調べたら
「硫化カドミウム光導電セルの応用」
に行き着きました。
この論文の図3あるいは(4)式を見るとCdSというのはオームの法則が成り立つ“抵抗”とはちょっと違うようです。
回路を工夫すれば高調波を少なくすることはできそうなのでもう少しやってみたいと思いますが.....
使っているCdSの特性をちゃんと確認した上でまた記事にしたいと思います。
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関連
「ウィーンブリッジ発振回路の帰還量(増幅率)と波形の関係」
「ウィーンブリッジ発振回路の発振条件 - Excelで複素数の計算」
「“ふつう”のサーミスタをウィーンブリッジ発振器のリミッタ(振幅制限)に使う方法」
「“ふつう”のサーミスタをウィーンブリッジ発振器のリミッタ(振幅制限)に使う方法 (2)」
「ウィーンブリッジ発振回路の歪率(高調波歪)を小さくする工夫」
「PCオーディオをオシロスコープ代わりに使う - 1」
「PCオーディオをオシロスコープ代わりに使う - 2」
「PCオーディオでサンプリングスコープ - 1」
「ハイパスフィルターの特性・位相をリサジュー図形で見る」
「インダクタンスの測り方 (2)」
「インダクタンスの測り方」
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コメント
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どうやってCdSをリミッタに使うんだろうと思っていたら、フォトカプラが出てきて膝を叩きました!
フォトカプラを帰還に使うとは思ってもいなかったので新鮮な驚きです。たいていは回路どうしをアイソレートするのに使うものだとばかり・・・面白いです^^。
投稿: ほよほよ | 2014年11月14日 (金) 08時49分
CdSのフォトカプラはレスポンスが悪いので私の場合ほとんど使い道がないのですが、こんなところで活躍(?)してくれました (^^;;
入出力が絶縁されたスイッチング・レギュレータの電圧制御用のフィードバックなんかにも使うらしいです(これはフォトトランジスタの方ですが)
投稿: セッピーナ | 2014年11月14日 (金) 09時32分