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2014年11月12日 (水)

ウィーンブリッジ発振回路の歪率(高調波歪)を小さくする工夫

正弦波の発振器としてよく使われるFETを振幅制限に使ったウィーンブリッジ発振回路で高調波をできるだけ少なくするにはどうしたらいいかということを考えてみました。

高調波が出る原因は言うまでもなく回路の非直線性にあります。振幅制限をするのも回路の直線性が保たれている部分だけを使うようにするのが目的です。振幅制限をなつめ球とかサーミスタとかCDSなどを使えばそんなに問題ないでしょうがよくみかけるFETを使ったものだとFET自身の非直線性から高調波歪が発生してしまいます
(「ウィーンブリッジ発振回路の振幅制限には使えそうにないFET?」参照)

波形がきれいなことを優先させるのだったらCdSの使用はちょっと問題がありそうです。
  「
ウィーンブリッジ発振器の振幅制限には使えそうにないCdS


この高調波歪を小さくするための工夫について書いてみます。

サーミスタを使ったケースでは

  「“ふつう”のサーミスタをウィーンブリッジ発振器のリミッタ(振幅制限)に使う方法 (2)

にあるように高調波がほとんど見られないようなものが作れていましたのでこのくらいを目標にします。

波形の美しさを求めるなら今のところナツメ球がいちばんいいようです。
  「もっとも波形がきれいなウィーンブリッジ発振回路

でも安定度が今一つでなんとかできないか試行錯誤中です。

=========

まずふつう使われる回路はこんなものです。
Wbfet

ウィーンブリッジ発振回路の発振条件としてオペアンプ部分の増幅率が3と言うのがあります。この場合 R3 / ( R4 + FETの抵抗) が2となれば発振することになります。FETのゲートには出力を検波した(負の)電圧がかかっています。
出力が大きくなるとゲート電圧は下がり抵抗が大きくなって回路の増幅率を下げる方向に働きます。増幅率がちょうど2になるような振幅のところで落ち着くということになります。

R3C3あるいはR6C3の時定数は発振周波数の周期に対して十分大きくとります。R3を小さめにして振幅の増大には機敏に対応、R6はちょっと大きめにして振幅が小さくなりすぎたときは徐々に回復というような設定がよさそうです。発振させたい最低の周波数にもよりますがC3が1uFとしてR6は100k~1M、R3はそれより一桁くらい小さめというようなところが一般的なようです。

こういう使い方をするときFETはドレインソース間の電圧を小さく保つ方が直線性はいいようです。となるとR4とR5はちょっと大きめにしておいた方がよさそうです。FETのゲートソース間電圧が0Vのときドレインソース間の抵抗を測ってみたら300~400Ωくらいでした。とすればR4,R5は数十kΩくらいにすればいいと思います。

今回はちょっと大きめにR5を100kにしてみました(使っているオペアンプがFET入力のものなのでこのあたりの抵抗は安心して大きくできます)

となるとR4は50kΩをちょっと切るくらいのものが必要でまず100kの可変抵抗を中点あたりで使ってやってみることにしました。

R4を発振する状態からじょじょに抵抗値を大きくしていきます。こうするとあるところで発振しなくなりますのでその手前で寸止めします。
こうするとFETにかかる電圧は大きくないのできれいな正弦波が得られるはずです。

ただこれでは問題があります。こうやって調整すると出力振幅がとても小さくなると思います。そこで回路をちょっと変更します。

Wbfetvr

何をやっているかというと出力を検波した電圧がそのままゲートにかからないようにして振幅が大きくなったときの振幅制限を遅らせようというわけです。

こうすることによってFETのドレインソース間電圧をできるだけ小さくするということと振幅を変化させるということが独立して調整できるようになります。

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なおこの振幅制限(利得制御)に使うFETの直線性は“実用”でも問題になるわけでいろんな研究・工夫が行われているみたいです。例えばこういうものもありました。

  「FETを 用いた利得制御 回路 - J-Stage

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実際やって見た結果です。
Wbfetvrwave

リサジューはあんまり調整せずにやった

  「ハイパスフィルターの特性・位相をリサジュー図形で見る

のときと比べるとずいぶんときれいな楕円になっています。

スペクトラムを見てみます。
Wbfetvrsp

非直線性がないはずのサーミスタを使った

  「“ふつう”のサーミスタをウィーンブリッジ発振器のリミッタ(振幅制限)に使う方法 (2)

とくらべてもそれにおとらない高調波の少なさです(50Hzのところは電源のノイズです。本筋とは関係ないのですが実際に使うとしたらこのあたりはもう少しどうにかした方がよさそうです)

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実際にやって見るとR4やR6の調整がけっこう面倒です。これで広い周波数範囲で安定して使うのはなかなか難しいところがあります。
特定の周波数で高調波を徹底的に抑えたいという場合には有効と考えた方がいいかもしれません。

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関連
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  「“ふつう”のサーミスタをウィーンブリッジ発振器のリミッタ(振幅制限)に使う方法
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