バーナード星は動いているか? - 3 - その固有運動と年周視差を測定する
バーナード星の固有運動を測定するためには写真からその正確な位置を測定する必要があります。その具体的な方法については前記事
「バーナード星は動いているか? - 2 - その固有運動と年周視差」
に書きました。
ところでバーナード星は実際にはどの程度動いているものでしょうか?
ヒッパルコス星表から具体的な動きを算出してみました。
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「月の赤経・赤緯・地心距離を求める(海洋情報部の計算式) 2015年版」からダウンロードできるExcelファイルの中に「恒星の視位置」を計算するシートがあります。視位置を計算するためにとうぜん固有運動も計算しています。これで実際に計算した結果をグラフにしてみました(この計算はいわゆる厳密計算でやっていますがバーナード星は赤道付近にあるので簡略計算でやっても結果はたいして変わらないと思います)
バーナード星の固有運動はほとんどが赤緯方向で赤経方向の成分はほとんどありません。
このグラフだとけっこう動いているように見えるかもしれませんが、グラフは一目盛りは0.0002度でしかありません。これはサダルテミスさんの使われている機材(f=1950mmの反射鏡にAPC-Cのカメラ)をもってしても一目盛りはだいたい1ピクセルにすぎません。
念のために書いておくと上のグラフはJ2000.0による座標です。視位置でグラフを作ってしまうと歳差による動きがこの100倍くらいの大きさあり、さらに年周光行差による動きがそのまた2倍くらいあって固有運動による動きはまったくわからなくなってしまいます(参考「恒星視位置(赤経・赤緯)計算が間違ってました!」のグラフ参照)
星像の大きさは10ピクセルとかふつうにありますので目視でピクセル単位あるいはそれ以下の精度で座標を読み取るのはたいへんです。前記事に書いたような方法をとるのはこれも理由の一つです。
これまでの経験からするとほよほよ さんのアプリ(詳細は「「写真から星の座標を得る」アプリ」)を使えば星像位置を0.5ピクセルあるいはそれよりもっと高い精度で画像から読み取ることができます。
とすれば一ヶ月も間をおいて撮った写真があればバーナード星の固有運動を検出できるはずです。上のグラフにある月日が実際にサダルテミスさんが写真を撮られた日であり、これらの写真からバーナード星が動いていることを明確に示すことができるはずです。
(「バーナード星 - 固有運動の実測値」へ続く)
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