16bitADコンバータMCP3425とPICで作る白金測温抵抗体(白金薄膜抵抗)温度計 - 回路編
「(趣味の)白金抵抗温度計の製作 - 準備編」を書いたあとそのままになっていました。
理論編、回路編、プログラム編と続く予定だったのですが、今回はこのうち回路編に相当するものになります。
その後
「(白金)測温抵抗体(白金薄膜抵抗)の使い方 - 基礎編というか入門編というか....」
という記事を書いています。はじめて使う方はこちらからご覧になった方がいいかと思います。抵抗値から温度の計算法や誤差の評価など基本的なことをまとめてあります。
白金抵抗温度計はとても精度の高い測定ができるのですが、ここで作るのは白金薄膜抵抗を使ったあくまで“趣味の”ですからあんまり精度には期待しないでください。それでもきちんと作れば0.1度の確度、0.03度くらいの分解能は得られます(これは“目標”です。実際に作ろうとするといろいろ問題が発生してたいへんです)
なおこの記事にある回路はもっとも単純なものです、もう少しがんばると使いやすいものができます。
「サーミスタ/白金測温抵抗体/pn接合による温度測定のための定電流電源(バイラテラル回路)」
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回路自体はそんなに複雑なものではありません。
ただ注意すべきところがいくつかあります。「(趣味の)白金抵抗温度計の製作 - 準備編」と重複するところもありますが....
いちばん重要なのは白金(薄膜)抵抗へ電流を流すための配線と電圧降下を測るための配線をきちんと分離することです。これをしないと配線での電圧降下も白金薄膜抵抗の電圧降下として扱ってしまうため実際よりずっと高い温度が表示されてしまいます。
これは無視できる誤差ではすみません。
R1は誤差が小さいものを選ぶか精度の高いDMM等で抵抗値を実測します。ただ0.5%のものとかふつうのDMMで測ったくらいでは必要とする精度にはなりません。これは他の部品についても同じです。これに対する対策=調整のやり方、考え方=は「理論編」で書く予定です。ただ温度係数はできるだけ小さいものを選びます。私が使っているのはLinkmanの±0.5%、温度係数25ppmの10kΩ金属皮膜抵抗を二個並列にしたものです(こうしたのは単に5kΩのものが手元になかったからです。許容誤差の小さい抵抗はそれなりのお値段なのでいろんな抵抗値を手元にストックしておくというのはたいへんです)
「精密抵抗のお値段 - 抵抗器の精度と価格の関係」参照
基準電圧源は回路図ではツェナーダイオードになっていますが、実際に使っているのは「高精度マイクロパワー・シャント型基準電圧 LM4040AIZ-4.1/NOPB」です。
4.096V、±0.1%で温度係数は100ppmのものです。これもできるだけ精度・温度係数が良好なものを探します。
肝心の白金薄膜抵抗は秋月で買った
超小型 白金薄膜温度センサ R0K1.232.6W.B.008(100Ω)
0℃における許容差:R0±0.12%(DIN B)
0℃を基準とした100℃での抵抗温度係数α:3850ppm/℃±13ppm
というものです。
このセンサ自体の誤差について考察(?)した記事が「(趣味の)白金薄膜抵抗温度計の作り方 - 誤差について」にあります。
今回は自己発熱を計測するための回路は組み込んでありません。白金薄膜抵抗はサーミスタほどの発熱はないので0.1度の精度が目標であれば考えなくてもいいだろうという判断です。そのうちちゃんと測ってみたいとは思っています。
「サーミスタや白金抵抗温度計の自己発熱の影響を補正する方法」参照
こんな基板に組み立ててあります。
次はこの回路を前提にプログラムを紹介したいと思います。
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参考
「白金抵抗温度計の校正とその使い方 - JCSS:計量法認定」
「はじめての精密工学 - 白金抵抗温度計を用いた精密温度測定」
