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2014年12月12日 (金)

固有運動だけでは説明できないバーナード星の動き

今年5月、7月、9月の三回にわたって撮られたサダルテミスさんのバーナード星の写真を分析したところバーナード星の他の恒星に対する相対的な位置が特定の方向に動いていることがわかりました(「バーナード星 - 固有運動の実測値」)
ただその方向はヒッパルコス星表が示す固有運動の向きとはちょっと違っています。今回はその理由について考えます。

前記事「バーナード星は動いているか? - 3 - その固有運動と年周視差を測定する」に書いたようにバーナード星は赤緯方向(北極方向)に動いておりその早さは毎月0.0002度(角度でいうと0.8秒くらい、f=1950mmの反射鏡+APS-Cのカメラで撮ったときの1ピクセル程度)になるようです。

そこで「その後のバーナード星」に紹介したサダルテミスさんの5月9日、7月28日、9月14日の三つの画像を「バーナード星は動いているか? - 2 - その固有運動と年周視差」に書いた手法で分析してみました。

=====

三枚の写真から得られたバーナード星の動きとヒッパルコス星表にある固有運動をグラフにして比較したものがこれでした。
Pm_0509b

細かく見ると固有運動の赤緯成分は星表とあんまり違わないようです。一方赤経成分(の絶対値)が星表に示すものより大きくなっています。

じつは10月に撮られた写真から得られた結果をこのグラフに追加するともっとヘンなことになります。
  10月19日撮影された写真の分析結果
     「ダウンロード Excel_SRV_V1_4_Barnard_141019.xls (982.5K)

Pm_0510b
グラフの赤経は実際の見え方に合わせ右に行くほど小さくなるようにしてあります。
「ヒッパルコス星表」と書いてしまいましたが正確には「ヒッパルコス星表の固有運動の値による動き」です。

少しずつ小さくなっていた赤経が突然上昇に転じています。そのまま減り続けていた場合の位置とは1ピクセル程度異なっています。画像の分析に問題があったのではないかと思ってチェックしたのですが他の日時に撮影したものと残差にそう違いはありません。

恒星の相対位置に影響を与えるものは大気差や反射鏡の歪曲収差さえも取り除いて位置を比較していますので実際にこう動いているのだと考えるしかありません。つまり固有運動以外の要素があるようです。

そうなるとこれは年周視差の影響としか考えられません。

サダルテミスさんには失礼な書き方になって申し訳ないのですが)アマチュアが市販の望遠鏡で撮影した画像でその昔天文学者がどうしても検出できずに苦しみ続けた年周視差の影響がわかるものなのだろうかと疑問には思うのですが、もし年周視差が検出できているとすればどういう影響が出るか考えてみます。

例えばブラッドベリーは恒星の絶対的位置を測定することによって年周視差を検出しようとしたわけで、一方ここでは相対位置を測定しているわけですからそれと比べてしまうのもムチャというものですが....

年周視差は地球と太陽と恒星の位置関係で変化します。地球からみた太陽と恒星の黄経の差が180度(あるいは実際には見えそうにありませんが0度)になったとき0となり±90度のとき(絶対値が)最大となります。

さっそくバーナード星の黄経の変化を調べてみます。

まずバーナード星と太陽の黄経差が180度になるのは5月29日の1時頃でした。そして太陽とバーナード星と太陽の黄経差が-90度になるのは9月1日の0時頃です。
とするとバーナード星の赤経は5月の終わりに固有運動だけで計算したものと一致し、9月初めに固有運動だけで計算したものよりずっと小さくなりそのあと今度は増え始めて固有運動だけで計算した値にだんだん近づいていくはずです。

グラフは確かにそれに近い動きを示しています。

次は固有運動と年周視差を考慮したバーナード星の計算上の位置と実際に観測された位置を比較してみたいと思います。

------

10月19日の画像の分析結果から
141019_red
黒い丸がヒッパルコス星表(とティコ星表)から計算した撮影時の恒星の位置、赤い丸が「星空のおぼえ方-ソラのソムリエから自由をめざす - ゼウスの仲裁と、アレスくんの珍客 」にあるサダルテミスさんの画像(のオリジナル)から「「写真から星の座標を得る」アプリ」で紹介したほよほよさんのアプリで抽出した星像の位置です。よく一致しているので赤い丸はほとんど見えないと思います。
中央にあるのはバーナード星でこれだけは黒い丸は元期(J1991.25)の位置を示しています。23年も経てば大きく移動します。

画像上の星像位置と星表から計算した恒星の位置の差を20倍に拡大したもの。
141019_redx20

この差がどういう理由で発生しているかを徹底的に追求してはじめてバーナード星の正しい視位置を画像から求めることができます。

(「「バーナード星の固有運動は何日でわかるか?」ランキング」を書いたあと「バーナード星の年周視差が検出できた!?」へ続く)

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  「バーナード星の固有運動量(赤経・赤緯成分)と年周視差を写真から求める方法

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  「バーナード星は動いているか? - 3 - その固有運動と年周視差を測定する
  「バーナード星 - 固有運動の実測値
  「固有運動だけでは説明できないバーナード星の動き
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コメント

これはすごい!
固有運動だけではなくて年周視差まで検出するなんて。
直接距離がわかるということになりますね。分析手法を見習って他の恒星でもやってみたくなります。

未だに半信半疑なんですが、データを見る限り年周視差の影響をとらえられているみたいです。
これもほよほよさんとサダルテミスさんのおかげです m(._.)m
これから赤経が増えて行って3月になると動きが反転するはずなのでそれを確認できれば間違いなく年周視差だと思います。

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