アマチュアでも固有運動や年周視差が観測できそうな恒星(2) はくちょう座61番星
バーナード星は暗すぎてどこにあるかよくわからないということでまずシリウスを考えたのですがこれはこれで明るすぎるような気がします。明るすぎると星像が大きくなり座標を正確に比較するあるいは算出するのが難しそうです。
そこでこんどははくちょう座61番星です。
「しかしながら肉眼で見えるという条件であれば、はくちょう座61番星は今なお最も大きな固有運動を持つ恒星である。」(Wikipedia)
ということで手頃な選択だと思います。
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まず固有運動+年周視差の様子をみてみましょう。来年一年間の動きです。
座標はJ2000.0によります。J2000.0ということは他の恒星との相対的な動きを示していると考えていいです。
少なくとも固有運動に関してとても観測しやすそうです。ちなみにシリウスはこうでした。
グラフの縮尺は同じですから固有運動に限ればはくちょう座61番星の観測のしやすさがわかると思います。
ところではくちょう座61番星は連星です。上にあるのは“A”の方です。もちろんBの方は動きは(ほとんど)同じです。
なぜ連星なのに二つのグラフに分けたかというと連星を構成する二つの恒星が固有運動(と年周視差)に比べてあまりにも離れすぎているからです。
これまでの縮尺は無視し無理やり二つの恒星を一つのグラフにするとこうなります。縮尺はこれまでのグラフの1/5くらいになっています。
はくちょう座61番星は(肉眼で見えたとしても)ひとつの恒星に見えるはずです。それを考えるといかに固有運動そして年周視差による動きがいかに小さいかわかっていただけると思います。
このグラフをご覧になるとどの程度の機材があれば固有運動(と年周視差)がわかるような写真を撮ることができるか感覚的にわかっていただけるのではないかと思います。
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関連
「バーナード星・記事一覧」
「バーナード星は動いているか? - 1」
「その後のバーナード星」
「バーナード星は動いているか? - 2 - その固有運動と年周視差」
「バーナード星は動いているか? - 3 - その固有運動と年周視差を測定する」
「バーナード星 - 固有運動の実測値」
「固有運動だけでは説明できないバーナード星の動き」
「「バーナード星の固有運動は何日でわかるか?」ランキング」
「バーナード星の年周視差が検出できた!?」
「アマチュアでも固有運動や年周視差が観測できそうな恒星(1) シリウス」
「写真から未知の天体の赤経・赤緯を求める (1)」
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コメント
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もう計算できてるのですね!
年周視差のためにはシーズンに撮るだけじゃなくて一年を通じて撮らないとダメなわけですね^^;
投稿: ほよほよ | 2014年12月15日 (月) 22時24分
年周視差は考えれば考えるほど難しそうですね。
目で見て年周視差がすぐにわかるようなものを用意できるというのは“アマチュア”の観測の最高峰じゃないでしょうか。
そのあためには赤経が増減する半年ごとに写真を撮らなきゃいけないわけですが、その違いはほんの僅かでしかありませんんし。
投稿: セッピーナ | 2014年12月15日 (月) 23時40分