アマチュアでも固有運動や年周視差が観測できそうな恒星(1) シリウス
前記事「バーナード星の年周視差が検出できた!?」に書いたようにサダルテミスさんが半年間に撮影された4枚の写真から固有運動だけでなく(まだ半信半疑ですが)年周視差も検出できました。
ただ私みたいな天文初心者にはバーナード星は敷居が高いです。まず「望遠鏡をどこに向ければいいのか」でつまずきます。そこでもっと簡単に固有運動や年周視差が観測できそうな恒星を探すことにしました。
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まず最初に頭に浮かんだのはシリウスです。街灯の下で夜空を見上げてもシリウス(と木星)はすぐに見つかります。探す手間が不要です。
どの程度の動き(=他の恒星に対する相対的な動き)があるか調べてみました。
シリウスの座標を間違っていて動きが実際とは異なるものになっていました。
座標を正しグラフを作りなおしたものと差し替えました。
このグラフはシリウスの来年一年間の動きを示します。左上の方から右下の方へ動いていきます。タツノオトシゴみたいなのが実際の動きです。直線の方は年周視差がないと仮定した場合の動きを参考までに書き入れたものです。
座標系はJ2000.0で目盛りの間隔は0.0002度です。この0.0002度というのは度分秒で言うと0.72秒です。f=1,600mmのレンズ(反射鏡)で写真を撮ったときの1ピクセルくらいに相当します(これはもちろんどんなカメラを使うかで違ってきます)
これだけ見るとどのくらいの動きかよくわからないのでバーナード星の動き(ただし半年分、マークも一月ごとではありません)を同じ縮尺で見てみます。
さすがに固有運動の大きさはぜんぜん違います。バーナード星の場合1500mmくらいのレンズだと2ヶ月くらいあれば画像を目で見てもはっきりわかるくらいの動きがあります。それから考えるとシリウスの場合2年、最低でも1年は時間をおく必要がありそうです。
ただ年周視差はバーナード星とシリウスでそんなに違うわけではありません。となるとシリウスの場合は固有運動より年周視差の方が観測しやすいかもしれません。
シリウスも固有運動はどちらかというと赤緯方向の動きが主です。グラフを見るとシリウスの赤経は4月頃もっとも小さくなり、9月頃に最も大きくなります。となると春先の西空のシリウスと秋の明け方のシリウスを撮り続けると年周視差のせいでジグザグに進むシリウスのアニメが作れるかもしれません。固有運動が小さいぶん年周視差による“ゆらゆら”はバーナード星よりわかりやすそうです(動きは三角波ではなく鋸歯状波的になりそうです)
シリウスには懸念材料があります。
明るすぎます。位置を比較するために周辺の微光星といっしょに撮るとなると巨大な星像ができあがってしまいそうです。大きなものがちょっと動いたくらいではその動きがよくわからなくなってしまうかもしれません。
私の場合はこれまで記事にしたようにアニメを作ることより位置を算出してその変化を調べるという方法をとります。この場合は星像の位置測定に使っているほよほよさんのアプリ(詳細は「写真から星の座標を得る」アプリ)がシリウスの巨大な星像に適用できるかというのがポイントになりそうです。以前聞いたお話では(星像の)「中央部分の輝度が広領域で飽和してる」のはまずいようです。
まあ考えていてもしようがないので、これまで撮った写真を探したり実際に撮ったりしてみたいと思っています。
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関連
「バーナード星・記事一覧」
「バーナード星は動いているか? - 1」
「その後のバーナード星」
「バーナード星は動いているか? - 2 - その固有運動と年周視差」
「バーナード星は動いているか? - 3 - その固有運動と年周視差を測定する」
「バーナード星 - 固有運動の実測値」
「固有運動だけでは説明できないバーナード星の動き」
「「バーナード星の固有運動は何日でわかるか?」ランキング」
「バーナード星の年周視差が検出できた!?」
「写真から未知の天体の赤経・赤緯を求める (1)」
「写真から未知の天体の赤経・赤緯を求める (2)」
「「写真から星の座標を得る」アプリ」
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