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2014年12月18日 (木)

Excelで計算する流星の実経路

前記事「実経路がわかったふたご座流星群の流星」に12月14日 22時16分に房総方面で飛んだふたご座流星群の流星の実経路を書きました。今回はそれを計算した方法__Excelファイルの使い方__について書きます。

ほんとうはどうやって計算するか、つまり理論から書いた方がいいとは思うのですがそれを始めると最後まで行き着かない可能性が大きいので使い方から始める次第です。
そんなに難しいことをやっているわけでもないのでExcelファイルをながめていれば理屈は理解していただけると思います(概要は「実経路がわかったふたご座流星群の流星」にあります)

流星経路の求め方がちょっとユニーク(?)な感じもしますが精度にはけっこう自信があります。

Excelファイルのダウンロードは

  「ダウンロード Excel_Meteo_10.xls (192.5K)

からできます。LibreOfficeでも動作を確認しています。

=====

最初にお断りしておきますが、ダウンロードできるExcelファイルと下の図は実際の流星のデータではなく12月14日 22時16分の流星のデータを加工して作ったものです。なにぶん実際の流星のデータには観測地A,Bの経緯度が細かく入力してあるもので...

今回はあれこれ書かず使い方のみです。使い方はExcelのシートにも書いてあります。
出現と消滅で使い方はあんまり変わらないのでこの記事には出現の方だけ書きます。

ところで流星の経路を計算するためにはとうぜん流星の出現点・消滅点の座標を画像から読取る必要があります。これに関係する記事をいくつか紹介しておきます。

  「写真から未知の天体の赤経・赤緯を求める (2)
  「写真から未知の天体の赤経・赤緯を求める (1)
  「関連係数法(1)

  「「写真から星の座標を得る」アプリ

------

Excelのシートでは、

  赤字=入力
  黄地に橙字=変化させるセル
  黄地に緑字=目的セル

と色分けしてあります。

観測地A、観測地Bの緯度、経度、標高を入力します(観測地Aは度の小数で、観測地Bは度分秒で入力する形にしてありますが、計算に使うのは度の小数の方です)

観測地A,Bの緯度経度の精度は流星位置の精度に直結します。緯度経度が1km(0.01度くらい)くらいの精度しかなければ結果にもその程度の精度しかありません。

日にち、時刻を入力します。これも結果の精度に影響します。0.1kmの精度を目指すときは10秒程度の精度が必要です。

観測地A、観測地Bの流星出現点の赤経、赤緯を入力します。できる限り画像の読み取り精度を追求します。35mm版50mm程度のレンズであれば0.01度くらいまで読み取れます。

精度の高い結果を望む場合は大気差やレンズの歪曲収差の影響はちゃんと除いてください。広角系のレンズであればレンズの中心(光軸)とセンサー中心のずれがないかも確認します。0.01mmも違っていると0.01度の精度は出ません。

撮影条件によりますが0.01度まで読み取れれば出現位置の誤差を0.1km以下にできると思われます(百数十km離れたところを流れた流星を想定)

流星消滅点の視位置(赤経・赤緯)は“消滅点”のシートに入力されたものが使われます。消滅点が写っていないときは経路上の点の視位置を入力してください。

赤経・赤緯はできるだけ視位置(Apparent)を使ってください。J2000.0を使うと数百m程度あるいはそれ以上の誤差が出ます。

なおこのシート自体の計算誤差は(日周光行差と極運動の影響を除いて考えると)1mもないはずです。結果の精度は入力データの精度に依存すると考えていただいてけっこうです。

このシートで2地点間の距離を計算して国土地理院の結果と比較すると100kmで3mくらいの差が出ますが、測地線の長さと直線距離(弦の長さ)を比較しているわけですから国土地理院の測地線の長さと100kmで3mくらい違うというのは正しい結果です。チェックする方もいそうなので念のため書いておきます。

日周光行差や極運動がどう影響するかはわかりません。考えたことがないです。

流星出現位置の緯度経度標高を適当に設定します。流星が南の方に見えたのであれば南に70km程度離れたところで標高700000mにするくらいの感じで十分です。
(もっとアバウトにやっても観測データが正しければちゃんと結果が出ます)

流星出現位置の観測地直交座標(G52:G54)を観測地Aの流星出現位置直交座標(C60:C62)にコピーします。  補間係数(C75)を“1.0”にします。(補間係数は消滅の計算のときは初期値を0.0にします)

変化させるセルを観測地Aの流星出現点地心直交座標(C60:C62)と補間係数(C63)にし、目的セル残差計(C79)最小値になるようにソルバーを実行します。

解が出たら次の点を確認します。

残差計が十分に小さいこと。

残差計は観測地から出現点が見えた方向に伸ばした直線と算出された出現点の距離の2乗の和です。

残差計が1であれば結果には1km程度の誤差があることを意味します。精度のいい観測結果であれば残差計は0.0001より小さくなるはずです。

<<== ここは勘違いでした。残差は推定された方位角、高度(仰角)と実際の方位角、高度との差を示しています。ぴったり一致すれば0.0001のオーダーかそれ以下になります。

両方の観測地の観測結果とも誤差があってたまたま結果が一致するということもありますから、残差計が小さくなったからと言って結果が正しいということにはなりませんが….

補間係数が1に近いこと
      

補間係数が1でないというのは二つの観測地から見た出現点が異なっていることを意味します。

これは観測地によって撮影条件(=どのくらいの明るさの恒星が写っているか)が異なるとき起こります。

例えば観測地Aの写真の方が暗く写っているケースでは補間係数は1より大きくなります。
二つの観測地での撮影条件が極端に違っていればともかくそうでないのに1とぜんぜん違うときは入力データをチェックします。

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妥当な結果が得られたと思われる場合は、流星出現位置の経度・緯度・標高(G42:G44)を変化させるセルにし残差計(G78)が最小になるようにソルバーを実行します。

流星出現位置の経度・緯度・標高(G42:G44)に結果が得られます。
観測地Cに緯度経度標高を入力するとその地点で見た流星出現点の視位置(赤経・赤緯)を求めることができます。

“Moon”のシートはΔTを取得するためだけに使っています。2016年以降もこのシートを使う場合はΔTを調べて入力してください。少々違っていても大勢に影響はないですが。
なぜΔTが必要かと言うと地球の回転角度を求めるのに視恒星時が必要で、それには章動が必要で、それには地球時が必要で、というような流れです。

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計算例(現実の流星ではありません)
Photo


関連

  「流星経路計算・記事一覧

  「ふたご座流星群・観測結果報告 - 1
  「ふたご座流星群・観測結果報告 - 2
  「ふたご座流星群・観測結果報告 - 3
  「じつはふたご座流星群じゃなかった(?)14日の流星
  「同じ流星が撮影できた?ふたご座流星群
  「実経路がわかったふたご座流星群の流星
  「Excelで計算する流星の実経路
  「決定された流星の実経路をSVGで地図にプロットする
  「計算した流星の経路を表示するための星図の作り方
  「サダルテミスさんが見た流星はこぐま座流星群だったか?
  「こぐま座流星群の実経路を計算してみた

  「趣味の天文計算・記事一覧

  「写真から未知の天体の赤経・赤緯を求める (1)
  「写真から未知の天体の赤経・赤緯を求める (2)

  「「写真から星の座標を得る」アプリ

  「観測地から見た月の視位置(赤経・赤緯)を計算する

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