カノープスの写真に見る大気差の影響
低空での天体観測、天体写真では大気差が問題になります。実際にどの程度の影響が出ているものか超低空でのカノープスの写真で調べてみました。
この記事を書くために行った計算はExceファイル
「Canopus.xls」
にあります(ソルバーを使います)
関連
「大気差の計算式」
「大気差を実測する(太陽編)」
「東京でカノープス」
「東京でカノープスを見るには?」
「東京でカノープスが見えた日、見えなかった日」
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12月3日未明、東京はまれに見る天気のよさでした。この日カノープスの南中する頃PENTAX Q7にNIKONの50mmのレンズをつけて南の空を撮ってみました。
オリジナルの写真がこれです。
特徴的な建物がいくつか写っているのでこんなことにしてあります。右下の高架のちょっと上に見えるのがカノープスです。
この画像を処理して恒星を可能な限り検出するとこうなりました。飛行機の航跡は除いてあります。
右下のHIP30438=カノープスの他に12個の恒星が写っていました。
地平線近くでこれだけの恒星が写るというのはめったにないことのような気がします(撮影場所から南の方向には東京でも有数の歓楽街が少なくとも二つあり光害もなかなかのものです)
オリジナルの画像から「「写真から星の座標を得る」アプリ」で紹介したアプリを使って恒星の画像上の位置を正確に読み取ります。
星像はどれも淡く(空が明るく)四つの恒星だけが読み取れました。
ひとまずこの四つだけで先に進みます。
「写真から未知の天体の赤経・赤緯を求める (1)」に書いた手法でこの写真の撮影条件を求めます。撮影条件というのはカメラの向き(カメラの向いている方向の方位角、仰角、傾き(回転角)、レンズの焦点距離とセンサーサイズの比です。他にレンズの歪曲収差も対象にできるのですがこれは恒星数が少ないためやっていません)
星表と撮影条件から求めた恒星の位置と画像上の恒星の位置を比較してみます。
黄色のクロスが見えるはずの位置、緑色のクロスが実際に見えた位置です。
ほとんど黄色のクロスが見えないのは緑色のクロスの下に隠れているためです。これを見ると撮影条件の算出はうまく行っていることがわかります。
上の撮影条件を求めるときは大気差を考慮しています。大気差は高度が低いほど急激に大きくなりますのでこうしないとこんなにぴったり一致することはありません。
ここで星表から位置をもとめるとき大気差の影響を考慮しないようにして、同じように比べてみます。
どの恒星は実際の位置(というか大気がないと仮定したときの位置)より浮き上がって見えています。カノープスで0.3度くらい(つまり太陽・月の直径の6割くらい)浮き上がっています。
これをオリジナルの画像に重ねてみます。
これを見るとほんとうは見えないはずのカノープスが大気差があるため見えるようになったことがわかります。
大気差は国立天文台のサイトにある計算式を使っています(「大気差の計算式」)
大気差というのは日によって(気象条件によって)かなりかわりそうな気もするのですが上程度での精度での話であればそんなに気にしなくてもいいのかもしれません。
この高度になると恒星自体ぼやけて位置がよくわからなくなりますし....
かえって高度があるところ精密な観測をするときの大気差の方が問題になりそうな気もします。
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