「JEMIC 計測サークルニュースVol.26, No.2 ~ 4 連載(1997) - 浜田登喜夫 - 白金抵抗温度計の校正とその使い方」
関連
「記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」
“温度”について
「PICで作る温度計のセンサー比較(I2C/SPI温度センサ、サーミスタ、熱電対、白金測温抵抗体、pn接合など)」
「正確な温度を求めて (1)」
「温度センサ(サーミスタ・熱電対・(白金)測温抵抗体)の誤差」
「16bitADコンバータMCP3425とPICで作る白金抵抗温度計 - 1」
白金測温抵抗体(白金薄膜抵抗)について
「(白金)測温抵抗体(白金薄膜抵抗)の使い方 - 基礎編というか入門編というか....」
「(趣味の)白金抵抗温度計の製作 - 準備編」
「(趣味の)白金薄膜抵抗温度計の作り方 - 誤差について」
「16bitADコンバータMCP3425とPICで作る白金抵抗温度計 - 1」
とても単純な回路です。
「サーミスタ/白金測温抵抗体/pn接合による温度測定のための定電流電源」
ちょっと複雑になりますが、使いやすい回路です。
“素人”でもできる校正について
「氷点 - 摂氏0度の作り方」
「氷点・摂氏0度の作り方と使い方 - センサーの位置と温度の関係」
「体温計と魔法瓶で校正する白金測温抵抗体 - 36.5度編」
「Pt100(白金測温抵抗体)の校正状況 - 氷点=0.0℃編」
「脇の下恒温槽と体温計で白金抵抗温度計を校正してみた」
恒温槽について
「恒温槽 - 温度を一定に保つアルゴリズム - 1」
自己発熱について
「サーミスタや白金抵抗温度計の自己発熱の影響を補正する方法」
「白金測温抵抗体の自己発熱(熱放散係数)を測ってみた - 1」
“測定装置”について
「PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計+周波数カウンタ(技術要素一覧)」
「PIC+SPI+I2C 自記温湿度計+気圧計+8ch電圧計のソース - main()」
電圧の測定について
「PICでI2C - ADコンバーター・MCP3425の使い方」
「22ビット(20.6bit)ADコンバータMCP3553の使い方」
「PIC18F26K22でSPI - 8ch/ADコンバータ MCP3208の使い方(ソース付き)」
抵抗比を測定するための抵抗器について
「精密抵抗のお値段 - 抵抗器の精度と価格の関係」
「金属皮膜抵抗と炭素皮膜抵抗の温度係数を測ってみた - まとめ」
定電流回路(電圧電流変換回路)について
「サーミスタ/白金測温抵抗体/pn接合による温度測定のための定電流電源(バイラテラル回路)」
測定した結果を表示することについて(いずれもI2Cデバイスです)
「I2Cのソース - PIC12F1822/16F1705/16F1938/18F26K22 - LCD(ACM1602)を例にして」
「I2C薄型液晶ディスプレイ(LCD)・AQM1602XAの使い方」
測定した結果を保存することについて
「PICでSPI SDカードを読み書きする」
サーミスタについて
「サーミスタで温度を測る - 温度と抵抗値の相互変換 - B定数について」
「PICで作るお手軽サーミスタ温度計 (2) - ソース付き」
熱電対について
「熱電対による温度測定の課題 - K型+インスツルメンテーション(計装)アンプ編」
pn接合について
温度係数
「pn接合順方向電圧(VBE)の温度係数を測ってみた(高精度版)」
「pn接合の順方向電圧(VBE)と温度の関係 -1」
「pn接合の順方向電圧(VBE)と温度の関係 -2 測定方法」
電流-電圧の関係について
「ログアンプ - ベース電流(IB)とベース電圧(VBE)の関係」
「pn接合の理想係数を測る」
放射温度計
熱力学温度計
「記事一覧(測定、電子工作、天文計算)」の表に参考となる資料へのリンクがあります。
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